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【仏教について考える】

「ブッダ」というのは「目覚めた人」という意味です。もともとはインドの宗教全般で優れた修行者や聖者に対する呼称でした。仏教が広まるにつれて、仏教の開祖となったゴータマ・シッダールタの尊称となっていきました。
ゴータマ・シッダールタはシャカ族の王子でした。シャカ族はネパールの部族であり、ゴータマ・シッダールタが生まれたのは現在のネパールのルンビニーという町です。ゴータマ・シッダールタは中国では「釈迦牟尼」と呼ばれ、日本では「お釈迦さま」と呼ばれて親しまれています。

インドには世界的に有名な川が2つあります。
①インダス川(西側)
②ガンジス川(東側)
四大文明のひとつとされるインダス文明は、インダス川の中流域のパンジャブ地方にアーリヤ人が定住したことに始まります。アーリヤ人はインド=ヨーロッパ語系の民族で、もともとは中央アジアを原住地として遊牧生活をしていました。紀元前2,000年頃から移動を開始して、インドやイランに定住したとされています。
ゴータマ・シッダールタが生まれる前のインド社会で注目しておきたいものが2つあります。
①「リグ=ヴェーダ」
「ヴェーダ」とは、古代インドで編纂された宗教的文献の総称のことであり、バラモン教の聖典とされています。アーリヤ人は自然現象に神性を発見して、賛歌と供物を捧げて恩恵にあずかろうとしました。そうした賛歌をまとめたものが「ヴェーダ」であり、「ヴェーダ」は「知識」の意味です。なかでも、「リグ=ヴェーダ」は最古のヴェーダとされ、太陽などの自然を神格化して神々に捧げた讃歌集です。紀元前1200〜紀元前1000年頃に成立したとされています。
②「ヴァルナ」
「ヴァルナ」はもともとはバラモン教における身分階層のことです。日本では「種姓」と訳されます。インド地域に流入したアーリヤ人が、先住民との肌の違いから人間集団を区別・編成する際に利用し大きく4つの階層に分類しました。カースト制度は、ヒンドゥー教における身分制度を指す言葉です。ヒンドゥー教はバラモン教に先住民の土着信仰が融合されて成立した宗教です。現在、インドではおよそ10億人の人々がヒンドゥー教を信仰しています。インドは仏教発祥の国ですが、現在のインドではヒンドゥー教徒が約80%を占め、仏教徒は1%弱と言われています。インドではカースト制度に基づく差別が今も根深く存在しており、仏教を信仰している人の多くはカースト制度の最下層にある「不可触民」と呼ばれる人たちだとされています。

ゴータマ・シッダールタが悟りを開いたとされるブッダガヤの大菩提寺は2002年にユネスコの世界遺産に登録されています。現在はヒンドゥー教徒の管理下にあり、1992年から日本人仏教僧の佐々井秀嶺氏らによる奪還運動が行われています。これはヒンドゥー教徒の管理下にある大菩提寺を仏教徒の管理下に取り戻そうとする運動です。ブッダガヤ大菩提寺奪還運動は、現在もインド最高裁判所で係争中です。
佐々井秀嶺氏は著書の中で興味深い認識を示されています。それは、インドにおける仏教が13世紀に滅んでいるということ。そして、既にもう何百年もの歳月が経過しており、現在のインドでは仏教は復興運動を起こさなければならないほどマイノリティーの位置にあること。僕個人の認識では、日本における仏教も法事や仏事の際に接する儀礼的な位置付けに近くなっていると認識しています。恥ずかしながら、「闘魂」を持ってインド仏教復興に生涯を賭けている佐々井秀嶺氏のような人物がいることを知りませんでした。

ゴータマ・シッダールタは王族としての安逸な生活の中で人生の無常や苦痛を痛感し、人生の真実を追求しようと志して29歳で出家しました。そして、「悟り」を得ようとして3人の師に学びました。
①バッカバ仙人
②アラーラ・カーラーマ
③ウッダカラーマ・プッタ
これらの3人の師が教える境地に達するも満足ができず、師のもとを去り林の中で6年間さまざまな苦行を行いました。断食修行でわずかな水と豆類などだけで生活を行い、骨と皮のみの痩せ細った身体になりました。スジャータは、ゴータマ・シッダールタが悟りに至る直前に乳粥を供養し命を救ったという娘です。これを「乳粥供養」といいます。過度な快楽が不適切であると同様に、過度な苦行も不適切であると悟ったシッダールタは苦行をやめました。このことを「苦行放棄」と言います。
苦行をやめた35歳のシッダールタはナイランジャナー川で沐浴した後、先ほどの村娘スジャータから乳粥の布施を受けて体力を回復させブッダガヤの菩提樹の下に座って瞑想に入りました。この瞑想ののち、悟りに達して「仏陀」になったとされています。
ここで注目したいのは、ゴータマ・シッダールタが苦行を乗り越えて「悟り」に至ったわけではないということです。苦行では悟りに至れないことを学び、他者からの布施を受けた後の瞑想から悟りに至ったのです。このことが大変重要だと僕は考えています。

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