見出し画像

写真について語ることを躊躇するのをやめようと思った。

写真展「壁」に参加して

 4月25日から4月30日までの期間に開催された、別所さん主宰のオンラインサロンB'sの写真展「壁」に参加させていただきました。

 僕にとっての初めての写真展示。どんな展示にしようか思案する中で、結局シンプルに「今、僕が一番見てほしい写真を展示したい」と思うようになり、以下の4枚の写真をセレクトしました。
 なお、この4枚の写真のこだわりポイントや「壁」との関係については、「今回展示した写真について語る」で大いに語っていますので、お読みいただけると嬉しいです。

 写真展期間中、僕は残念ながら初日しか在廊できなかったのですが、他のフォトグラファーの方々の素晴らしい展示を観て、それぞれの写真に込められた熱い思いを聞くにつれて、僕の中に湧き上がってきた感情がありました。

 それは、「写真について語ることを躊躇するのをやめよう」という思い。

 僕は、これまでSNS上に自分の撮った写真をアップしてはいたものの、自分の写真について語ることを意識的に避けてきたように思います。単純に恥ずかしかったからなのか、多くを語らない方がかっこいいと思っていたからなのか、その方がいわゆる「伸びる」投稿だと考えたからなのか。写真につけるキャプションも、よりシンプルなものを好む傾向にありました。
 そんな僕が、「写真について語ることを躊躇するのをやめよう」と思った、そう思えた理由。
 まず、会場で、PCや携帯の画面を通してではなく、実際にプリントされた美しい写真を近くでじっくりと「観る」という体験は、とてつもなく贅沢で、僕にとってはかなりのインパクトがありました。先ほど、僕にとって初めての写真展示だったと書きましたが、そもそも他の写真家・フォトグラファーの写真展自体過去に1、2度しか行ったことがなかったのです。SNS上に投稿される素敵な写真はもちろん毎日「見て」はいるのですが、数秒見たうえでいいねやリツイートをしたらそれでおしまいということも多く、「観て」はいなかったのだと思います。この点、プリントされた写真をじっくりと「観る」という体験は、僕に「その写真のことをもっと深く知りたい」という思いを与えてくれました。
 そして、その流れで、撮影者に話を聞く。すると、写真に込められたこだわりや熱い思いが返ってくる。写真展ってなんて面白いんだろう!写真ってなんて素晴らしい表現方法なんだろう!と心から思うと同時に、「僕の写真のこともみんなに知ってもらいたい、もっと自分の写真について語りたい」という感情が芽生えるに至ったのでした。

 このような経験や感情は、これまでのようにSNS上に写真をアップするだけでは到底得られなかったもので、素晴らしい展示と撮影者の熱量に直に触れることができたからこそ得られたものだと思います。
 別所さんや運営に携わってくださった皆様、また、今回ともに展示できた仲間たちには本当に感謝しかありません。

 さて、そんな初展示の興奮が醒めないうちに、以下、自分の写真について語りたいと思います。在廊時間が短かったゆえ、来場者とは、数人の方々としかお話しできなかったこともあり、本来展示会場で語りたかった思いを文章にしてみます。最後までお読みいただけると嬉しいです。

今回展示した写真について語る

 まずは、あらためて今回展示した4枚の写真を。

 全部同じような写真ですね。そりゃそうだ。全部同じ場所で、同じ被写体を、同じ構図で撮影しているんだもの。
 我が家では、長男が歩き始めた1歳の春から、毎年、同じ場所、近所の桜並木にお花見に出かけています。そこで、子どもの成長の記録として、毎回同じ場所、同じ構図で写真を撮っているんです。

 みなさんご存知でしょうが、子どもって、本当にとんでもないスピードで成長します。精神と時の部屋で修行してきたんちゃうか、と疑うほどに。
 4枚の写真を見ていただくとわかるとおり、一緒に写っている母親や桜並木には4年間ほとんど変化がありません。母親に至っては髪型すら全く同じという徹底ぶりです。それに対し、長男は背が伸び、しっかりとした足取りになり、足元でなく桜を見る余裕ができ、今年はついに母と手を繋がず赤ちゃんの長女に優しく寄り添うように歩いています。この対比をよく見てほしい。
 親バカで申し訳ないのですが、本当に涙が出るほど、長男の成長を嬉しく思います。そして、こういう楽しみ方ができる「写真」っていいなと、見返すたびに思います。

 さて、今回の展示のテーマは「壁」でした。この4枚の写真の何が「壁」なのか。僕としては、この4枚の写真に3つの「壁」を見出しました。

 1つ目の「壁」は、「背中」という壁(物理)。僕は、今回の展示にあたり以下のような説明文を作りました。

壁。一見無個性のようでいて 目を凝らせば様々な表情が見えてくる。
顔の表情が見えずとも 人の背中には個性があり 物語がある。

 「家族の背中を撮る理由について語る」でも詳しく書きますが、僕は、ライフワークとして、美しい自然を歩く家族の背中(バックショット)を撮影しています。その理由を端的に説明したのが上記文章です。そして、その理由に、「壁」との共通性を見出したんです。

 2つ目の「壁」は、壁を乗り越えて成長する子どもの姿。これは、先述したとおりです。

 3つ目の「壁」は、不変的に子どもを包み込む母親や桜並木の存在(子どもを護る壁)。先ほど、母親や桜並木には4年間変化がないと書きましたが、僕は、子どもの健やかな成長には、ずっと変わらず大きな愛で自分のことを見守っていてくれる対象が存在しているという安心感とその対象に対する信頼が必要なのではないかと考えています。その意味で、この4枚の写真を通じて、子どもの成長のみならず、子どもを護る壁としての母親や自然の大きさ、ひいてはそれらの深い愛情といったものも表現できたのではないかと思っています。
 なお、上記で紹介した説明文には以下のような続きがあります。

日々壁を乗り越え、壁を壊し、
ときに壁を避けながら成長し続ける子どもの背中
そして、それを変わらず見守る美しい自然と母の背中を見てほしい。

家族の背中を撮る理由について語る

 先述のとおり、僕は、美しい自然を歩く家族の背中を撮ることをライフワークにしています。なお、バックショットしか撮らないわけではなく、僕のSSD内には、笑顔の可愛い子どもの写真が山ほどありますし、誰よりも可愛く我が子を撮れる自信もありますので、そこは誤解しないでいただきたいです(必死)。

 では、なぜ背中をあえて好んで撮るのか。

 僕は、今回の展示にあたり、家族の背中の写真をまとめたフォトブックを準備しました。そして、そのフォトブックのはしがきにその理由を記しましたので、以下、引用します。

家族の背中を撮り続けて4年目になる。

6年前、一人で旅をしては美しい景色を写真に収めることを趣味にしていた私が所帯を持ち、翌年には男の子が生まれた。
その後しばらく風景写真から遠ざかる日々を送っていたが、やがて子どもが歩き始め、外出の幅が広がるにつれて、私の中で「美しい景色の中を歩く家族の姿を残していきたい」という気持ちが芽生えはじめた。
それは、今思えば、「風景も家族も撮れて一石二鳥」などという極めて単純で安直な発想からだったように思う。

そんな中、春が来た。

初めて撮った妻と子どもの背中の写真は、近所の桜並木。
私には、家族の背中は笑顔のピースサインよりも表情豊かに感じられた。
顔の表情が見えないからこそ、些細な所作に焦点が合う。
妻の、子どもを気遣う視線、手を繋ぐために丸めた背中、手を取らなければ転んでしまいそうなぎこちない子どもの歩き方。
家族の背中が、美しい風景と相まって素敵な物語を紡いでくれた気がした。
そして、もう一つ気づいたこと。
家族の背中は、撮影者である私自身を映す鏡。
撮った写真を見返すと、シャッターを切る際の昂る私の感情が、手に取るように思い出された。
被写体は妻と子ども2人だけれども、そこには紛れもなく家族3人の写真があった。

それ以降、今日も私は家族の背中を撮り続ける。

4度目の春がやってきた。

 顔の表情が見えると、どうしてもそこに最初に目が行きますよね。そして、そこで完結してしまうことが多いように思うんですね(それがダメだとか悪いと評価しているわけでは決してありません。)。
 では、表情が見えない背中の写真だとどうか。
 想像力が膨らみませんか。どんな顔をして、何を考えて歩いているのか。そう思ったら、今度はその所作に焦点を合わせたくなりませんか。
 僕は常々、あとで見返したときに、じっくりと眺めたくなるような家族写真を撮りたいと思っていて、「背中を撮る」ことが、そのための有効な手段の一つとなりうるのではないかと考えました。そして僕はそのような解釈の余地を多分に含む写真に物語性を感じるんだと思います。だから、今回製作したフォトブックに「Story」とタイトルをつけました。  

 僕は、我が家の物語のストーリーテラーになったつもりで、これからも家族の背中の写真を撮り続けます。

今後の展望

 今回の写真展を経て、もっとたくさんいい写真を撮りたいと思ったし、もっと写真について語りたいと思うに至りました。
 最近、忙しさを言い訳にして、あまり写真を撮らず、SNSの投稿も休みがちだったのですが、まずは、その辺をきちんと再開するところから始めたいなと思っています。そして、今後は、自分の写真について大いに語りたいと思いますし、他の方々の写真についても、感じたことをできる限り言葉にしていきたいなと思っています。
 そして、今後も、もしまた写真展に出展できる機会があれば、ぜひチャレンジしてみたいです。


 拙い文章でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?