いまさら聞けない自動車の動力源の話 ICE編1についてのご意見への回答

【ネットの声への返信】
さて、当該記事についてのITMのコメント欄やSNSを一通り見ました。今回は「ほう。鋭いな!」というご指摘はあまり見当たらず。でもまあ説明しておいた方が良いかしらと思うことはいくつかありました。

まずは簡単なヤツから。「トップの画像はV8にしちゃピストンの位置がおかしいし、なんで全部火が入っているのだ」というご指摘。

まあ、ご指摘に関してはその通り、実はこれは編集担当が探し出して付けてくれた画像で、多分「エンジンの燃焼」をイメージできる画像が欲しかったんだと思います。でもね。今時こんな基本的なことを説明する画像なんてそうそうないんですよ。こんな基本的なことをわざわざ書く人がいないから。だから彼は限られた状況下でよくやってくれたとむしろ筆者は思っています。

筆者の場合、いつも原稿を書いてから各メーカーの広報サイトを回って、説明に適した画像を探すわけですが、いまさら燃焼に関する説明の、しかもイメージカットになる様なものは皆無です。だから編集担当が探してくれたわけです。トップに出るイメージはまああくまでも飾りみたいなものなのですし、インパクトが必須だったのでしょう。でもそんな要求に合致する画像は多分これ1点しかなかったのだと思います。なので「エンジンの理論上正確ではない」というご指摘はもっともながら、やむなしと思って頂ければ幸いです。

コストがいくらでも掛けられれば、イラストを起こすこともできますが、それだとスケジュールもキツくなるし、何より読者の方々に無料で広く読んで頂こうというビジネスプランでは回りません。だからこれはご容赦願いたいなと。

さて次は、「ガソリンエンジンを理論空燃比にするのは三元触媒を正常に作動させるためで燃焼のためじゃない」というご意見。筆者的には「ネタバレやめろ」であります。それ先で書くんだから(笑)。

ただし、燃焼に空燃比なんてどうでも良いとでも言いた気な書き方は、本人が意識しているしていないに関わらずダメです。排ガス規制なんて欠片もなかった時代からキャブの燃調ってのはちゃんとあって、エンジンの調子を決めていたのは確かですから。空燃比のイロハのイは燃焼。燃焼しなければ排ガスもへったくれもありません。

順番としては燃焼ってどういうものか? それを阻む問題点を理解していただく所までを「ICE編1」の範囲とし、2で主にガソリンエンジンの排ガス技術&低燃費技術を書いていく腹づもりです。規制をクリアしながらパワーを出せる様になる過程では色んな苦労があって、技術的に段階を踏みながらそうなって行ったという話を書きたいと思ったのです。

三つ目。ネットでは「トヨタはエンジンが作れないからヤマハに丸投げだ」みたいな声を目にするのでしょうが、まあそれはバカの自己紹介なので生暖かい目で見てあげて下さい。

まあ80年代くらいまでは特殊用途のエンジンについてはメーカーでは手に負えないジャンルもありました。例えばあのベンツですら190E 2.3 の4弁エンジンを作る時コスワースに設計を委託したのです。何故ならば、このユニットはツーリングカーレースをターゲットにしたホモロゲート用のユニットで、つまり公道ではあり得ない様な高回転高負荷連続運転を想定していたからです。

そんな使い方をすると、燃焼室のインテークバルブ側とエグゾーストバルブ側の間に熱の不均衡が起こって、ヘッドにクラックが入ってしまうのです。そういう所にどう冷却水路を引くべきかとか、中空にしたバルブ軸の中にナトリウムを封入して、高温になって溶けたナトリウムが液体になって、ステムシール付近の最も高温になる辺りの熱をしゃばしゃばと踊らされつつ冷却水路が充実した軸の先端側まで運ぶみたいな技術はレースエンジン専用メーカーしか持っていませんでした。

そういう極端な例を極めて乱暴に「エンジンが作れない」と単純化する人には、本当のことを知ろうとする正しい好奇心がないのです。ただ最初から誰かをバカにしたりマウントしたりしたいだけ。少なくとも何の条件付けもなく「エンジンが作れないメーカー」なんて国内メーカーにはありません。モータースポーツは話が違うでしょう。F1やインディーカーやWRCで勝てるエンジンをどこのメーカーでも作れるかと言えばそれはまた別で、作れるメーカーだって、常に作れるわけではありません。そういう例は挙げずともご存じでしょう。

市販車は競技を前提に作られていません。道路をちゃんと走れればそれでいいのです。というかそれだって難しいことです。ましてや吊るしの状態でサーキットを本気で10周走れるクルマなんて極限られた一部だけで、大抵は無理です。まあエンジンよりブレーキが先に音を上げることが多いですがね。ミニサーキットみたいな低速のコースならもう少しなんとかなるクルマは増えますけどね。

さて、最後に記事に対する反省。わざわざ外燃機関を持ち出したのは、内燃機関は予圧縮をすることでコンパクトな機構から大出力が取り出せる様になったのだと説明したかったわけなのですが、いま読み返すと、そこをずばりと言っていない。予圧縮するのが良いとか、外燃機関はデカいとかは説明しているのですが、だから何だはズバッと書くべきでした。もしかしたら直すかも知れません。

※以下多分毎度の定型文になります。

申し訳ないですが質問は受け付けていません。質問とか議論とかを個別の読者と始めてしまうと原稿を書く時間がなくなってしまうので、ごめんなさい。

どうしてもお望みの場合、回答1文字50円とかなら考えます(笑)。媒体のギャラはその1/10とかの叩き売り価格ですが、多くの方に読んでいただけるメリットがあります。専用のオーダーメイドは高いのです。ちなみに普段の記事はだいたい5000文字から6000文字くらいです。

もし聞きたいことがあれば、ITMのコメント欄や、twitterとかでつぶやいて下さい。筆者が興味を持ったら回答します。その場合無料です。



お気持ちの投げ銭場所です。払っても良いなという人だけ、ご無理のない範囲でお使いください。