TX9A5779のコピー

新型スープラに乗ってきた

【取材ノート】

6月17日のITmediaビジネスオンラインには今のところスープラの記事を書く予定。

17年の時を経て、新型スープラが登場したわけです。まあスポーツカーが極端に減った昨今、それは喜ぶべきことだと思います。

ただし、ボクには色々割り切れない所もあるのです。340馬力でトルク51キロのクルマ。リアルな話としてどこで走れば良いのか?

別に風紀委員みたいなことを言っているわけじゃなく、いまや普通の生徒の中で結構な割合の人たちが「違法行為はダメでしょう」となっているわけですね。本音と建前が別々に成立した時代はどうも終わっていく、いやすでにかなり終わっている感じがするのです。

何と言うのか時代の端境期みたいなもので、今これだけの性能のクルマを日本で、あるいは正確に言うと今の日本国民の感覚の中でどう乗るのかとなると「スポーツカー万歳!」と素直に喜べない感じがします。

新しい時代を感じてないおっさんたちは若い時と地続きで、峠道を攻めたりしちゃうのかもしれませんが、子供の頃からSNSに慣れ親しんで来た若者たちは、違法行為で吊し上げられることも、その元になるバカッター行為からも極力距離を置きたい。おっさんたちにわかるように言えば、「スピード違反」は彼らの中では「反社会集団とのお付き合い」と同じくらい自分の人生を台無しにする行為だと思っている節があるのです。

そういう時代に自動車産業のリーダーであるトヨタは現在のスポーツカーで何を提供するのか。どういう楽しみ方を推奨するんでしょうか? あるいはハンドル握るのはユーザーだからその先は免許証の持ち主に一任ということなんでしょうか? その辺りはちょっとチーフエンジニアと激論しました。すっきりした結論は出なかったけれど。

で、チーフエンジニアは「ピュアスポーツカーを作りたかった」と言うわけです。たぶんその辺りが記事のテーマになるんじゃないかなぁと今はまだぼんやりと考えているとこですけどね。

ボクの狭い了見では「ピュアスポーツ」ってのは1t以下が原則。譲歩して1割増。1.5t超えは……。

拙書『スピリット・オブ・ロードスター』にも書いたんですが、例えばMGやロータスなどの60年代までのピュアスポーツカーってのは、排ガス規制と衝突安全規制で生き残れなくなって、70年代あたりからは、いろんな対策で重たくなった重量を補うためにクルマも排気量も大きくなります。でミドルスポーツカーの時代が来るんです。

例えばポルシェの924とかフェアレディZとか。スープラの先祖であるセリカXXはそこで誕生しました。だから歴代スープラは藩祖以来ピュアスポーツだったことは一度も無いと(念を押しておきますがあくまでもボクの狭い了見での話ですよ)。むしろこの手のミドルスポーツカーってのは、高速道路をぶっとばすパワー主義、別の言い方をすればGTを志向していったわけです。そりゃもう時代まるごと。

特にスープラの世界的な支持層は映画『ワイルドスピード』で憧れを持った人たち、漫画でヒーローになった豆腐屋のAE86と同じストーリー。そして映画の影響で「トヨタのスポーツカーは直6に決まってんだろ!」は今やオーディエンスだけじゃなくトヨタの中の人も割とそう。

今やトヨタだけじゃなく直6なんて持ってるメーカーがほとんどありません。BMWと組まないことにはその直6が手に入らないから、今回のスープラはBMW Z4と兄弟車になったわけです。ただし土台は共用しても、そこから先はお互いチームを隔離するくらいの勢いで開発したそうで、よくあるバッヂ違いとかでは全然無いと、そもそもZ4がどうなっているかよく知らないからスープラとどこがどう違うかは知らないとチーフエンジニアは断言するわけです。

そういういろんな情報を聞きつつ、根っこのところで、ボクは個人的には今やスポーツカーは低次元エンターテイメントじゃないと成立しないのではないかと漠然と思っているわけです。

ってなわけで、そういう諸々をギュギュッと原稿にするお仕事をやらないといけません。もちろんインプレッションも。ちょっとだけ書くと、半年前に豪雨の袖ヶ浦サーキットで乗ったプロトタイプとは相当レベルが違ってました。


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