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漢字で感じる人間学50(髄からみる・からだ7)

からだシリーズ。旧字で「体」という字は「體」。「骨が豊か」と書きました。もう少し骨をみていきましょう。

骨の中心にあるのは、「骨髄」。骨髄では何を行っているのかというと、赤血球、白血球、血小板など、血液に含まれる細胞が作られています。これらの細胞ですが、人間が生きていくのに必須不可欠の働きを行っています。

赤血球は、血液の流れ(血流)に乗って、全身の細胞に運ばれ、細胞の活動の源となる酸素を届けます。そして、細胞の活動で発生した二酸化炭素を拾って、肺でガス交換を行って、酸素と再び結びつき、心臓から再び全身に送り出されていきます。

骨髄にある、赤血球の元の細胞(造血幹細胞)から赤血球になる過程で、細胞の核が除かれます。つまり赤血球は発生の過程で自らのDNAで分裂して増えるという選択肢を捨ててしまい、細胞が消耗するとそのまま分解されて死を迎えることになります。その代わり、赤血球は身軽になり、毛細血管の隅々まで入っていって身体の末端にある細胞まで酸素を届けることができます。自分の大きさよりも細いくらいの毛細血管でも形を変形させて入っていくそうです。狭い路地裏でも入っていって荷物を届ける宅配便のドライバーに似ていますね。全国どこでも道のあるところなら配達可能。とても優秀です。

白血球は、外部から入ってきた病原菌などの異物を退治して無効化する、というこちらもとても大事な働きをしています。顆粒球、単球、B細胞、T細胞などいくつか種類があって、自己免疫の機能を担っています。白血球が正常に機能しないと外から病原菌が入ってきたときに対処できないですね。病原菌も普通に外部の世界で生活しているので、身体に入って来る機会も普通にあるのですが、大きな病気にならずに済んでいるのは白血球が働いてくれているおかげです。

血小板は、出血したときに血を止める役割を果たしています。出血した部位に血小板が凝集して血が流れるのを防ぐ働きをします。こちらも正常に働いてくれないと血が止まらずに困ったことになります。

私たちの身体は、30数兆の細胞が集まってできています。この膨大な数の細胞が生きていられるのも、血液の中でこれらの細胞くんたちが、日々一生懸命働いてくれているからですね。この生きていくのに不可欠な細胞を作り出しているのが「骨髄」です。生命活動になくてはならないもので、この「髄」が「神髄」や「真髄」といった本質を現す言葉につながります。

この骨髄での造血作用ですが、たとえば赤血球だと1秒間に200万個作られていると言われています。私の出身の新潟県、今住んでいる群馬県の人口とほぼ一緒。これが、毎秒毎秒生産されています! そして約4か月と言われていますが、機能が衰えて消耗した赤血球は脾臓(ひぞう)という臓器で分解されます。ものすごい数の赤血球が発生しては、分解されていきます。

人間の身体の中でこの瞬間瞬間に小さな生死があり、それが私たちの大きな身体を活かしている。それが「生きている」ということです。

私たち人間も個体としてはいつか死を迎える時が来ますが、その個体の死があるからこそ、新しい個体の生があり、そして「地球」というもっと大きな生命体を生かしていることになります。

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