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#1-2 カオスマップの向こう側 D2C女性アパレル編

今回は4ブランドピックアップ。
前回分は「#1-1 カオスマップの向こう側 D2C女性アパレル編」を参照ください。

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6.FLEEKRS(WITH) <インフルエンサーD2C>

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<基本情報>
創業年:2019年
Product:東京ガールズコレクション出演モデルプロデュースの女性アパレル
Promotion:コラボモデル(インフルエンサー)のSNSによる発信
Place:自社EC(※リアル店舗なし)
Price:コラボTシャツ 7,000円、キャップ 6,500円前後

アパレルの企画・製造・販売・マーケティングを支援するFLEEKRSと、TGCを運営するW TOKYOが資本業務提携して生まれたD2Cブランド。

カオスマップ上ではFLEEKRSが掲載されていますが、実体としては「with」ブランドで展開。

・プロモーション力はあるがモノ作りできないインフルエンサー
・モノ作りはできるがプロモーション力に不安のある代理店

がお互いの不足機能を補完しあって一連のサプライチェーンを仕上げており、自社ECで顧客に直接商品を送り届けています。

<顧客接点:youtubeやインスタなどのSNS>

まだ立ち上がったばかりで、コレクションとしては、TGC出演モデル「Maaaya」さんとのコラボ商材と、youtuberグループ「さんこいち」の古川優香さんとコラボした商材のみですが、起用している2人の影響力が半端ではなく、

・Maaayaインスタフォロワー数:146千人
・さんこいちyoutube登録数:141万人
・古川優香youtube登録数:56.3万人
・古川優香インスタフォロワー数:889千人

と驚異のコミュニティを形成して発信を強めています。今後も色々なインフルエンサーをWITHプラットフォームに乗せて、拡大していくのではないでしょうか。

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販売における最大の不安は「顧客に情報が届かないこと」ですが、その不安をインフルエンサーで払拭できてしまう点は、ブランドとして非常に優位です。

雑誌×読モの時代から、SNS×インフルエンサーの時代に変わり、ちょっと前までは雑誌の記事を取るために数ヶ月前から準備をして、費用も何十万、何百万かけていましたが、今ではワンクリックでタイムリーに情報を届けられる。

情報を届けるコストが圧倒的に下がったので、今後もどんどんインフルエンサー発のD2Cは生まれるでしょう。

インフルエンサーの影響力は、広告のあり方を変えただけでなく、小売のサプライチェーンまで変えてしまいました。恐るべし。

7.foufou <新世代デザイナーズブランド>

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<基本情報>
創業年:2016年
Product:デザイナー マール・コウサカが創る女性アパレル
Promotion:インスタ、LINE@、note、Twitterを用途に応じて使い分けた発信
Place:自社EC+出張試着会
Price:ワンピース 17,000円、スカート 16,000円前後

デザイナーのマール・コウサカ氏が自らデザインしてディレクションするD2C。

「健康的な消費のために」をコンセプトに「適度にお洒落で、適度に使い勝手のよく、適度な価格の服に文脈を持たせ、提供する人達の暮らしや消費を変えるブランド」を目指しています。

「適度」という言葉が多用されるように、ほど良い着心地、背伸びし過ぎないデザイン、手の届く価格。というのが連想されます。

<着想>
「服って今やそこまで必要ないし、誰も興味ないかも」と思ったのがきっかけです。多分、SNSの発達が大きな理由なんだと思います。昔は服装とかの見た目が周りと違うことが個性だと考えられていた。でも、今はネット上に自分の個性を出せるアカウントをみんなが持っている。自分の描いた絵や撮った写真とかをネット上で披露できる。だから別に外見で個性を出す必要がないんですよ。服にお金をかけるよりもナイトプールとかの方がインスタ映えも狙えるし、楽しい。でも、「ユニクロ」や「ザラ」だけでは満足できない。そういった人たちが買えるような服を売りたい。消費者にとって最高な服にはなれなくても、最適な服にはなれればいいと思っています。
WWD「次世代ブランド「フーフー」の「最高じゃなくても最適な服

ファストファッションの「サイズのコモディティ化」で発生した課題の解決法を探る「COHINA」や「overE」とは視点が違い、コモディティ化による「デザインの同質化」を課題に感じているような印象を受けます

<顧客接点:各種SNSと出張試着会によるコミュニケーション>

D2Cで重要な顧客接点は、デザイナー自らが執筆されているnoteに詳しいので、こちらを参照いただくのが一番だと思いますが、

・インスタ:カタログ要素とライブ配信・・フォロワー数34,7千人
・LINE@:販売情報を告知・・友達数22千人
・note:デザイナーの思想を伝えるメディア
・Twitter:デザイナーの口語体で語られる、タイムリーな情報発信

の各種SNSを組み合わせて活用しており、他のD2Cと比較しても、デザイナー自らの言葉で「プロダクト」の哲学について語れられる場面が多いのが特徴です。

また、最も力を入れているのがリアルな場での体験となる「試着会」。インスタの投稿を見ても、いつどこで実施するかが必ず記載されており、ファンも楽しみにしていることが分かります。

ECで課題となる「着用感」を確かめるための試着会を全国の主要都市で出張試着会という形で実施し、即売ではなく試着会参加者専用のECサイトで販売する仕組み。完全時間予約制で、店内が混雑し過ぎない環境づくりも配慮されています。

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これまでピックアップしてきたD2Cは、どちらかと言うと社会課題の解決が先行し、アパレル未経験者が立ち上げたブランドが多いように感じましたが、foufouは自ら作り、自ら売る。という従来のアパレルに近いデザイナー起点のファッションブランド。

ここまで人気が出ると、店舗を構えて待つだけでも集客できそうですが、固定店舗までわざわざ来れないファンのために、あえて出張試着会という形で実施をしているように見受けられます。

日程調整や場所探しなど、コストがかかる方法ですが、ファンの顧客満足度は相当高いですし、そこを最重視しているブランドなのだと思います。

8.STELLA VIANA <女子大生モデル発D2C>

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<基本情報>
創業年:2018年
Product:女子大生モデル又来綾がディレクションする女性アパレル
Promotion:ディレクターが発信するインスタ
Place:自社EC(※リアル店舗なし)
Price:トップス8,000円、コート20,000円前後

テラスハウス出演経験もあるディレクターの又来綾氏が手がけるD2Cブランド。これまで化粧品のOEMを手がけた経験のある「GOOD VIBES ONLY」とタッグを組み、アパレルの企画・製造・販売を行なっています。

ご本人は「‟テラハの綾ちゃんがやっているブランド”じゃなくて、‟又来 綾のブランド”に成長させていきたいです」という発言もあるように、芸能人ブランドからファッションブランドへの転身を目指しています。

ディレクターのライフスタイルに共感するファンコミュニティを形成していることもあり、「又来綾が好きなもの」が顧客ニーズと直結するため、プロダクトアウト型の企画を行なっています。

<着想>
最初はデザインも、万人受けするにはこうしたほうがいいかな…とか考えていたんですけど、それだと自分に似合わないデザインの服も出てきて。特に髪の毛をピンクにしたときは、自分っぽくないデザインの服は似合わないんですよね。だから、まずは自分らしさが大事かなと思って、「私が好きなもの」を基準にしています。そうするようになってから、お客さんの反応もいいんですよ
JJ「元テラハメンバーの又来綾が自身のブランド『STELLA VIANA』にかける思い

<顧客接点:ディレクターがインフルエンサーとなっているインスタ>

STELLA VIANAの顧客接点は主にインスタ上でのやりとりになります。

・又来綾のインスタフォロワー数:160千人
・ブランドのインスタのフォロワー数:21.5千人

と、ディレクター自身の影響力が大きく、個人アカウントでもSTELLA VIANAの発信をすることで情報拡散させています。

リアルの常設店舗はありませんが、POP-UPは各所で展開しており、3日間で1100万円の販売実績を誇るなど、20代女子を中心に熱狂的なファンコミュニティを創り上げています。

ちなみに、20代女子と相性の良い「ZOZO」での販売も行っており、生産体制も整えつつ、自社EC以外も活用して拡大路線を取っているようです。

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抜群の知名度を誇るインフルエンサー発のD2Cということですが、「‟テラハの綾ちゃんがやっているブランド”じゃなくて、‟又来 綾のブランド”に成長させていきたい」とあるように、名義貸しのコラボブランドではなく、かなりブランド開発にコミットされているのが面白いところ。

これまでの芸能人コラボブランドであれば、まずは、一等地の商業施設にリアル店舗を出し、イベントや受注会への本人顔出しで集客するところですが、あえてEC&SNSによる販売を行うところがイマドキな小売のカタチですね。

9.Classico <スタイリッシュ白衣ブランド>

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<基本情報>
創業年:2008年
Product:スタイリッシュな白衣、聴診器
Promotion:有名アパレルとのコラボ展開
Place:自社EC
Price:白衣 25,000円、聴診器35,000円前後

医療従事者向けにターゲットを絞った白衣D2C。

世の中になかった「スタイリッシュ白衣」市場を作り出し、医療従事者の「ファッション」の不満を解決しているブランド。

<着想>
飲み会の帰り道に、ネットで白衣のことを少し調べてみたんです。すると、本気で白衣を売ろうとしているところがなかった。ネットショップの画像は肖像権の関係でモデルさんの顔に目線が入っていたり、「パンツはセットではありません」といった余計な注意書きがあったり、とにかく雑な作りが目立ちました。じゃあかっこいい白衣はどこにあるんだろう?と思って、今度は「おしゃれ 白衣」、「かっこいい 白衣」といったワードで検索をしてみました。

すると一番上に出てきたのが「かっこいい白衣ってどこで売ってるの?」というようなタイトルの、「2ちゃんねる」のスレッドでした。白衣に不満を持つお医者さんも、興味本位で調べただけの僕も、行き着く先が同じだったというわけです。さらに海外のアマゾンも調べてみましたが、日本と同じようなものしか売っていなかった。日本だけでなく海外のニーズも掘り起こせばものすごいことになるぞ、と気づいてしまったんです。酔っ払いながら(笑)。
LifeNetJournal「「おしゃれな白衣、どこで売ってるの?」医師のニーズから生まれたクラシコ創業秘話

D2Cとしてのプロダクトの良さも当然あるとは思うのですが、何と言ってもポジショニングが大変素晴らしく、

・クローズな業界の割に人口の多い医療業界
・高所得層の医療従事者
・多忙なのでECチャネルを多用

という、入り込めれば美味しい市場に、誰も旗を立てなかった「ファッション」分野で切り込んでいった点が非常に優れた判断だったと言えます。

<顧客接点:アパレルコラボとドラマ衣装提供>

クローズな業界かつ、多忙な医療従事者がターゲットということもあり、他のファッションD2Cと異なり、SNSを多用して顧客と直接コミュニケーションを取ったりはしていません。

そのかわり、リリース記事では「アパレルブランドのコラボ」が目立ちます。

・ロンハーマンとコラボした白衣
・ジェラート・ピケとコラボしたナース服

など、医療の世界にファッションを持ち込み、医者やナースが好きそうな絶妙なブランドとのコラボを実現。右肩にさりげなくロンハーマンのロゴが入った白衣なんかは、お医者さん心をくすぐりそうです。

また、ファッション性を高めたことで、「ドラマ」への衣装提供も積極的に行っています。医療ドラマがやってない日を探すのが難しいほどに医療ドラマ天国の日本において、このポジションを取れるのは宣伝として非常に美味しい。

ドラマで女優が着用しているブランドが売れる。という現象があるのと同じように、医療従事者にしか分からない「あ、この白衣欲しい」というのがあるかもしれません。多忙過ぎてドラマを見てるかは分かりませんが。

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とにかくポジショニングが素晴らしい。ニッチなのにグローバルも狙えて、市場が大きい。普通であれば、医療器具など、命を預かるために非常に高度な研究開発が必要なターゲットとして見られるが、そこをファッションという比較的コストの低い機能で参入したというところにECで参入。しかも、多忙な医者はリテンションが高く、かつ、高所得者層なので今後さらにハイブランド化も狙えるというのが最高です。

また、創業者が医療従事者では無い点も、D2Cにおいて、原体験だけでなく「戦略で勝つ」ということも十分に考えられる点も示唆がありました。

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今回のまとめ

今回のピックアップブランドも特徴が色々あって面白かったですね。

個人的には、Classicoのポジショニングに脱帽ですが、一般論で、顧客接点をマネジメントしてコミュニティ拡大とファンの声をプロダクトに反映するのをD2Cとすると、foufouがD2Cの一般定義に近い感覚を持ちます。

ただし、デザイナーズD2Cは個人への依存度が高いので、デザイナー本人が自ブランドを「インディーズ」と言うように、ビジネススケールを目指すと厳しい。

ただ、音楽の世界ではHYのようにインディーズでミリオンセールを出したバンドもいるので、インディーズだから売れないと言うのは間違い。

また、WITHやSTELLA VIANAのようなインフルエンサーを活用したD2Cは、すでにコミュニティを形成している分、プロモーションの懸念が無いため、心理的にも立ち上げやすく、今後ますます増えると思います。

ただ、個人的には、インフルエンサーの「消費財」としての側面を不安に感じています

インフルエンサーを支援する企業が「インフルエンサーの影響が落ちたら、他のインフルエンサーに変えてブランドを立ち上げれば良い」と言う、芸能プロダクションに見えてしまい、今後、消費期限の短い若年層向け芸能プロダクション型D2Cが乱立されるのではないかと思っています

もちろん、投資ファンドみたいな売り抜きも一つのビジネスモデルとして認められるわけですが、小売がD2Cの台頭と共に、顧客接点のデザインと継続性(LTV)みたいな指標を重視し始めた中では、末長く顧客と繋がれるブランドを作って欲しいな、とは思うわけです。

掲載画像は各ブランドHP、インスタから抜粋して掲載させていただいています。

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