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【東京百景】隙間の目白庭園

大学時代、授業が午前中で終わったら、バイトが始まるまでの束の間に、目白庭園で本を読むのが一番好きな時間でした。

芝生で寝転んだり、池の前の広いベンチにあぐらをかいたり、雨が降ったら東屋で、時間も空間も自分のためにあるようで、門をくぐれば心安らぐ美しい庭がそこにありました。

本を読むのが好きな時間ではありましたが、一番のハプニングは、列からはみ出てしまい、見るからに不安そうにきょろきょろちょこちょこと動きまわる子ガモがいたことです。

その場にいたニンゲンたち老若男女が「お母さんこっちだよ」「みんなあっちいったよ」と一生懸命に声をかけていたのが全員アホで好きでした。

ただその程度のことが、一番のハプニングになってしまうほど、平穏な庭だったのです。

しっとりと美しい草花は、大事に手厚く手入れされています。水の流れる音に混じって、遠くから電車の走る音が聞こえてきます。背の高い木と木の間に黒い2本の電線と、電柱の先が見えます。

東京の住宅街の真ん中にある、目白庭園は、いろんな隙間を縫うように存在しています。

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