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1年半、涙しながら向き合い続けた。とあるInstagram運用の話

テテマーチで約1年半もの間、Instagram運用を担当していたアカウントがあります。

とあるスキンケアブランドのアカウントで、2018年6月から運用を開始し、2019年12月の運用終了まで、私はディレクターとしてアカウント設計、日々の運用、施策立案などに幅広く関わっていました。


2019年冬、ブランドは多くのファンの方に名残惜しまれながら、プロダクトそのものの販売終了を決定。同時にSNSアカウントの運用も終了の運びに。

「販売終了になるんです」とお客さんからの言葉が発せられたその日のことを、私はきっとこれからも忘れることはないと思います。

特に大好きだったブランドのお仕事でした。そして1年半という短くないブランドと共に過ごした日々を、なんとか形に残しておきたい。今心の中にある思いを言葉に残したい。

そんな感情から、このnoteを公開しています。
これは大切なブランドと歩んだ、テテマーチ・井関奈美という一人の人間の記憶です。少しでも多くの方に読んでもらえたら嬉しいです。


「ブランドと過ごす一日」を送る。アカウント方針が決まるまで

そのブランドがInstagram運用に乗り出した理由は、若年層に広くプロダクトを知ってほしいから、でした。

一般的にプロダクトのターゲットが若年層である場合、Webサイトのみでの認知獲得が難しいケースが多いです。

そのためブランドの名前を一人でも多くの方に届けるためにInstagramを活用することになりました。


私たちはアカウントの立ち上げから関わらせていただいたので、まず考えるべきは「どんな方針で運用を行うのか」でした。

スキンケアブランドの多くには、Webサイトや広告などでの利用を目的とした写真素材、いわゆる資産があります。Instagramの運用においても、それらの資産を効果的に活用できないか。それが最初に考えたことでした。

ただ、どれだけ考えてもその方針はしっくりきませんでした。というのも、広告用に撮影した写真は、言うなれば背筋を“しゃん”と伸ばした素材たち。

このブランドに関しては、Instagramで発信するなら、もっと日常的で身近な写真のほうが良いと思っていたからです。


正直、とても悩みました。Instagramのみで見られるコンテンツを配信するべきかどうなのか。その場合、どういったものが良いのか。また、それは運用可能なのか。

プロダクトのターゲット層には私自身も含まれていたので「自分だったら何が見たいか」と主観的な目線で考えたり、ブランド目線で競合商品と比較した強みを発信することを考えたりもしていました。


最終的には考えたのは「Instagramのみで見られるコンテンツを通して、日々に寄り添えるようなアカウントを作るべきでは」ということです。

決め手は、ブランドの公式Webサイトに掲載されている“ブランドと過ごす一日”を提案するコンテンツを見つけたことでした。

朝・昼・夜と、さまざまな時間軸で寄り添えるブランドの提案を見たとき、見つかりそうで見つからなかったパズルの最後のピースがカチリとはまった音がしたからです。

そうしてたどり着いたのが「普通の女の子がブランドと暮らす様子を届ける」方針。
運用開始からの1年半、月ごとにテーマを決めて、女性の日々の様子を物語形式にしたコンテンツを配信していきました。


誰よりもブランドについて考えた、という自信がもたらしたもの

運用が始まる前段階のコンセプト作りから悩みに悩んだわけですが、運用が始まってからも円滑に日々の運用を進められるようになるまでは苦難の連続でした。

なぜなら、クライアントとの信頼関係を築くまでには長い時間を要するからです。

たとえば、定例ミーティング。
クライアント側はブランドや他広告代理店担当者など総勢約10名の参加。

ここまで大規模なMTGは初めてで、“怯む”環境だったのは言うまでもありません(笑)。

そんな中、とても印象的だったエピソードが一つあります。それは、定例ミーティングのとある一幕で「この施策を行う意図はなんですか?」とシリアスな口調で問われたときのことでした。

その場の空気は一瞬にしてピキンと凍り、私も場の空気に呑まれそうになっていた。

本当は怖いだの不安だのといった感情が押し寄せてきましたが「ここで何も言わないプロはいないだろう」となんとか思い直し、これまで考えたことや提案の理由などを述べました。

だって私には誰よりもブランドのことを考えてきた自信があったから。

なんとか考えてきたことすべてを伝えたとき、その場にいた全員が私の意見に納得し、それならと提案を理解してくれました。本当に嬉しかった。


ちなみに、そのミーティングの後、私は泣いていました。当時の私にできる精一杯の提案が受け入れられたことへの安堵感と「誰よりもこの仕事が好きだ」という思いとが溢れてきたからです。

私自身も気が付かないうちに、そして時間が経つにつれて、Instagram運用はただの仕事でも案件でもない、私にとってのどこか特別な存在に変わっていたように思います。


そうして運用を任せていただいてから約1年後のある日、ブランド担当者の方が異動で担当から離れるタイミングがありました。

挨拶の際「私は離れてしまいますが、テテマーチさんなら、井関さんなら、大丈夫なので安心してお任せします」と伝えてくださいました。その言葉を聞いたとき、小さく積み重ねてきた信頼はたしかなものだったと認識できました。


プロとプロが集まる現場で、プロにしかできない最高の仕事を

人と向き合うことと、もう一つ、私がInstagram運用に携わる上で徹底していることがありました。それは、クリエイティブの質に妥協しないことです。

Instagramでは、前述の通り、女の子の日々の暮らしを題材にコンテンツを配信する方針を取っていました。そのため、投稿のための写真撮影も仕事のうち。

カメラマンさんと撮影に臨むのですが、おそらく私は「とてもよく意見を出してくる人」だと彼らの目に映っていただろうなと思います。

なぜなら、本気で作っていくクリエイティブこそ、SNSでは最大の効果を発揮するだろうと思うからです。

カメラマンさんは写真のプロで、私はSNSのプロ。
プロフェッショナルが集まったのであれば、お互いに任せきりにするのではなく、真摯に向き合い意見を交換しながらクリエイティブを作るべきだと考えていました。

そのほか、写真に限らず、投稿のキャプションの表現一つ取っても私は常に「本当に現状がベストか?」を問い続けながら改善を重ねていきました。

結果として、小さな積み重ねが功を奏し、フォロワー数やいいね数の増加など目に見える成果を残すことができるように。

また、テテマーチとしても、いくつかのメディアでInstagramの運用について取り上げていただく機会もありました。


徹底的に向き合ってきたからこそ知れたこと

さて、運用を担当してから1年半が経過する頃、プロダクトが販売終了すると知りました。もちろん、プロダクトの生産がなくなるので、SNSの更新も終了です。

ブランド担当者の方から話を聞いたとき、不覚にも大勢の人を前に大泣きしている私がいました。

その話を知る前の定例ミーティングで「どこか様子がおかしいな」「もしかして販売終了が近いのでは……?」なんて、予感していたのに、です。

理由は明確で、自分のすべてをぶつけて挑んでいたからです。そして、その結果、プロダクトを愛し、アカウントを愛し、誰よりも強い熱量を込めて取り組んでいたお仕事だったから。

どうしても受け入れきれませんでした。ブランドを終わらせないためにもっとできたことがあるのではないかと落ち込み、悔しくて、どうしようもありませんでした。

ただ、そんな意気消沈する私をほんの元気づけてくれたのは、クライアントさんのこんな一言でした。

「やっぱりね~。『井関さん、絶対に泣いちゃうよね』って話していたんだ」

1年半、未熟なりにも精一杯向き合ってきた姿はきっと届いていたのだなと、そう感じることができたんです。


過去の自分を思い返してみると、私はとても生意気だったなと思います。クライアントさんに対しても、カメラマンさんを始めとした仲間に対しても。

疑問に思ったこと、自分の意見や提案を片っ端から伝えるスタンスは、今も昔も変わりません。生意気です(笑)。

でも、誰よりも考えていると思えるから言える言葉があります。出せる提案があります。

“真摯に向き合う”ということの意味は、私にとって「納得するまで話し合うこと」そして「話し合える関係性を築くこと」に他ならないような気がするのです。

だから、生意気だと思われてしまったとしても、私は私の意見を伝え続けます。それが一番良い仕事をするための鉄則だと思うから。

私が主役になれる場所をずっと探していた

ブランドのInstagram運用を通して、改めて今振り返ってみると、さまざまな気付きがありました。まず、自分の強みが明確に見えるようになったこと。

テテマーチには「5(ファイブ)スローガン」と呼ばれる、5つの行動指針があります。そのうちの中核を担う“No5. オーシャンズX(=全員が主役であれ)”に対して、私は自分なりの解を持てずにいました。

当時、入社したてだった私、右も左もわからない状態の自分にとっての強みはなんだろうか、と。

ブランドのInstagram運用を通して知れたのは、自分の強みは「コンテンツへのこだわりの強さ」にあることでした。SNS運用のお仕事において、投稿素材の撮影まで行うケースはそう多くはありません。

その中で、撮影も含めたディレクション、コンテンツの細やかな手配、強いこだわりなどを武器にアカウントを育てることができたため、大きな自信につながりました。

今では「撮影を含む運用はなっぴ(井関)に任せてみよう」と言ってもらえることも多いです。


さいごに

こうして大きな結果を残せたことはとても嬉しく自信の付く体験でした。ただ、一方で、私の中には「一発屋では終われない」という強い覚悟もあります(笑)。

今を超え、さらにクライアントさんに喜んでいただけるような結果を残すために邁進していきたい一心です。頑張らなければ……!

クライアントさんとの信頼関係を構築するために必要なこと、クリエイティブの質には妥協しないこと。どれも当たり前のことですが、誰しもが実行できることではありません。

でも、私ならそれができる。その自信を持った今なら、これから先はさまざまなお仕事に関わりながら結果を残せるような気がしています。


最後に、今回のnoteを書くにあたって、テテマーチという企業の懐の深さをとことん感じる場面が幾度もありました。

まず、こんな若い私に大きなアカウント運用をまるごと任せてくれたこと。当時、まだ認知のなかったテテマーチは、今ほどSNSマーケティング業界で名前を知ってくださっている方も多くなく、実績を積み重ねなければならない状況。

本来であれば、ベテランメンバーにメインディレクターを任せて安定した結果を残すのが妥当でしょう。でも、その道を選ばなかった。

「なっぴに任せてみよう」という言葉に詰め込まれた期待の意味を、今改めて実感しています。テテマーチってすごい(笑)。

だからこれからも、テテマーチへの恩返しをしながら、多くの方の成果を残すお手伝いができたらと思っています。


長々と書きましたが、テテマーチや私の仕事のスタンスを少しでも届けられていたら嬉しいです。では、最後まで読んでくださりありがとうございました。なっぴでした!


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