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成馬零一×松村早希子の大人になるのは向いてないVol.3 新宿ロフト3776ワンマンライブ〈盆と3776がいっしょに来るよ!〉ライブルポ

成馬零一(以下、N): 今回は、8月15日に新宿ロフトでおこなわれた富士宮出身のアイドル・3776のワンマンライブ〈盆と3776がいっしょに来るよ!〉について話したいと思います。ライブステージとバーステージの二手に分かれて、交互に進行するという異色のライブでしたよね。

松村早希子(以下、S):私はメインのライブステージ、成馬さんはバーステージの方に主にいらしたんですよね。

N: そうです。バーステージでずっとプロデューサーの石田彰さんを見てました。

S: ずっと石田さんを見てました……大好きなんですね!!

N: ライブステージが3776の井出ちよのさん、バーステージに石田彰さんがいる状態でおこなわれたのですが、まずそれがびっくりというか「どっちに行けばいいんだよ?」と、ファンは騒然となりました。どっちに行っても、全貌は見られないってのがいじわるですよね(笑)

S: メインの方ではちよのちゃんがステージから去ると、スクリーンがズズーっと降りてきてそのスクリーンにバーステージの様子が映る、という形でした。画質があんまりよくなかったので細かい表情とかがまったくわからず……。

N: バーステージの方もスクリーンがあるので、一応やっていることはわかるんですけど、ライブに行って見れないパートがあるというのが恐ろしい話ですよね(笑)。

ライブって現場に来た人だけが体験できることが至上の価値のはずなのに、会場に行っても体験できないことがあるってのが、いじわるだなぁって思いながら見てました。

とは言え、流石にちよのさんがいるライブステージの方が、人は多かったですけど。

S: こちらではステージとスクリーンを交互に観る感じでした。全員が一箇所に揃うことは一回もなかったですね。

N: 今年の1月におこなわれたワンマン(※)があまりにも実験的すぎたので、また何かやるんじゃないかとは思ってたんですけど、まさかこうなるとは(笑)もしかしたら、バーステージの方が全貌はわかりやすかったのかもしれないですね。

1月16日にTUTAYA O-nestでおこなわれたワンマンライブ「3776ライブに行かない理由があるとすれば」のこと。井出ちよのを眠らせてライブを乗っ取った偽3776(演じたのはMi-IIとまりりん)と未来からやってきた井出ちよのが歌で対決するという寸劇仕立てのライブ。事前に何の説明もなかったので、普通のライブが行われると思ってかけつけた観客を唖然とさせた。アルバム「3776を聴かない理由があるとすれば」が高く評価された後のライブで新規のお客さんも多かったにも関わらず、アルバム収録曲をほとんどやらなかったことが話題となった。ライブの全貌は、OTTOYの配信と、物販で販売しているブルーレイで見ることができる。

S: バーステージの方にも、モニターがあったんですよね。

N: ありました。多分同じものですね。

S: 画質はどうでした?

N: そこまで良くはないですね。だから細かいパフォーマンスはわかりにくかったかなぁ。
 まぁ、何をやっているのかは、ある程度はわかるって感じですかね。たぶん、石田さんとまりりんの司会パートと、寸劇をやってる場面が、そちらだとわかりにくかったのかも。

S: スクリーンの方はとにかく、暗くて誰なのかもよくわからない感じだったんですよ。まりりんだけは髪型ですぐわかりましたが。あと石田さんがあまり映ってなかったから、石田さんファンだったら悲しかったかも(笑)

N: ファンのリクエストに応えて投票数が多かった曲を順番に歌うという『ザ・ベストテン』とは逆に形式ではじまるんですけど、ちよのさんが歌っている間、石田さんが踊っていたのは、そちらでは見れなかったのかもしれないですね。

S: それはまったく見えなかったですね……。


「アキラ……踊ってるよ!」


N: あのワンマンで最初に衝撃だったのは、石田さんが踊る人だったってことですね(笑)

S: バーステージのお客さんの笑い声だけが聞こえて、「え? 何で笑ってるの!?」という感じでした。3776Extendedや最初の下北沢でのワンマンでも踊るところはちょっと見せてくれていたけど、そんなに長時間見たことは確かにない!レアですね!

あとワンマンとは関係ないですが、踊る石田さんといえば柴山一幸さんのMVですよね! 

MV「柴山一幸 featuring 井出ちよの、石田彰 / That's the way」

N: この世に踊る人と踊らない人がいるとしたら、石田さんは踊らない人だと勝手に思ってたので「アキラ、踊ってるよ!」って感じで衝撃的でした。その後、MVや、K&M新宿店の動画が流れてきて、石田さんがノリノリで踊ってるから、何かあったのか? って思いました。このMVも、アキラが一番目立ってますよね。

S: アキラ、踊ってるよ……!(笑) 昔から石田さんを知っている人には当然のことなのかもしれないけど、踊らなそうな人が突然踊り始めた衝撃がありますよね。

N: あと、石田さんが見る度に、どんどん痩せていってるのが気になってて……。忙しすぎて逆に健康になっていってるのかも。

S: 本当に気持ちいいくらいのアキラーですね! こちらのメインステージでの大きな衝撃はやっぱり、井出ちよのソロ初披露と、amiinAとの壮大なコラボレーションです!

N: ライブ構成を整理しますね。まず、ホームページでリクエストした3776の曲をちよのさんが歌うっていうベストテン形式ではじまって、でも3曲くらいしかやってないですよね。しかもトップ3が「デジタルネイティヴ」「旅ふぉとセレクション」「温暖湿潤山ガール」という、ちよのさんが苦手といっていた曲ばかりという(笑)。

その後、「高校生になった井出ちよの」っていう寸劇+歌が5曲続いて、井出ちよののソロアルバム発表と新メンバー募集のフリートーク。その後、amiinAが登場して単独コーナーがあって、その後が3776とamiinAとのコラボによる『時空ラブレター~アフター大噴火の世界の君へ~』という20分強の曲を歌って、アンコールで『3.11』を歌って終了。前回同様、異色の構成なんですけど、今回はお客さんがみんな大満足という感じでしたね。

参照→3776、8月15日(月)@新宿LOFT、あの奇跡のワンマンライヴが音源化! しかもamiinAも収録のノーカットで!

S: amiinA単独コーナーも、ワンマンのゲストとは思えない長さでした。それでも、2マンではなくあくまで「3776ワンマン」でしかないものになってましたね。

N: 逆にamiinAパートはこちらからだと、全貌がわかりにくかったですね。

S:ダンスが本当に綺麗なんですが、ステージが低めだったのでこちらでも見辛い所はありました。そちらでもわかりにくかったか……どういう風に映ってたんだろう!?気になります。

 amiinA単独パートが、「monochrome」から始まることでガッと一気にamiinAの世界観に引き込まれたのが印象的でした。「monochrome」始まりって珍しいなと!MCで、石田さんとちよのちゃんから絶対やってほしいとリクエストされた曲ですって言ってましたね。

N: 仕方ないことですけど、単純にステージをモニターで映すと肉眼に較べて視点が限定されてしまうので、生の臨場感は落ちますよね。楽曲の良さはこちらでも実感できたんですけど、綺麗な絵を見てるみたいな感じでした。だからその時だけメインステージに行く人も多かったです。

そういう意味でいうと井出ちよのソロも寸劇パートが終わった後の歌ってる場面では、まだポカンとしてたかも。

 そもそも、「高校生になった井出ちよのってどういうこと?」って感じで。後で井出ちよのソロアルバム(※)を出すって言われて納得したけど、

ライブではコンセプトについて何も言わずにはじまるので、固唾を呑んで見守ってたって感じですよね。この置いてけぼり感も3776ワンマンならではと言えるかも。

(※)井出ちよのソロアルバム「もうすぐ高校生活」 高校生になった井出ちよののをモチーフとした12曲が収録されており、ギャル、文化部、学級委員、帰宅部etcといった様々な井出ちよのが楽しめる。ワンマンの後、アナログ盤が先行発売され、配信、CDが後に発売。3776名義ではなくあくまで井出ちよののソロアルバムで、楽曲も石田彰以外の人が作詞、作曲に多数参加したバラエティ豊かなものとなっている。


amiinAと3776


N: amiinAと3776のつながりについて、説明していただけますか?

S: 私なんぞが説明するのも恐縮ですが…amiinAは、元々amiちゃんとmiinaちゃんの二人で結成されましたが今年2月にmiinaちゃんが脱退、5月に新メンバーのmiyuちゃんが加入して再始動しました。結成初期からずっと齊藤州一さん率いるnanolineが楽曲制作・プロデュースを手掛けていて、その制作陣の音楽に惚れ込んでいるファンが多いということと、そしてその音楽世界を体現することのできる高い表現力を持った少女(達)がメンバーであるというのが3776との共通点かもしれません。

コールとかMIXを入れて騒ぐタイプじゃない拘りの強い音楽をやっているアイドルグループで、かつ年齢も近い(miinaちゃんが一歳年上、miyuちゃんとちよのちゃんが同い年)ので色々なイベントで共演することも多いですが、なかでもamiinA主催イベントの「WonderTraveller!!!」には、第一回目から皆勤賞で3776が出演しています。

前メンバーのmiinaちゃん最後のライブでの「3.11」コラボは、歌詞とその時のお別れの状況がリンクして、凄かったです……。

とにかく!ただ年齢が近いから仲良しというだけじゃなく、表現する者として共鳴しあう部分があるということが、二組のコラボレーションを観ると伝わってきます。

N: ダンスの先生(原田美穂さん)がツイッタ―で書いてたのが、面白かったですね。 

S: みました! ちよのちゃんを絶賛しておられましたね!

しかしダンスの全貌は、後ろの方の人は見えづらかったようなので、ほんと映像化切望!

N:カメラは入ってたので、たぶん、編集して映像化されると思うんですよね。あの「時空ラブレター」はいろんな人に見てほしいですね。

S: 私ももう一回観たいです!

N: あと、このタイミングで「高校生になった井出ちよの」ってコンセプトを打ち出すのは面白いですね。ギャル風の井出ちよの、学級委員風の井出ちよの、運動部でがんばる井出ちよのといった高校生になった井出ちよのをまりりん、れなひら、すみれという、3776にゆかりのあるメンバーが朗読劇みたいのを演じた後で、ちよのさんがソロ曲を歌うんですけど「一人おニャン子クラブ」って感じで、最初はびっくりしました。

変な話ですけど、それが単なる思い付きの企画って感じではなくて「石田さん、ちよのさんが高校生になってからのことも考えてるんだって」思って少し嬉しかったです。

S: 少しかい! でも本当にね……やっぱりアイドルってできる時間が限定されてるという見方が多くて、「儚いもの/期間限定のもの」という印象が強いと思うんですが、石田さんは、ちよのちゃんの時計を止めないで前に進めてくれたんだ!と思って、私は勝手にすごい嬉しくなっちゃって高校生パートで結構泣きました……。

N: 石田さんって、成長する女の子をちゃんと描くというか「肯定する」ってモチーフが常にありますよね。前回同様、ワンマンの時にまりりんたち元3776や元TEAM MII、Mi-IIの縁のあるメンバーを呼んで、高校生になった井出ちよのを演じさせるってのも、何かこだわりがあるのかなぁって思います。全部重要なんだっていう意地というか。

あと、これは個人的な思い入れなんですけど、ワンマンの時、ずっとちよのさんと石田さんが別々のステージに居るって構成は改めて考えても面白くて。プロデューサーと演者ってよりは、対等なパートナーみたいになってますよね。

S: まぁ、成長を否定されてもキモいだけですけどね! 複数ステージがあるからといって音楽フェスとも違うし、二つのステージで起こっていること全部ふくめて一つのパフォーマンス作品、という感じでしたね。

N: 石田さんは、パラレルワールド(並行世界)というか、ふたつの時間が同時に流れてるみたいなモチーフが好きですよね。前回のワンマンにおける「未来の井出ちよの」とか

S:「過去と未来」という形でステージ上に時間軸を複数おいて演者がそれを体現するという意味では、前回の1月のワンマンと構成は近いのかもしれないですね。今回は何百年後という未来じゃなくて、もう数ヶ月後に迫っている「高校生」という未来。

N:「時空ラブレター」と「3.11」がそういうモチーフの曲ではあるんですよね。あの二曲は、何度聴いても時間軸がわからなくなる曲で、現在と未来で同じことが起きてるかのようなところがある。前回はそれがSF的な視点だったのに対して、今回はアイドルと少女の成長みたいなところに照準を合わせてきたのかも。ステージがたまたま二つあったからそうしたのか。コンセプトにあわせて新宿ロフトを選んだのかが、わからないですけど。

S: 「時空ラブレター」の時は石田さんが生でギターを弾いてたんですよね?

他の曲もそうでした?

N: 「3.11」の時はいなかったですね。たぶん「時空ラブレター」だけですかね。寸劇の時はギターを弾いていたかな。

「時空ラブレター」はたしか、元々あるオケにギターを足したんですよね。オケを作って、更に演奏を足すみたいな感じで。だから「時空ラブレター」の時は石田さんの動きが面白くて、ずっと見てました。

S:二度目の「ずっと見てました」発言!

N: でも、面白かったですよ。バーカウンターで見てても「時空ラブレター」は泣けました。

S: なかなか見れない光景ですよね!

新メンバー募集 3776の今後 

N: あのワンマンって、結構いろんなことを発表してますよね。井出ちよのソロもそうだけど、新メンバー募集もあったわけだし。

S: 新メンバー、どうなってるんですかね……。

N: 良い人がいたら入れるって感じなんですかね。もう募集は終わってるから、結果を待つしかないんですけど、あのメンバー募集自体も「他のアイドルグループとの兼任でもOK」「他県出身でもOK」等、かなりざっくりしていて謎で。

S: ざっくりですよね。

N: みんな、ちよのさんと石田さんで3776と思ってるんですかね。

S: メンバーがちよのちゃん一人になる前の歴史あってこその3776だと思うけど、やっぱり世間的に広まったのが今の体制になってからという印象は強いです。でも、新メンバーが入った新しい3776も見てみたいですよね。

N: 石田さんは色々試したいのかなぁって思いますね。

S: たとえウケたからと言って同じことをずっとやる人ではなさそうですよね! でもアーティストだったら、それが当然ではないかと。

N: ファンの方と何人か話をしたんですけど、1月のワンマンの後、みんな落ち込んだって話してたんですよね。てっきりファンの人はみんな面白がって、ついて行ってると思ってたんですけど、ちゃんとアイドルとして売れてほしいって立場からすると心配にはなるだろうなぁって思いました。

みんな石田さんのアーティスティックなところがあるからこそ3776を支持してるんだけど、アイドルとしてちゃんと売れてほしいという葛藤も一方であるみたいで。

S: そこは面白がれないですよ。ヲタはそういうもんじゃないと、思います!

N: 本当は『3776を聴かない理由があるとすれば』の続編的なアルバムを今年出すべきだったんでしょうけど、どんどん良くわからない方向に行ってますからね。

S: 今までも一人だったのに、「ソロって何!?」って、びっくりしました。

N: 毎週配信されている水曜元気広場も実験的でスゴイですよね。即興でちよのさんがお店の宣伝の歌を作ってるんですけど、前は不器用なラップみたいだったのが、妙に自然な感じになってました。


S: ステージずいぶん暗いんですね……。(アーカイブ動画を見ながら)

N: あの暗さ、いいですよね。「秋だなぁ」って感じで。

S: あっ、この文房具屋さん行きたくなりました!(※後日富士宮訪れた際に行ってみました。ものすごくインパクト強いお店でした!!)

N: 定点カメラなのが厳しいですけど。元気広場みてると、ちよのさんの総合的なスキルの高さにビビりますよね。元気広場の配信みてると富士宮の知識が増えてくんですよね。だからもっと地元とのコラボが増えていけばいいとは思うですけど。

S: ほんとほんと! しかし新メンバーで、こんな才能溢れる子と一緒にやろうって度胸のある子はなかなかいないだろうなぁ。逆になんにもできない人が入ってくるかもしれませんが。

N: 井出ちよのとグループの3776を分けるのならMi -IIでいいわけですからね。まぁ、石田さんとしてはグループでやりたいことがあるんだろうけど元々、AKBがやりたかったわけだし。

S: そうそう! アキラーとしては石田さんのやる「新しいこと」がどんどん見たいのでは!

N: ただ、踊るアキラが、そこまで見たいかと言われると……。

S: 踊りじゃなくて(笑)踊る石田さんは、たまにでいいですよね! 実際レアだし!

N: 単純に曲は増えてほしいですよね。石田さんは音楽だけでなくストーリーテリングの才能があると思うので、小説とかの物語方面の展開も見たいです。ただまぁ、新メンバーは3776の曲に、そもそもちゃんと曲についていける人がちよのさんしかいないんじゃないかっていう懸念はありますよね。

S: 今までの傾向だとそうですよね……。amiinA以外と、3776曲でコラボやってるところを見たことないし。 新メンバー加入で曲もまったく新しくなったらまた別ですが。

N: 一人だけ合わせられるちよのさんと、ついてけない他のメンバーって組み合わせだと、やっぱり無理がでますよね。まぁ、ソロ用、グループ用って感じで曲のバリエーションを増やしていきたのかもしれないですし、ついていけてない感が逆に絵になる可能性もありますけど。

S: こればっかりは予想もできないし、次の一手が出てくるのを待つしかないですね!


 松村早希子 プロフィール

 1982年東京生まれ東京育ち。この世のすべての美女が大好き。ブログにて、アイドルのライブやイベントなどの感想を絵と文で書いています。
 雑誌『TRASH-UP!!』にて「東京アイドル標本箱」、WEBサイト「リアルサウンド」にてコラム「松村早希子の美女を浴びたい」を連載中。

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