『さらざんまい』と『セーラームーン』

 6話が素晴らしくて放心状態で、ずーっと『さらざんまい』のことを考えてる。リアルサウンドの原稿書く前に幾原監督の過去作見てたけど、『ウテナ』は長いので、『輪るピングドラム』と『ユリ熊嵐』を見た。テーマ的なものとか演出はどんどん先鋭化してるけど、一方で気になるのが、幾原監督が持ってる大衆性というか通俗的な懐の広さで、実はすごくベタでわかりやすいんじゃないかなぁって最近は思ってる。ユリ熊で熊が襲ってくるシーンで、ショーク・熊ショック!ってSEが入るのが当時、ひどくてすごいと思ってたんだけど、「さらざんまい」まで含めて、1話完結のアニメのフォーマットみたいのをすごく忠実に守って、途中から逸脱するって感じなんだよね。

 その象徴がバンクシステムで、毎週同じシーンが流れるのはヒーローものの変身シーンの方法論だよなぁとか思う。

 それで、そういう型見たいのを獲得したのは、やっぱり『セーラームーン』なのかなぁと思って、まずは幾原監督の映画版『セーラームーンR』を見たんだけど、この時点で男の、というか王子様の絶望みたいのがすでにダダ漏れで、フィオレって悪役がタキシード仮面をうさぎに奪われた嫉妬で地球を襲うみたいな展開がBL的で面白かった。あれがウテナの鳳暁生になり、ピンドラのあいつになってさらざんまいのレオとマブになるのかと。

 あと、自己犠牲による救済みたいなモチーフもすでにあった。最後は逆襲のシャアを思わせる隕石落下。あと花ってモチーフの見せ方が面白くて、ちょっと星の王子様も思わせる。作家性が開花したのはウテナだと思ってたけど、描きたいことはセーラームーンから変わらなかったのがよくわかる。

 今はテレビ版『セーラームーン』を1話から順番にみてる。最初は主人公が一人だから、逆に見せたい構造がよくわかる。92年放送だからバブル崩壊後で、敵の攻撃がリアルで、消費社会の誘惑って感じで、宝石とかペットとかダイエットとかラジオ番組の恋愛相談とか占いを餌にしてエナジーを奪う大人の女性とその配下のイケメン軍団って構図が面白いなぁと思ってみてる。なんというかマルチ商法的な悪だなぁって思う。演出もホラー的で結構こわい。後半出番がへる、なるちゃんと海野が面白い。あとゲーセンがよく出てくる。
 多分、80年代的なトレンディドラマ的なものとコギャル的なものが衝突してるんだよね。だから敵が大人の女なのかなぁと。見てて不思議なのはタキシード仮面の存在で。こいつは何なんだろうなぁとか思って見てる。でもまぁ、ウテナ以降の悪役がタキシード仮面が擦り切れて堕天した姿だと思うと結構、ゾッとする。

 今の視点から見るとゆるい作りだなぁと思うんだけど、それが見やすさに繋がってる。やってることは欲望搾取と怪人とのバトルだから、『さらざんまい』とそんなに変わらないんだよな。まぁ。プリキュア的と言ってもいいけど。ウテナもしょうもないコメディ回みたいのが何回かあったけど、今思い出すと、ああいうパートって意外と必要なのかなぁとか。商業性というか、子供っぽい隙間みたいのが大事って話。

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