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インタビューを円滑に進めるための3つの心理作戦

日々同じ業界の同じテーマで取材を続けていると、質問内容もテンプレート化し、その話も「前にも聞いた話だなあ」となりがちです。インタビュイー(話し手)が有名人でメディアによく出ていても、「またその話か」となることもあるでしょう。しかし、インタビュアーにとって場数が増えるということは、同時にそのテーマにより詳しくなっているということでもあり、やればやるほど深い話が聞けるようになっているはずなのです。だから、「また同じ話か」と思ったら、それはインタビュアーの怠慢でしかありません。

インタビュイーは毎回変わるのです。

言葉遣いのクセ、イントネーションや抑揚、どのタイミングで表情が変わるかなど、言葉として表面に出ている部分とは別に、百人百様のキャラクターが必ず出てくるものです。インタビィーがふと発した貴重な言葉を見逃さずに、深堀りしていけば必ずオンリーワンの話へと昇華していくことでしょう。

3つのメソッド

では、どんなインタビュイーからでも、いい記事になる話を聞き出すにはどうしたらよいでしょうか。

今回は、私がインタビューでいつも意識している「アクティブリスニング」「オープン・エンド・クエスチョン」「ペーシング」の3つのメソッドについて紹介します。

■アクティブリスニング

アクティブリスニングとは、コミュニケーション技法のひとつで、米国の臨床心理学者カール・ロジャースが提唱した傾聴姿勢のことです。本来は心理療法として活用されるものですが、現在ではビジネスシーンで活用されることが多くなっています。

アクティブリスニングは、相手の話をただ受動的に聞くのではなく、会話の中に潜む事実や話し手の感情を把握することで、話の本質を明確にしていきます。

具体的には言葉を使って伝える「バーバルコミュニケーション」と、言葉を使わず態度から伝える「ノンバーバルコミュニケーション」に分かれます。

バーバルコミュニケーションとは、相槌や共感です。共感とは、自分が話し手の立場ならどう感じるかを考え、話し手の気持ちに共感することから相手をサポートします。

相槌では「はい」「うんうん」「そうですよね」「なるほど」「へぇ〜」「そうですか」)などワンパターンにならないように工夫します。ワンパターンの相槌を打っていると、話し手は「ちゃんと聞いているのかな?」と不安になるので、真剣に集中しているという姿勢を見せることが大切です。インタビューに限らず、「はいはい」「なるほどなるほど」という二つ返事の相槌は、相手をバカにしている印象さえ与えるので注意しましょう。

特にインタビューでは、話し手が言ったことを自分の言葉に言い換えて繰り返したり、簡潔にまとめたりすることがとても重要です。これは特に話し手のボキャブラリーが乏しいときに、文脈から相手の言いたいことを察して代わりに適切な表現を生み出す意味もあるからです。

ノンバーバルコミュニケーションは、視線や姿勢、仕草、表情などです。

視線は話し手の目を見ることによって、いかにその人の話を集中して聞いているかを伝えます。また、姿勢や仕草ではリラックスすること。緊張して臨むと相手にも伝染するため、できるだけゆったりとくつろいだ状態で話を聞きます。たとえインタビュイーが大物の有名人だとしても、両手を膝の上に乗せて背筋をピシッと伸ばして緊張した雰囲気を醸していては、逆にいい話を聞き出せないものです。ただ、あまりリラックスした姿勢でも相手に不快感を与えることがあるので加減に注意しましょう。米国のトーク番組を観ると、司会やインタビュアーが脚を組んでふんぞり返りながら話を聞くシーンがよく見られますが、日本では「なんだこいつ、偉そうにしやがって」となるのでやりすぎは禁物です。

表情は柔らかく微笑んだり、自然な表情でいることを意識します。話し手の表情に合わせるようにして、その人の感情を汲み取ろうとする姿勢を見せることが大事です。

ただ、ノンバーバルコミュニケーションは、インタビュイーの性格や状況、その人との関係によっては逆効果になることもあるので、相手を観察しながら対応する必要があります。

■オープン・エンド・クエスチョン

質問には、「イエス・ノー」で答えられる「クローズド・エンディング・クエスチョン」(閉じた質問)と、話し手が内容を広げやすい「オープン・エンド・クエスチョン」があります。インタビューでは「オープン・エンド・クエスチョン」が原則です。「クローズド・エンディング・クエスチョン」はアンケート集計や尋問などには有効ですがインタビューでは避けたほうがよいでしょう。「オープン・エンド・クエスチョン」で、具体的に「いつ、だれが、何を、どこで、どうした」という5WHを抑えながら話のポイントを引き出しましょう。自分が知っていることも、あえてインタビュイーが語りたくなりそうな話題を振って、インタビュイー自身の言葉で語るように誘導していくのです。

たとえば、『徹子の部屋』の黒柳徹子さんのインタビューは、まさに「オープン・エンド・クエスチョン」の見本です。事前にゲストのことを調べ尽くして、「あなたは○○なんですって」ときっかけを出す。そして、「そうなんです」で終われば、重ねて「そのときあなたは○○したっていうじゃないですか」と話を進めます。そうすることでエンドレスに話を広げていきます。

キングコングの西野亮廣さんも「オープン・エンド・クエスチョン」の達人ですが、彼は黒柳徹子さんのように事前リサーチをしている様子はあまりありません。しかし、「あなたこう思っていませんか?」「どうやってそういうことを考えるんですか?」「なんでそんなことするんですか?」と、漫才で培ったツッコミスタイルで次々と面白い話を引き出していきます。

他にも杉村太蔵さん、武井壮さん、東野幸治さん、ひろゆきさんなど、テレビで活躍する人は「オープン・エンド・クエスチョン」の達人が多いので、とても勉強になります。

■ペーシング

ペーシングは「歩調を合わせる」という意味で、相手が話しやすい雰囲気や空気をつくりだし、安心感や心地良さを感じてもらう手法です。

具体的には相手の話し方のスピードやリズムに合わせます。ゆっくり話す人にはゆっくりと。早く話す人には少し早めに。リズムが合うことで親近感が生まれ、心の距離感を近づけることができるとされます。

相手のペースに合わせることで、相手にとって話しやすい、安心して心を開ける、自分のことを話してもいいと思える存在であることをアピールします。

これは今回の3つのメソッドの中では一番難しいかもしれません。なぜならインタビュアーとしての経験を積めば積むほど自分のスタイルもできてくるからです。最初から波長が合う相手なら問題ありませんが、口数が少なくゆっくりと話す相手に、ベテランほど「もっと話してほしい」と思って理詰めで矢継ぎ早に質問攻めしてしまうことがあります。逆に本題からズレて気持ちよくペラペラとしゃべっている相手に「いま聞きたいのはそのことじゃないんだけどなあ」と、本題に戻ろうと話の腰を折ってしまうこともあります。経験のある人ほどペーシングは強く意識すべきことかもしれません。

以上、「アクティブリスニング」「オープン・エンド・クエスチョン」「ペーシング」の3つのメソッドは、主に心理カウンセリングで活用されるものですが、インタビューでも参考になるのでぜひ試してみてください。

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