質の高いコンテンツを作るための「7つのS」



「質の高いコンテンツ」とは、ユーザーにとって役に立つ価値の高いコンテンツのことを指します。

コンテンツの付加価値を高め、より多くのユーザーをファンになってもらうために必要な条件はいろいろありますが、ここでは7つの条件を挙げてみました。

「7つのS」として覚えていただければと思います。

Specific(特有)

他に類を見ない独自のマーケティング施策や、ネットメディアの特性を生かし、コンテンツにうまく変換しています。他では真似のできないレベルで、トピックやアイデアに対する分析・解説を行っています。また、多くの情報の蓄積と、新しいオリジナルの洞察によって、ユーザーの理解を促していま。

生命保険業界に一石を投じた

【ライフネットジャーナルオンライン】

ライフネット生命のオウンドメディアですが、商品紹介に特化したサービスサイと分けて、運営しています。

ライフネット生命は、ネット販売に限定することで低価格の保険商品を提供し、生命保険業界に風穴を空けた保険会社です。

また、『ライフネットジャーナルオンライン』で提供されるコンテンツは、ユーザーの利益を最優先したアドボカシーマーケティングに徹しています。

各コンテンツからサービスサイトへの導線はなく、潜在層・顕在層を問わず、お金や結婚、子ども、教育、健康など人生における心配事や知っておくべき大切な情報を提供しています。

切り口もユニークなものが多く、「エリート商社マンから迷わず落語家に転身」や「私はお尻で医療保険の大切さを知りました」といった、エンターテインメント性をかなり意識したコンテンツ作りになっています。

自分たちで作るユーザー参加型メディア【compathy】 

『compathy』は、旅行者が旅の記録を共有する投稿型のサイトですが、これまでの旅行業界には見られなかった工夫がされています。投稿写真の撮影日時や位置情報を記録することで、旅のルートや時間軸までが自動的にまとめることができる機能が装備されています。

ここで投稿されたコンテンツはさらにソーシャルメディアで、世界中の旅行者と共有され、自分だけの旅のプランを作っていけます。

これは、シェアハウスサービスの『AirBnB』に通じる世界観です。宿泊業界や旅行業界には、国際観光ホテル法や旅行法がありますが、これらの法律は消費者の利益を守るためのものです。

しかしITの発展に伴い、これまでは考えられなかったサービスも生まれてきました。そして『AirBnB』やカーシェアリングサービス『Uber』のように、新しいサービスが時代の趨勢に合わせて法律を動かすことも出てきました。

『compathy』の運営会社・ワンダーラストは、「世界中の個人をつなげる」ことをミッションとして謳っています。

旅行前の準備のためより、「旅行中」をコンテンツの軸にしているのも大きな特長です。既成のパッケージ商品だけでは物足りない旅行者に、新しい旅のカタチを提案していると言えるでしょう。

Stimulation(刺激的)

既存の常識を覆し、固定観念を捨て、常識を疑いたくなるような新しい洞察を持っています。インパクトが強く印象的で、説得力を持ち拡散力を秘めています。

ナンセンスなのに説得力がある

【ハトが選んだ生命保険に入る】

前述した『ライフネットジャーナルオンライン』を運営するライフネット生命のネイティブ広告です。真面目で固い生命保険会社のイメージを覆したユニークな内容は、まさに同社のWebマーケティングの方向性が明確に伝わるコンテンツです。

企画・制作は「デイリーポータルZ」のカリスマWebマスター・林雄司氏。

一見ナンセンスな企画とストーリーは「刺激的・挑発的」でありながら、読んでいるうちに、生命保険の仕組みについて理解できる構成になっているところは、学べる点が多くあります。

ただの求人募集を物語にした

【伝説のウェブデザイナー】

Web制作会社LIGの名を一躍有名にした採用コンテンツです。ふつうに採用条件や会社説明をしているだけなのですが、社内のデザイナーたちが社長を砂浜に埋めて「伝説のデザイナーを雇ってほしい」と懇願するストーリーをユーモラスに描いています。

予算もほとんどかけてなさそうなシンプルな構成でありながら、斬新な切り口でLIGのブランドを決定づけた「刺激的・挑発的」なコンテンツです。

Sympathy(共感)

「あるある」とユーザーの共感を促したり、「おや?まあ!へぇ〜」という体験をもたらしています。「今までそんな風に考えたことがなかった」といった反応をユーザーに引き起こします。ユーザーが日頃から抱えている不満・認識・ニーズを言語化・可視化しています。

時代の空気を上手に表現した

【2015年の「上質な暮らし」ってこういうことかも】

「裕福なだけが上質な暮らしではない」という、ミレリアム世代の世相感を上手に伝えています。スポンサーは下着ブランドのワコール。ワコールと言えばおしゃれな女性用下着のイメージが強くありますが、この男性下着では、あえて老舗ブランドのイメージの破壊を狙っている印象さえあります。

「そんなわけないだろ!」というツッコミどころ満載な点も含めて、バイラル要素を秘めたコンテンツです。ツッコミどころがありつつも、否定しきれないミレリアム世代特有の共感ポイントをきちんと押さえています。それがバイラルに成功した要因でしょう。

Selective(差別化)

過去にあまり行われなかった方法が考えられ、オリジナリティの高い考えが盛り込まれています。あるいは過去に見たことがありながらも、異なった視点で再提示しているので新鮮です。

まるで上質な短編映画を見ている気になる
【五ヶ瀬スキー場】


自社の広告動画ですが、今後のWeb広告のあり方を示唆するコンテンツです。インパクトの強さで興味を引き、認知獲得と集客を促すのは広告の手法ですが、これをシリーズでストーリー化することで、ファンの育成を図っています。1本見たら次作も見ずにはいられない作りは、ネイティブ広告を考えている企業の参考になるのではないでしょうか。

何が起こるかわからないから期待感が高まる【AUTOWAY】

『五ヶ瀬スキー場』同様、バイラルを狙ったインパクトの強い広告コンテンツです。ただ『五ヶ瀬スキー場』の連続ドラマのような期待感を抱かせるのではなく、毎回どんな展開になるかまったく予想がつかない点がユニークです。

よくある素人の女の子の自撮り投稿かと思いきや『【放送事故】生配信中に・・・いきなりBAN』

上質な恋愛映画?オチはどこに?

【AUTOWAY第3弾』】

4分40秒の長尺で、どんなストーリーが展開されるのかまったく予想がつきません。

AUTOWAYの広告動画は、見る人の予想をことごとく裏切ることで、一度見たら決して忘れられないインパクトを残します。強烈なインパクトで競合と差別化するブランドイメージをユーザーに植え付けることに成功しています。

Season(旬)

最新の話題を提供。誰もこの旬な情報を伝えていない。あるいは話題にしている人もいるが、その時点であまり多くの情報が出回っていない希少性を保っています。

時代の潮流やトレンドをいち早く汲み取ったコンテツは、それだけで情報の価値を高めます。

「食事は文化である」ことを教えてくれる

【東京カレンダー】


時代のトレンドを読んだコンテンツ作りを得意としています。東京のグルメ情報を軸にしつつも、東京ライフの楽しみ方を最新トレンドやスポットと併せて紹介しています。

ケーキ屋さんの視点でビジネスのトレンドを切りとる

【THE BAKE MAGAZINE】

チーズタルトで有名なスイーツメ―カー・BAKEのオウンドメディアです。主に採用やBtoBを対象としたメディアなので、スイーツを購入したい消費者向けではありません。

さまざまな企業との共創(コ・クリエーション)を意図したメディアならではの旬なトレンド情報が満載です。新しいビジネスを生むことを狙いとしているので、ケーキ屋さんらしからぬ(?)、トピックも多くあります。特にTECHNOLOGYやDESIGNのカテゴリーには、スタートアップ企業にとってビジネスの参考になりそうな貴重な記事が多く掲載されています。

Solution(解決策)

ユーザーを勇気づけ、インスパイア(触発)。ユーザーは、このブランドが自分のニーズを満たすことができると感じます。オウンドメディアを運営するにあたって、企業とユーザーの信頼関係を築くうえでもっとも効果的。

【経営ハッカー】

会計ソフトを扱うfreeeが運営する『経営ハッカー』。経営に関するさまざまな情報を提供していますが、課題解決の提案をありきたりな二次情報の蓄積ではなく、独自の切り口でニュース性・トピック性の高いコンテンツとなっています。

【サイボウズ式】

企業オウンドメディアの成功した先例としてよく紹介されるメディアです。『サイボウズ式』がここまで注目をされたのは、ユーザー視点での課題解決の提示が徹底されていることに尽きます。キャッチフレーズは「『新しい価値を生み出すチーム』のための、コラボレーションとITの情報サイト」と、ちょっとわかりづらいものの、ビジネスパーソンが会社で遭遇するさまざまな課題に対して、お役立ち情報や解決策を提供しています。

Story(ストーリー)

ユーザーを驚きと発見に満ちた冒険に導き、ユーザーにとって価値のある情報を提供しています。ストーリーがわかりやすくユーザーの行動喚起・態度変容へとうまくつないでいます。

【全力コラボニュース】

「どうしてパパはカメムシになったの?」


LINEのチーフプロデューサー・谷口マサト氏が企画・制作をしている『全力コラボニュース』のネイティブ広告です。「笑いはバイラルするがエンゲージメントにはつながりにくい」と言う谷口氏が挑んだのが「泣き」のストーリーです。マンガという形でユーザーの心を動かすコンテツとなっています。保険を扱ったネイティブ広告ですが、谷口氏は「保険に入らなければと思った」という読者の声が一番うれしかったと言います。

人は記号や論理的だけの文章や情報の詳細はすぐに忘れてしまいますが、ストーリーは長く記憶に留めます。そしてストーリーは人の心を動かし、態度変容を促します。

ストーリーを展開するうえで必要なのは、ユーザーが期待し、望むストーリーを描くことです。ユーザーに認知され、商品やサービスを購入してもらうためには、まずユーザーの立場になって「心が動くストーリー」を用意しなければなりません。

コンテンツマーケティングの成功は、ユーザーが描くストーリーに、企業が描くストーリーを重ね合わせられるかどうかにかかってきます。コンテンツで売るのは「商品」ではなく、ユーザーが夢を見られる「価値体験」なのです。

今回は「7つのS」に、それぞれあてはまる代表的なメディアやコンテンツをピックアップしてみました。

最初から「7つのS」をすべて満たしていなくても、ひとつの条件だけでも、質の高いコンテンツを作ることは可能です。なぜならそれぞれの条件は有機的につながっているからです。

Specific(特有)なコンテンツを考えようとすれば、自ずとStimulation(刺激的)であろうとし、Selective(差別化)を考えます。Sympathy(共感)を得ようと思えば、Story(物語)を考えなければなりません。

企画を考えるときや、コンテンツを制作するときには、この「7つのS」をぜひ意識することをオススメします。そういう意識づけを習慣にすることで、質の高いコンテンツを生む土壌が育まれるからです。

ということでライターさん、絶賛募集中です!

ご連絡はこちらへ

narita.yukihisa@gmail.com

イラスト:タナカケンイチ


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コンテンツは埋めるものじゃない。作るものなのだ。

成田幸久/PR誌、商業誌、Webメディアの編集を経て、フリーのコンテンツディレクターとして、コンテンツマーケティング戦略、オウンドメディアの構築を手掛ける。著書に『愛されるWebコンテンツの作り方』がある。

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