どうでしたか?

大学受験の帰り道、電車の中、笑い声を上げる黒い制服を着た高校生たちの中で、一人ぽつんと女の子が、離れて立っている。

駅に着き、前の人が降り、周りの人が座らないのを確認してから、女の子が座る。

寂しそうにうつむいている。

「今日、どうでしたか?」

急に、知らない男の子が、話しかけてくる。黒い制服を着ている。

「ええ……まあ……」

「何か、試験の日って、模試とかもそうなんですけど、今まで当たり前に思えていた街の景色が、何か違って見えませんか? 例えば、そう、こんな電車の中も、何だか空々しいような、寂しいものに、上手く言えないんだけど、どこか悲しい物に、思えませんか?」

「あなたは、あそこにいる皆さんと、一緒に喋らないの?」

女の子は、男の子と同じ制服の、さっきから、笑い声を上げている一団を指した。

「僕は、留年してるから、浮いてるんだ。明るく話してるあの人たちも、きっと、見知らぬ街に入り込んだような、この気分を共有してる。だからこそ、ああやって、はっちゃけて見せて、誤魔化したくなってるんだ」

「そう……この気分は、何なんですかね?」

「人生の分岐点が、線路がガタガタいって、進行方向が、違う方向に変わっていくとこ。今まで見えてなかった、きらきらで隠れてたのが、むきだしでモロに見えてる。人生の、基盤となる、構造の、骨太の鉄骨が、直に見えてる。それは、隣のおばちゃんが、楽しいねなんて、言うと、それだけで、掻き消えちゃうような、そんな靄みたいな、淡い粉雪みたいな、切ないものなんだけど、だけど」

「嫌いじゃない」

二人は笑う。

「そう、それ、てか笑った顔、見れてよかった」

「えっ?」

「ごめんなさい。何か、落ち込んでるように見えたから……」

「……」

「さっきから見てて、気になってたんです。暗い顔してるから、ちょっと心配で……大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ?」

「ほんとに?」

「うん、心配しないで下さい」

男の子は、何か言いたそうにして、それから、黙る。

電車が、駅に着き、男の子は、降りる。降り際に、

「試験も、きっと大丈夫ですよ!」

そう叫んで、笑顔になる。

女の子は、ピースサインを作る。

男の子は、さよならと笑顔で手を振る。

女の子は、その手を自分の顔の口角に当てて、唇の端を持ち上げ、無理やり笑顔を作る。

電車が、走り出す。

男の子が、必死な顔で追いかける。

……

女の子、指を外す。窓の外で必死に走っている男の子に向かい、ぺこりとお辞儀をする。

顔を上げると、笑顔で。

男の子は、ほんとに大丈夫ですからーと、叫び、諦めて、立ち止まる。立ち尽くす。

電車走っていく。


「大丈夫だなんて、安請け合いして……」

女の子笑顔のまま、涙を流す。

「もう、最悪……」

ハンカチで、涙を拭き取ると、イタズラっぽい笑みを浮かべて

「降りれなかったじゃない」

……

十分後。女の子が、その駅に降りる。反対側のホームには男の子が、立っている。立ち尽くしている。

女の子、ため息をつく。

ホームの階段を降り、また登り、男の子の背中に向かう。

「ねぇ、」

「ほっといて下さい。僕は今日、人を助けられなかった。絶望の淵にいた、女の子を救えなかったんだ。」

「勝手に殺さないでよ」

「え?」

「自分が試験出来悪かったからって、人もそうだと思わないように」

「あ、」

「ねっ?」

ポカポカした気分で、男の子は、笑顔になる。恥ずかしそうに女の子が言う。

「ねぇ、名前、なんていうの?」

男の子が答える。

電車が走ってくる。

それから、またお辞儀して、顔を上げて、目を見つめて、ありがとう、そんな言葉を女の子は言っただろうか。どうも、電車の音が大きすぎたようだ。

……

後書き

ジギかーや鳴です。何か、きらきらしたものを混ぜて、少しだけ読みやすくした、プロットみたいな、文になりました。あ、プロットって、カタカナ語だなあ。カタカナ語は、使わないに越したことはないと昨日長々と理由をこじつけて書いたとこだった。粗筋と言えばいいか? ちょっと違う? 俺は明日も試験です。なのに、帰り道こんな文を書いてしまいました。まあ、いっかーと納得する自分がいる。読んで頂きありがとうございました!

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小説

書いた小説! 僕、小説だけは高評価みたい。結構スキを五個以上もらってることに気が付いた……
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