はれの日
扉が開く瞬間、ふと静けさが訪れた。
ふたりの姿が見えると同時に、あたたかくて、凛とした空気に包まれる。わあっと歓声が上がった。お腹と胸が熱くなった。
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初めて結婚式にお呼ばれした。大学で本当にお世話になった先輩の式。奥さまとの面識はなかったけれど、柔らかくしなやかな女性だということが写真からも伝わってくるような、素敵な方だった。
ふたりの門出をお祝いできることが心から楽しみだった。ただ、今思うと当日まであまり現実味を伴っていなかったように思う。
式の時間が近付くにつれて。他の参列者と顔をあわせて。式場に到着して。その度に今日という日の愛おしさや尊さが積み重なっていく。「結婚式はいいものだ」とは聞いていたけれど、こんなに幸せな感情で満ち満ちとするものなのかと驚いた。
幸せとか尊いとか愛おしいとか、こういうときに使うことばなんだなと思った。それでさえ陳腐で、もどかしくて仕方ない。ああ、ことばって、自分って、なんて表現力に乏しいんだろう。
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挙式後のフラワーシャワーが何より印象に残っている。
親族以外の参列者が、この日初めてふたりの姿を目にする場だった。花びらを手に閉じ込め、ぎゅうぎゅうに並んで新郎新婦を待つ。雨上がりの澄んだ青空を見上げながら、ここにいる全員がお祝いの気持ちでいっぱいになっていることを不思議に思った。すごく嬉しかった。
新郎新婦の寄り添うようすを見たら、涙が滲んだ。自分に重ね合わせることがあるわけでもないのに。ただただふたりがつくりあげてきた関係と空気が美しくて、泣いた。
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披露宴の最後、新郎から挨拶があった。新郎である先輩は、療育支援のお仕事をされており、日々困りごとを抱える生徒や親御さんと向き合っている。
好きなことの先に、互いの人生に関わってきた人の存在を思い、感謝するっていいなと思った。相手を尊重する気持ちの先に自然と感謝が生まれることばだった。
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人とご縁を大切にすることと、家族になるということの意味がわかるような時間をつくってくれたおふたりに、愛を込めて。
ご結婚、おめでとうございます。
20231018 Written by NARUKURU
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