着彩

【3分で読めるダークファンタジー】正義ノ仮面

画像1

★この小説は
#3分で読めるダークファンタジー  「六花抄 -Tales like a ash snow - 」
銀髪の剣士の姉と魔道士の妹が残酷な世界を旅する、ほろ苦い物語。

過去作品はこちら(オムニバスなのでどこからでも読めます)
https://note.mu/narumasaki/m/m38dd8451bb44

■■■
銀髪の姉妹たちは、当てもない旅を続けていた。
とある村の入り口に着くや、女性の叫び声が聞こえる。
「きゃあ! ひったくりよ!」
白銀の少女たちは目を合わせ、頷く。
「放っておけないか」
「うん、行こう。お姉ちゃん」

■■■
「そのバッグを寄越せぇ!」
黒衣の外套を羽織った男は、貴婦人から鞄を盗ろうとしていた。
「レイヴン、また貴方なの! その手を放しなさい!」
レイヴン。それがこの全身黒づくめの男の名前らしい。
「フン、そんな金持ちそうな見た目をしているから、狙われるのさぁ!」

「そこまでだ」
上の方から、凛々しい声が聞こえる。
見上げると、そこには覆面の男が佇んでいた。

■■■
「ジャスティス仮面様よ!」
すっぽりを顔を覆う、白色のマスク。表情はこちらからは伺うことはできない。
上下スーツ姿に、純白のマントをたなびかせている。

高台からマントを翻し飛び立つ、覆面の男。
「そこまでだ。悪は私が成敗する」

「なんだ……あの覆面は」
「なんか……独特……だね」

■■■
「出たな、ジャスティス仮面め。今日こそ、決着をつけてやる」
「やってみろ」
激しい殴り合いの攻防を繰り広げる二人。
村の住人たちもただ、固唾を吞んで見守るしかなかった。

そして、覆面の男が懐に重い一撃を入れる
「入った!」
「ガハッ……クッ、覚えてろよ」
黒衣の男は煙玉を地面に叩きつけ、姿をくらますのであった。

■■■
「ジャスティス仮面のお陰で、今日も村は平和だ!」
「きゃー!今日もかっこよかった!」
「ぼくもおおきくなったら、ジャスティス仮面になるんだ!」
白衣のヒーローは歓声に包まれる。

「ありがとう。これは悪者を退治してくれたお礼じゃ」
「そんな、私は困っている人を助けたいだけなんだ」
「そう言わずに、この村が守られているのは、お主のお陰なんじゃ。持っていってくだされ」
村長は覆面の男に、ずっしりと銀貨が詰まった麻袋を手渡した。

■■■
「それにしても、すごい人気だな、この村なら私達の出番はなさそうだ」
「そうだね。なんだかかっこいいヒーローもいたし」
「カッコイイ…….? まぁいい、少し休んで先を急ごう」
小休止後に、村から旅立つ二人。

森の小道を進んでいくと、脇道から小屋に入っていく男の影が見える。
「おや、あの白い覆面は、さっきの?」
すると、黒衣の男もよたよたとしながら、同じ小屋に入っていくのが見えた。
なんだろう、そう言って少女たちは小屋に向かうことにした。

■■■
「これが今日の取り分だ」
ずしりと銀貨の詰まった麻袋が卓上に置かれる。

「ヒャハハ、それにしても楽勝だな、あの村は」
「ああ、頭の悪い連中ばかりだよ」
「それにしても傑作だな、ジャスティス仮面なんてわかりやすい名前は」
「大衆はわかりやすいくらいがちょうどいいんだよ」
「仮面に、白いマント…..それに悪役は黒づくめってな、ハハっ。計算済みってか。お前の方が悪役が似合うんじゃないか?」
「よしてくれ。俺はそういうのは嫌なんだよ、それに、”悪役”のお前に多く取り分を与えているだろう?」
「それもそうだな、ジャスティス様よぉ」

■■■
扉を蹴破り、中に押しかける。
「村の人々を騙していたのか」
「騙す? 勝手にアイツらが大層な名前までつけてくれたからなぁ」
「許さないんだから…」
くせ毛の銀髪の少女は、魔力を杖に込め、重たい氷の一撃を放つ。
「ちゃんと罪は償わなきゃ」

■■■
村人に事情を説明する姉妹たち。
「そんな、まさか」
「ずっと信じていたのに」
「でも、思い当たる節がある。いつもタイミングよく登場するし」
「必ず、レイヴンは最後は逃げ出すんだ」
「俺たちを騙していたなんて、許さない」
白と黒の二人組は村人たちの逆鱗にふれた。

二人は村の広場で磔にされる。
「やめろ、命だけは……国に妻と病気の娘が……」
「ちょっとした出来心で、な?な?頼むから」
数刻後、男たちからは何も発せられなくなれ、鴉たちが群がり始めたという。

■■■
「ママー、今月のパパからのお手紙、まだかなぁ?」
「まだ来ていない見たいね。でももうすぐ来るんじゃないかしら」
「ふふっ。たのしみだなぁ。パパはどこで、どんな”せいぎのみかた”をしてるのかな」
少女は窓の外の郵便受けを眺め続けていた。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました! サポート頂いた分は、新しい記事を作成時の参考書籍や、 勉強代に充てさせてもらう予定です。