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「何を楽しいと思うかが人間の質」 子育て&畑を通じて農家安部真吾が見つけた生きる上で大切なこと

茨城県牛久市。県道を一本中入ると突然街らしい建物はなくなり、農村の風景が始まる。そのまましばらく進むと樹木の塀に囲われた、綺麗な竹林畑が現れる。

(素敵空間、、、!)

今回取材をした安部真吾さんはこの竹林で筍の生産している「農家」だ。この他にも小麦、落花生、ブロッコリーの生産を行なっている。就農したのは2005年。「新規就農」という言葉が使われる以前に、血縁のない土地で就農したいわば、パイオニア的存在。
農家であると同時に7歳の長女、そして4歳の長男の二児の父でもある。
竹林畑を縦横無人に走り回る二人を見守り、育てながら畑仕事をする日々。そんな安部さんの人生観、子育て観は、東京で仕事やタスクに追われている生活をしている人が聞くと、ハッとする、ただ、とても生きる上で大事なことを内包しているのでぜひ紹介させてください。

原点となった、「ムリを通す技術」への違和感


安部さんは筍と小麦という、独特な農産物を生産されていますね。どのような経緯でこの作物を選んだのでしょうか。

安部:竹林は農地を継承させてもらった師匠がもともとやっていたので引き継ぎました。小麦は必要だと思ったから新たに始めました。

必要だと思った、、?

安部:最初は周りの農家にならってダイコンを作りはじめました。が、やっている中で、その努力の多くが、どうやって連作障害を回避するか(同じ土地に同じ作物を繰り返し作ることで収量が減る現象)に関するものであることに違和感を感じるようになりました。次第に、延命処置的な考え方ではなく根本的に問題が起こらないようにしたい、と思うようになりました。大学時代に緑肥の研究をしていたので、麦・イネが土を整えるためにいいということは知っていました。小麦を作ってシステムの最適化、まずは土を維持することを目指そうと。
ただ、小麦を選ぶ人は周り全然いなかったので、「うまくいかないよ」とたくさん反対されましたね。苦笑

それでも踏み切られたのはすごいですね!

安部:一度決めたらこう、という頑固さはあると思います。加えて歴史を遡ると、野菜の産地化が進む以前は小麦を間に作っていたんですね。因果関係は明確ではないですがその頃の方が肥料が地下水に流出する問題も少なかったりもしました。歴史が背中を押してくれたのもあります。

いいものを作るために、ムリを通すのではなく、まずはいい状態を維持するシステムを作る、と考えられたのですね。
それで成果はでたのでしょうか。

安部:すぐにはうまくいかず、経営は厳しかったです。ただ7年耐えて、ここ3年はやっと納得のできるものが作れるようになりました。
おかげさまで今はドン・ブラボーやパーレンテッシといった有名パン屋やピザ屋さんで採用いただいています。

パーレンテッシって、、!ミシュランガイドに載っている人気店じゃないですか!すごい!

ただ人生を楽しんでほしい。そのために親のできる2つのこと

就農してからこの10年の間に二人の子どもも授かっていますね。安部さんは子育てにも積極的ですよね。

安部:子どもが可愛すぎるのもありますし、母親は四六時中、訳のわからない相手と一緒にいることになるのでどうしてもイライラしがちになってしまう。だから全部妻任せでは誰にとっても良くないなと思ったんです。家がちゃんと回っていくように家庭のマネジメントを父親として責任を持ってやっています

父親が家事の一部を手伝うと「イクメン」なんて言われたりしますが、安部さんの場合は今風のイクメンというより、母親も父親もそれぞれの子育ての役割をやっている感じですね。

安部:子育てをするにあたって、子どもにどうなってほしいか、真剣に考えたんです。それで至った結論が「人生を楽しんでほしい。」ということでした。

人生を楽しんでほしい!

安部:はい。シンプルに。そのゴールが決まったら親のやるべきことは「健康」と「最低限の材料の提供」。この2つしかないなと思ったんです。

「健康」は何となくわかるのですが、「最低限の材料の提供」とは何でしょうか?

安部:あえて、言うと、すぐ教えない、教えることに慣れさせないことですね。

!?

楽しいことは誰かが与えてくれるものではなく、自分で取りに行くものである

安部:実は長女は言葉を覚えるのが遅く、2歳くらいまでほとんど喋れなかったんです。

えー!あのおしゃべりなマナカちゃんがですか!?

安部:そう。だからと言って言葉を教えることはしなかった。まだ誤差の範囲で、喋りたくなったら言葉も覚えるだろうと。そしたらしゃべり始めたらいきなり2語文だったんです。つまり、覚えた単語を発するのではなく、意思を伝えるために言葉を使い始めたんだと思っています。

喋りたいから喋ったんですね。

安部:変に先取りしてものごとを教えなくても、子どもって楽しいと思うところまでいくらでも追求するじゃないですか。だから、伝えたい!と思えば言葉だってすぐに覚えるだろうと。ちなみにうちにはテレビがありません。テレビを見ると面白いものがとりにいかなくても無限に与えられてしまう。うちでは与えてもらえないので外にいって自ら楽しいものを探すんです。

さらに突っ込むのですが、何で与えないようにして自ら楽しいものを探すようにしているのでしょうか。

安部:何を楽しいと思うかが人間の質だと思っているからです。人から与えられるものでしか楽しめないと、人生を楽しみきれないと思うんです。だから、楽しいものを自分で見つけ、自ら取りに行く習慣を子どもたちには教えたいです。

テレビやユーチューブは子育てのマストアイテムだと思ってました、、。

安部:この子たちがすごいなと思うのはすでに人生のモチベーションができあがっているんです。長女のまなかは、私がうるさく食べていいもの、いけないのものを言うので「どうしてこの世の中には食べてはいけないものがこんなにも多いの?」ということに疑問を持ち、「自分が本当に身体に良い食を広めるんだ」というモチベーションがあります

立派すぎる!!!

その先の誰かに貢献するために耕す

安部:俺は農作物を育てるのと子育ては一緒だなと思っているんです。

詳しく教えてください。

安部:先ほど小麦を作る話をしましたが、それはこの先、孫の代までこの畑がいい状態であって欲しいと思うからです。土がちゃんとしていれば、自然といい作物は育っていきます。すぐ結果が出るからと言って、農薬や肥料などを手前で与えすぎることはしません
子どもも同じ。ベースの体の健康はちゃんと担保しつつ、本人が人生のモチベーションを自分で見つけられる材料の用意するだけ親はする。そしたら子どもは勝手に育っていくんです。

いずれも土台づくり、耕すことが大事ということですね。

安部:そうですね。自分はまずは家族のために、今できることをしています。それが結果として農産物なら誰かの健康を作るし、子どもたちならその先の誰かのためにできることをしていきます。そうやって耕したことが目に見えない効果を生んでいく。地味ですが土台を耕すことで生む広がりは無限大です。

この度は素晴らしいお話ありがとうございました!


*告知*

そんな素敵な安部さんの筍が4月上旬~5月頭頃取れます!

なんとこの素敵空間の竹林畑「女化たけのこ園」にて直買で筍の販売をしています!安部さんがその場で堀ってくれます。全国発送もしているので気になったからは直接お問い合わせください!

詳しくはこちらからご連絡ください^^

(最後に告知か、と思われたかもですが、別に報酬とかはいただいてなくて私が載せたいから載せました!そのくらい最高です!)

筍掘り体験は通常受け付けておりませんが私の方で何人か仲間と遊びに行こうと思っているので一緒に筍掘りしたい方はそれはそれでお声がけください!^^ 筆者のツイッター:https://twitter.com/narumi_bee

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