虫で治療

九州大理学研究院の広津崇亮、伊万里協立病院園田外科部長らは、線虫の1種「C.エレガンス」を使い寒天培養地でテストをして、ガン患者の尿に線虫が誘導される反面、健常者の尿には近づかないことを発見。ここから、線虫を使って判定を行う方法を模索した結果、1滴の尿でガンの検査ができるようになった。確率は218名の試験者から95%を当てた。

このニュースを見て思ったのは、「それなら線虫にガン細胞を食べさせることができるのか?」ということだ。ある種の虫は特定の細胞を食べる。そこで調べて見ると、実際にウジ虫治療が行われていた。

平成16年3月27日 岡山大学医学部心臓血管外科にてマゴット治療の本邦第一例目を行っている。マゴット(ウジ虫)治療を治験中だが、いずれも良好な結果を得ているという。マゴット治療は、特殊な器具を必要とする特別な治療法ではない。足の切断という場面に立たされて、なんとか足を残そうという熱意が医者と患者に必要で、これには形成外科、整形外科、麻酔科(paincontrol)の先生方との協力がなければ実現しない。

マゴットセラピーの特徴として

1)生物学的デブリが出来る。

2)治療侵襲が少ない。

3)麻酔を必要としない。(兵士の話ではウジが傷口を這う時の苦痛は耐えがたいとのことだったが?)

4)従来の治療 ( 抗生物質、外科治療)に比較し、安価である。

5)西洋で糖尿病潰瘍治療に対する長い歴史と十分なエビデンスがある。

反対にマゴットセラピーの 副作用、危険性として

1)周囲の皮膚痛、刺激。

2)腸管や血管へのマゴットセラピー腸管、血管壁が壊死に陥っているとき、この部分を食べて、腸管瘻孔、出血をきたす可能性がある。

3)新たな感染症の惹起

1、一部の細菌( Pseudomonas,Proteus など)に対しては効果のないことがあり、この細菌が選択的に残り、結果として増殖する。

2、マゴットの持つ細菌が感染を起こす

どれも万能ではありえない。ちなみに、ウジの英語はMaggotsで、「蛆虫野郎(Maggots)」は、軍の中での蔑称だそうだ。

第一次世界大戦中、傷口にウジが発生した兵士の生存率が突出して高い事には注目が集まったことが発想の元と言う。ウジは、正常な組織や生きている組織を食べることはない上に、殺菌効果のある分泌液を出しながら腐敗した細胞や壊死細胞のみを食べるので、感染症の予防効果がある。また、分泌液は肉芽細胞や毛細血管の再生を促進させる働きもある。

自然界はまことに不思議で奥が深いと感じる。線虫がガン細胞を食べてくれるなら、肌のシミや瘤なども、ある種の微生物に「食べさせて治す」可能性がありそうだ。そういえば、あるグルメ(故人)の人が「ステーキが一番旨いのは、少し傷んできたあたりだ」とよく言っていた。腐敗と醗酵は違うとしても、もしかしたら、我々が発酵食品を好むのと、腐肉を好む動物と似たような、天の配剤があるのかも?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?