成瀬

ライター/編集者です。しゃべることが苦手なので始めました。 mail: narus…

成瀬

ライター/編集者です。しゃべることが苦手なので始めました。 mail: naruse.er@gmail.com

最近の記事

「死にたい」というオオカミ少年

深夜2時の着信。 まだ起きてたからすぐに気づいたけれども、時間も時間だし、寝ていることにして無視しようかとも一瞬思った。 着信の相手は、数年来の友人。いつも一方的に電話してきては、好き勝手にしゃべって、向こうが満足するまで切らせてくれない。 そんな自分勝手な友人に対して「人類が滅亡しても、この人だけは生き残りそう」と思っていた。実際、本人にもそう言ったことがあるような気もする。今まで出会った誰よりも口が達者で、自分のペースに人を巻き込むのがうまく、したたかでメンタルも強

    • SUUMOタウンで祐天寺について書かせていただきました! https://suumo.jp/town/entry/yutenji_naruse/

      • 日にち薬の副作用

        J-POPあたりの歌詞では、「色を失った」「モノクロの世界」みたいな表現をしているけれども、どちらかと言えば、コンタクトを取ったときの感覚に近いと思った。 視界がぼんやりして、よく見えない。 好きな人と別れることが決まった。 もうずっとずっと昔のことだが、そんなふうに思ったことを覚えている。 最初の数日はどことなくハイな状態が続き、ほとんど寝ていなかった。つらくて寝られないというよりも、旅行中になかなか寝つけないような感覚だった。身体は疲れているのに、興奮して寝られ

        • 胸の穴に注ぐビール

          23時の上野駅。京浜東北線の電車が来るまで、あと15分ある。 社会人1年目のころは、毎日決まってこの時間に電車を待っていた。 ホームのベンチに座ると、今日一日のことが頭の中で勝手に再生される。 「もっと粘って契約をとるように」とまた怒られたこと。 なんとか目標の数字を達成したけれども、「明日も数字を上げなかったら、今日の結果もチャラになるからね」とクギを刺されたこと。 どんなに無理して数字を上げても、永遠に無理し続けなければいけないのだとめまいがしたこと。 しんどい出来

        「死にたい」というオオカミ少年

          信じられる自分

          堂々と踊れ。 昔、バトンをやっていたときに繰り返し言われ続けてきたが、この「堂々と」というのがどうしてもだめだった。自信がなくて、堂々と踊ることなんて到底できなかった。 自信をもつこと。言葉にするのは簡単だが、あまりにも抽象的でどうしたら自信をもって堂々とできるのか全くわからなかった。 先輩や顧問の先生からは何度も叱られた。叱られた分だけ、また萎縮して自信をなくし、堂々と踊ることから遠ざかっていった。 県大会前の夏の練習。大事な舞台を前に、私はまた何百回目かの指摘を受

          信じられる自分

          名前

          「成瀬瑛理子」。この自分の名前に対してものすごくコンプレックスを抱いていた。 * 幼稚園のころ、父親に「実は名前をつけるときにルナちゃんとも迷ったんだよ。成瀬ルナちゃん。下から読んでも『ナルセルナ』になるから」と言われたことがある。 子どもの私でも、それが全くの冗談であることは理解していた。だけど、それでもルナちゃんにしてくれたらよかったのに、と思った。ルナちゃんみたいなかわいい名前がよかった。 上から読んでも下から読んでも同じ名前なんて、友達には確実にからかわれるだ

          「kentaro03xxxx」

          あれは飲み会の前だったか、それともちょっと買いたいものがあって出かけたのか。仕事がとにかく忙しく、休日の、やっと空いた時間に渋谷の街をフラフラと歩いていたときのことだった。 「夜の仕事とかって興味ないですか」とキャッチの人に話しかけられた。 109の近くにあるみずほ銀行の前はいつもキャッチやナンパしている人がいて、声をかけられるなんてよくあることだ。いつもは目を合わせずに黙って横を通り過ぎ、その先の信号待ちで足止めされたならばケータイを見たりしながら聞こえないふりをしてや

          「kentaro03xxxx」

          誰かを好きになることをばかにしていた罰

          高校生のころ、勉強が苦手な私はテストの度に再試を受けていた。同じように再試になる不真面目な層はだいたい決まっていて、再試を受ける教室にいるのは見慣れた顔ばかり。 それなのに、あるとき、再試とは無縁で頭の良いはずの友達が教室にいたから驚いた。 どうしたのかと思ったら、「好きな人ができて、テスト前に集中できなかった」と困ったように笑っていた。その場では「え〜、私なんていつでも集中できないのに(笑)」と冗談で返しながらも、「この子はばかなのかな?」と思ってしまった。どう考えても毎

          誰かを好きになることをばかにしていた罰

          子どもを手放す母性

          友達が妊娠した。 ただ、出産後はすぐに養子に出すことに決めたという。産まれたら名前もつけず、うちに連れて帰ることもなく、そのままNPOを通じて別の家庭に引き取ってもらうそうだ。 事情があって育てられないが、中絶するのではなく養子という選択肢を選んだ。 彼女は私が知っている人のなかでもとびきりの美人だが、中身はだらしなくて、適当で、寝坊してバイトに遅れてもあっけらかんとしているようなタイプだった。 そんな彼女が妊娠し、養子にする決意をした。 出産しても、環境や金銭的に

          子どもを手放す母性

          友達が転勤になったのでまつエクをつけた

          この春、友達が関西に転勤することになった。 毎週のように一緒に飲んでいたのに、それがもうすぐいなくなると聞かされたとき、私は本人を前にひたすら泣いてしまった。 ボロボロに泣く私に気を使いながら「関西にも遊びにきてね」なんて言われても、どう返したらいいのかわからず、ただただ泣いていた。 ここで私が「うん、遊びにいくね」と答えるのは簡単だと思う。だけど、お互いのタイミングだってあるし、実際は本当に行けるかどうかなんてわからない。これから気軽に会えなくなるのに、ウソになるかも

          友達が転勤になったのでまつエクをつけた

          騒ぐよりも、成人式は淡い思い出ひとつあるくらいでいい

          例年、荒れた成人式のニュースが大きく取り上げられている。私の地元である横浜市はそういった印象がなかったが、それでも壇上に上がろうとする人がいたり、式の間にどなり声が飛び交っていたりしたようだ。 こういう場面で騒ぐタイプの友達がいないのもあって、私は成人式で暴れたくなる気持ちはあまりよくわからない。ちょっとハメを外したくなってしまうものなのかもしれない。ただ、彼らがもっと大人になって成人式を振りかえったときに、それはどんな思い出になっているのだろうかと考えててしまう。

          騒ぐよりも、成人式は淡い思い出ひとつあるくらいでいい