「エポスカードを作ると会計から3000円引きさせていただきます」という説明をレジで聞いていると、真後ろの方から「大当たりです！」の声とベルを鳴らす音が聞こえた

エポスカードの説明を最後まで聞いている奴になりたかったため、振り向きたいのを我慢しながら真面目な顔を作っていた

なるべく店員の目を見て真面目そうに見える顔で

エポスカードの説明が終わって振り向いた時にはもう大当たりした人はそこにはいなくて、ダルマがパンパンに詰まった2〜3メートルはある巨大な籠(竹で編んだやつ)だけがあった

それが何なのかを判明させたくて近づくと、籠の土台部分にガシャポンのレバーとカプセル出口のようなものが付いていた

それの周りにはそれを説明するものは一切無く、どうすればこの巨大な装置に関われるかがわからなかった

人目につく場所で大当たりをしてしまうという羞恥と引き換えてでもこの装置の一部になりたかったが、店員もいないので諦めてエポスカードを作りにいく

エスカレーターでエポスカード専用の案内人に連れられてカード発行場まで登っていく

あれは何だったんだろう

カプセル出口のような場所からダルマが出てくるのか

大当たりというのは金色のダルマなのだろうか

なぜマルイの1階正面入り口の1番目立つ場所にあの変な装置があったのか

もう6階のカード発行場まで来てしまったが、ダルマの装置で頭がいっぱいだった

俺はそのままエポス特典で浮いた3000円分の買い物をし、ダルマの装置を見ないようにして正面出入り口から退店した

未練を残したまま去った方が何となくいい気がしたからとしか言いようがないが、そうしたかったのである

一度自分の中で「ダルマが排出される巨大装置」「金色のダルマが大当たり」と思い込んでしまった期待を裏切られたくなかったのかもしれない

別にそうじゃなかったのかもしれない

近くのラーメン屋に入って豚骨醤油ラーメンを食べている頃にはもうダルマのことはもう何とも思えなかった

年末セールの催し物として設置されたものかもしれない

次にあのマルイに行った時にはもう無くなっていますように

次にあのマルイに行った時にはもうダルマのことは思い出しませんように

Suicaアプリが入ったスマホを改札機にかざして新宿3丁目をあとにした