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【ショートショート】『イートイン!朝!』

木を隠すなら、森に
身を隠すなら、人混みに

裏社会で、所謂、ヒットマンとして生きる俺は、昨晩、社会に蔓延る外道を一匹始末した。
奴の組織の連中は、今、血眼になって俺を探しているはずだ。
俺の雇い主は「私の別荘に身を隠せ」としきりに言ってきたが、俺は、そんな素人考えを一蹴した。
「木を隠すなら、森に。身を隠すなら、人混みに」
俺の、その言葉を聞いた雇い主は、
「...気を付けろよ」
と納得のいかない様子で俺の背中に声をかけた。

そして、俺は今、いつも通りに一般人に成りきり、コンビニのイートインで珈琲を啜っている。
大袈裟では無く、俺はこの時間を愛している。
どぎつい仕事終えて、高額な報酬を得ても、コンビニで、たった100円のドリップ珈琲を味わう..
これを止めて、一般人の感覚を無くしたら、俺は一般社会から浮いてしまい、すぐ敵の餌食になってしまうはずだ。

そんな俺の目の前、コンビニのロゴの入ったガラスの向こうを、会社に向かうサラリーマン達が忙しなく行き交っていく。
彼らの目に俺はどう写っているだろうか?
裏社会に生きる殺し屋?
いや、それはあり得ない。
今の俺は、殺気を消し去り、しがない小市民として、完璧に街の風景に溶け込んでいるのだ。
あまりの自然さに組織の連中が目の前を通っても、俺を見つける事は出来ないはず..え?
目の前のチンピラの様な男が、立ち止まって、驚いた顔で俺を見ている...
見つかった?まさか。
そんなはずは無いだろう。この完璧な擬態で、今まで何事も無くやり過ごしてきたのだ。
あんなチンピラに見つかるはずがない。
だが、念のために俺は俯いて顔を隠した。


暫くの間、俯いていた俺は、少し顔を上げ、上目遣いで前の様子を確認した。
さっきのチンピラ風の男はいなくなっていた。
やはり、この俺が、あんな小物に見つかるはず無いのだ。

俺はレジに行き、5杯目の珈琲の金を払った。
対応した店員は、何か言いたげに俺にカップを渡した。

そして、そのカップに珈琲を注ぎ、座っていた椅子に戻ると、さっきのチンピラ男が、又、目の前のガラス越しに立っていた!

こ、こいつ、何者だ..組織の飼い犬か!

男は、驚いた顔のまま俺を見ながら、手に何か握り、入り口から中に入ってきた。
そして、緊張した様子で俺の横まで近づいてきて、俺の目の前に黒く細長いブツを差し出して言った!



「あ、あ、あ、あの、ダ、ダンディ古賀さんですよね?!あの、Tシャツにサインしてもらえませんか!お、俺、大ファンなんすよ!ダンディさんが出てるVシネ、全部見てます!スゲー!やべぇ!あっ!これ、新作の脚本すか!?スゲー!えっ、【キラーリーマン錦太郎】の新作じゃないすか!マジすか!えー!あ!もしかして、今、役づくりの最中だったんすか!あのトコトン役に入り込んで、現実と役の区別が付かなくなっちゃうっていう伝説の、いわゆる『ダンディ・アプローチ』の最中だったんすか?!スゲー!マジかよ!!すいません!一緒に写真撮ってもいいすか!いやー、超スゲーよ!こんな所でダンディさんと逢えるなんて、やべえ、なんか、感動して涙出てきた」

【劇終】

監督.脚本/ミックジャギー/出演、ダンディ古賀役.佐村河内せめる、チンピラ風の男役.清田明益


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ミックジャギー

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