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【リアル】バスケットボールに救われた男たちの内面に深く踏み込んだ名作

スラムダンクを読んでから、もっと続きが読みたいのに…!というジレンマに陥っていたので、井上雄彦先生がスラムダンクの後に連載していた「リアル」という漫画を読んでみました。

ここからはがっつりネタバレがあるので、未読の方はご注意ください!

スラムダンクでは高校バスケにスポットを当てていましたが、「リアル」は車椅子バスケが題材です。

全体的にシリアスな内容で、スラムダンクが少年ジャンプ!って感じだったのと比べると「リアル」はヤングジャンプ!って感じ。登場人物の年齢層もやや高めでした。

スラムダンクも喧嘩はしてたけど、わりと明るめというかさっぱりしてるキャラが多かったので、「リアル」のいじめのシーンは陰湿でつらかったです。

とくに特定の人物にだけパスを回さないという嫌がらせがひどい。スラムダンクでも殴り合いはしてたけど、バスケをしている時はスポーツマンシップがありました。ゴリも「俺たちは別に仲良しじゃない!」って言ってたけど、みんなバスケはちゃんとやってた。本気でバスケがしたい人ばかりではない部活ではこんな感じになっちゃうのか…と読んでいて悲しくなりました。そんなところもリアル。

そして1番のいじめっ子が交通事故で下半身麻痺になってしまうというなんとも言えない展開。しかも交通事故の原因も自業自得すぎて共感できる余地がないのが容赦ないなと思いました。

元気な時はたくさんの取り巻きがいたのに、事故に遭ってからは誰もお見舞いに来てくれないのもつらいです。やっと来たお見舞いは告白の取り下げという...。あの子は自分の告白が今も有効だったらやばいと思ってわざわざ来たんだろうなと思うと、ちょっと気持ちがわかる分、きつかったです。

高橋のお母さんが「うちの子が何をしたって言うんですか...!」っていうテンションなのもグロテスクです。家の中では優等生な息子が、学校で何をしていたかなんて全く知らないんだと思いました。いじめっ子というのは大抵そういうものなのかもしれないけど。

「リアル」では、ドロドロした人間関係も描いているし、人生のどん底も表現しています。野宮がいた西校のバスケ部だけじゃなくて、清春が所属する車椅子バスケチームでも、気に入らない奴は除け者にしようという空気がありました。

強くなるぞ!勝つぞ!という気持ちで繋がれるのがスポーツ漫画だけど、現実ではそこまで勝ちにこだわっていない人もいるというのが言葉通りリアルでした。そこそこ楽しみたい人からすると、キツい練習で追い込んでパフォーマンスを上げようとする人は疎ましいのかもしれません。

また、「リアル」を読んでローテーションという手術方法を初めて知りました。切断した膝関節の代わりに足首の関節を使う手術方法だそうで、そんなことができるのか...と医療技術の高度さに驚きます。

スラムダンクや「リアル」が連載されていた時は、まだ日本にはプロのバスケットリーグがなくて(「リアル」には一応プロバスケチームが登場しますが)、高校や大学でどんなにバスケがうまくてもその先がないという描写が挟まれていました。それをいろんな人が頑張ってBリーグができて、夏にはバスケットボールの世界大会が沖縄で行われるんだと思うと感慨深いですね。

また、日本は部活を辞めるとバスケができる場所がなくなるというセリフにも、確かにそうかもと思いました。団体競技のスポーツはそこそこ人数を集めないとできないから、そういう点ではハードルが高い趣味ですよね。

そして車椅子バスケが題材の作品で、主人公の野宮を車椅子バスケ選手ではなく、「自分のせいで誰かを一生車椅子が必要な人生にしてしまった存在」という立ち位置にしているのにも意図を感じます。

そんな野宮が気負いなくタイガースに馴染んでるのもいいですよね。障害がある人を特別な目で見る人たちがたくさん登場する中で、野宮だけはフラットにタイガースの人たちを見ています。自分も気を使わない分、相手にも気を使わせないタイプって居心地がいいだろうなと思いました。

白鳥のプロレスシーンでは号泣です。プロレスには全然詳しくないし、なんなら痛そうで苦手だったけど、泣きに泣きました。そして花咲くんはアニヲタじゃなくてプロレスヲタだったんだね。

しかし!この「リアル」も気になるところで連載が止まっています!!!15巻が出たのが2020年で、もう3年経っているんですが...。16巻は...?

いやでも時期的にTHE FIRST SLAM DUNKを作っていたあたりなので、もしかしたらそれが理由かもしれない...。だったら文句は言えないな。

スラムダンクの感想文もよかったら覗いていってください~。


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