ゲームキャスターの岸大河が本気で語るesports業界の課題

大病から復帰し、ますます精力的に仕事をこなすゲームキャスターの岸大河。

岸はこれまでさまざまなゲーム関係会社から依頼を受けて大会や番組の現場に立ち続けてきた。特定の組織には属さず、いつも中立的な立場で最前線を見つめてきた数少ない人物だ。

その仕事柄、みずからの意見を公にする機会は多くなく、また自由に発言しづらい立場にいる。だからこそ、いままで携わってきたesports業界をどう見ているのか、どう考えているのか、知りたいと思った。

今回、岸が日本のesportsの現状について本音で語ってくれたインタビューを皆さんにおすそ分けする。とりわけ業界関係者は背筋がぞっとするかもしれないが、岸が見据える景色を共有してみてもらいたい。いかに本気でesportsの発展を考えているのか、少しでも知ってもらえれば幸いだ。

なお、取材場所は岸がキャリアを本格的にスタートさせたと言っても過言ではない仕事となった『World of Tanks』を提供しているWargaming Japanの会議室をお借りした。改めてお礼を申し上げる。あの頃に見せてくれていた岸の変顔があまり見られなくなり、寂しい思いをしている人も少なくないかもしれない。

※取材日は10月12日。「大病から復帰した岸大河、ゲームキャスターという仕事に何を思う?」に続けて収録。

オリンピックにesportsが採用される意味って?

――東京ゲームショウ2017でesportsが大々的に取り上げられて、岸くんはTGSフォーラム 2017の基調講演で話すことになったでしょ。残念ながら入院時期と重なって実現されなかったけど、どんなことを話そうと思ってた?

岸:
実は内容を考える前に入院しちゃって、話すことはまだ決めてなかった。

――基調講演の記事は読んだ? 人選がよかったよね。CESAの会長、調査会社のNEWZOO、ゲーム会社のBlizzard、ベンチャーキャピタルのSignia Ventures、それと唯一国内からオーガナイザーのCyberZ。こういう場に呼ばれがちないつもの人たちじゃなくてすごく新鮮だったし、バランスも取れてた。

岸:
そうそう。代弁してくれてるようで、共感することが多かった。

――印象的だったのは、まあ以前から言われてはいたけど、日本国内でにわかに盛り上がってる「オリンピック×esports」に釘を刺すというか、ゲーマーは別にオリンピックを求めてないって明言されてたことかな。

岸:
僕もそう思う。ゲーマーからしたらオリンピックで採用されようがされまいが関係なくゲームするし。

だいたい、まずどのタイトルにするのかで揉める。仮にオリンピックの種目になったとして、小さい子が試合を見て「将来やりたい」と思っても、大きくなったときにそのタイトルがまだ流行ってるかは分からない。たしかに注目されるかもしれないけど、国内の場合は課題が多すぎますね。

――息巻いてる人は多いけどね。RIZeSTの古澤さんもオリンピックにすごく期待してた。

岸:
もちろんそこに進んでいくのは悪くないですけど、esportsを知らない層に間違った認識はされたくない。いまって「esportsをオリンピックの種目にしたい」という言葉しか出てきてない状態で、具体的に中身がどうなっていくのか分からないですよね。誰が音頭を取るのか、どんなシステムで選手を育てるのか、そういったことが全然出てこない。

それに「なぜオリンピックの種目にしたいのか」って話もほとんどないでしょ。この状態で進んでいくなら、東京オリンピックのときに何かしらesportsが絡んだとしても、次に続くような流れにできない可能性もありえます。

――古澤さんはそこをちゃんと話してくれたけど、それ以外ではほとんど誰も言及してないよね。まさに言うとおり、オリンピックとesportsという言葉だけが踊ってる。

岸:
若年層がオリンピックから関心を失ってる、だから若者に人気のあるesportsを採用してオリンピックに興味を持ってもらう、という流れなら分からなくはないですよ。でも、自分たちのやってるesports的なもののことしか考えてない人もいるんじゃないかと感じる。

ただ、数十年後にはesportsがオリンピックで当たり前に行なわれるようにはなるかもしれない。もしくは、フィジカルのオリンピックとは別でデジタルオリンピックが開催される可能性もある。

――2020年のときにオリンピック×esports的なことが実現したとして、もしオリンピック以外のesportsシーンが現状のままだったら、オリンピックで得た一般層の関心とか認知って一瞬で消えてなくなる気がする。だったら地道にゲームプレイヤー、ゲームファンを増やしていくほうがいいんじゃない?

そもそもなんだけど、esportsがゲームを知る入り口になるのって変だと思うんだよね。普通に考えて、まずゲームを知って、そこに競技シーンがあることを知って、それをesportsって言うんだなぁって認識をするはず。最初にオリンピックで「esportsです!」って見せられた人の関心って持続するかな。

岸:
esportsってゲームの競技シーンで、ゲームの上位レイヤーにあるものだと思います。関心が持続するかしないかは、出場する選手や出演者、イベントに魅力があるかないかでしょう。だからこそ、常にフルパワーでなければいけないと思います。

――ポノスの板垣さんはesportsからゲームを知ってゲームへの偏見をなくすって考えを持ってて、それは一理あるんだけど、やっぱり最初にゲームがあるとは思う。全然関心がない人にesportsを提示しても「はぁ?」ってなっちゃう気がする。esportsからっていうアプローチをするなら、かなりきちんと練らないとダメだろうね。

もっと作り込んでほしかったe-Sports X

――話は戻るけど、TGSでesportsが取り上げられたこと自体はよかったよね。

岸:
嬉しかったですね、僕に声をかけていただいたことも含めて。あの基調講演の場に立ててたら、とは思いますけど……。まあ、だからこそ一から出直して、またああいう大きな舞台に立てるように頑張りたいです。

――ただ、基調講演がよかった分、一般公開日のe-Sports Xはもう少しやりようがあったと思った。

岸:
ゲーム業界だけじゃなく、いろんな業界の魅せ方を参考にしてほしかったと思いましたね。僕自身も勉強中ですけど、esportsに取り組む人たちはゲーム以外の業界から勉強しないと、esportsは絶対成長していかない。今後は別の業界から企業が進出してきて、みんな飲み込まれていっちゃう気がします。

――おれの印象としては、ここ数年でesports業界が作ってきた枠組みをTGSでもそのまま踏襲してたって感じかな。

岸:
コンセプトもステージの作り方も、目新しさはそこまでなかった。せっかくだし、もっと変わったことをやれればよかったんですけど。

ゲームタイトル云々の話じゃないんですよ。結局はストーリー性とか照明とか、ステージの作り方とか演出が大事。視聴者やプレイヤーって、そこを見て気持ちを掻き立てられるはずですからね。そうしたところがいままでと似たような感じだという印象がありました。

――ステージを2つに区切ったのもよく分からなかった。そんなに扱うべきタイトルが多かったのかな。もしそうだとしたら、それって完全に主催側の都合。ゲームショウだからそれでいいかもしれないけど、視聴者のことを考えないesportsってよくはないよね。まあ、どのタイトルでもほぼ満席で500人くらい入ってたけど、椅子がある場所は休憩スペースになりがちだから、この人数は水物だと捉えたほうがいい。

岸:
そんなことを言いながら、やっぱりesportsが取り上げられたのはすごく嬉しい(笑)。esportsを知らなかった人がe-Sports Xを見てどう思ったのかは知りたいね。

――うーん、でもあれが最初のesports体験だとすると、そこまでインパクトはなかったかも。

岸:
タイトルや出演する選手に魅力はあったと思うけど、初めて観戦する人によさは伝えきれなかったかもしれない。「もう1回観てみたい」という気持ちにさせないともったいないですよね、あれだけ人が集まったんだから。

――esportsにまったく興味がない、まったく知らない人がesportsの試合を間近で観る機会ってTGSくらいしかないもんね。

岸:
そう。だからこそ、っていう想いがある。

――ほかにもesportsを取り上げたブースは多かったよね。主に周辺機器メーカーだけど。

岸:
過去にLogicool GやIntelが仕掛けていたものに比べると、スタッフの熱、演出、お客さんの温度などがそこまでなかったようには思えます。

――全体の熱って選手の熱だけじゃダメで、スタッフの熱と噛み合って初めて生まれるからね。で、その熱こそがお客さんに伝わるから。現場の誰かが冷めてると台なし。

岸:
e-Sports Xを観た人が「来年選手としてステージに立ちたい!」「こういう場所で実況してみたい!」ってもっと思ってもらえるものを作ってほしかった。

――おれもそうだけど、コアゲーマーも似たようなことを思ってたんじゃない? コアゲーマーの心を掴めないesportsって意味ないよね。

岸:
大会って実況と解説、選手がベストを出せばある程度形にできるんですよ。というか、多くの大会がそうだったと思います。でも、そこに頼りすぎてる感もある。頼れる人に頼りすぎて、頼れなかったらどうしようもない。そんなのが多すぎた。そろそろ制作と運営側も新しい形に進歩していく必要がありますね。

ちょっとレベルが上のいい大会が少ない

――ちょっと話を広げて、国内のesportsにおける課題って何ですか?

岸:
……人間。熱意のある人が少ない。あと、自分たちのこだわりが見えない企業も多い。ビジョンとか方針とか、それに向けた努力とか。僕は現場にかなりいたはずなのに、そういうところがあんまり伝わってこないんですよ。

でも、その中でCyberZのRAGEと、Red Bull Tower of Prideは突出してると思います。たしかに課題もいっぱいありますけど、「自分たちはこうしていきたい」という想いと行動がすごく伝わってきます。新しいことにもどんどん挑戦してる。

その一方で、変わり映えしない企業もあります。一部の人はちょっとずつ新しいことをしてるけど、全体としてはとにかく変化が少ない印象。

――個人的にはJCGがそんなイメージ。自分たちが持ってるトップ大会のファイナルを専門学校でやってるけど、みずから「学園祭です」って言ってるようなものだと思う。そういうのって選手が憧れる要素がないから、あの場に立ちたくなる選手はいないでしょ。いつまで経ってもルール関係のトラブルを起こしてるし。

岸:
JCGは低予算でもいい感じに大会をやってくれるという、独自のポジションにいます。あんまりお金をかけられないクライアントからすればありがたいんだと思う。じゃあ、それよりお金をかけた大会をしたいときはどうすればいいのか。もちろんJCGとCyberZもできるだろうけど、その中間をメインにする企業がないんですよね。両社にお世話になってる身だから言いづらいとはいえ、競合がもう1つ増えて切磋琢磨していってほしい気持ちはあるかな。

――本来はRIZeSTがそこにいるべきなんだけど、なかなかポジションを確立できてないね。LJL以外は全然目立たない。松井さんのグルーブシンクがそのポジションにいると言えばいるんだけど、グルーブシンクは大会重視っていうよりコミュニティを活性化させる仕事が得意という印象がある。

岸:
『Shadowverse』とか『CS:GO』とかNVIDIA CUPとか、JCGが担当してる大会は多い。それはそれでいいんだけど、RAGEまではいかなくても、もうちょっとお金をかけた上のレイヤーの大会が増えてほしい。JCGは新スタジオができたので、いままで以上の質の高い配信・大会も期待したいな。ここ最近はリプレイやハイライト、試合中のカメラワークの質も上がってきてるから、出演者含めて大会の魅せ方を考えていかないといけない。

――とはいえ、JCG含めて選手の紹介に力を入れるところが増えてるとは思う。それでもまだまだなんだろうけど。

岸:
選手紹介が増えてきているのはいい傾向だね。

ただ、依頼する側も低予算の大会しかできない、新しい挑戦もできない、となると業界に成長はない。自分も含めてだけど、ほとんどのキャスターのクオリティが低いのはそれも関係してる。選手として参加する側がルール読まないことも多々あるから、お互いが同じ方向に向いていかないと成長しないよね。

まるで運動会

――実際、JCGだけの問題じゃないよね。

岸:
うん、ゲーム系のネット番組はもっとクオリティを上げられると思います。テレビっぽいことをやってるだけの感じ。こだわりもないし、もっといいものを作りたいって人が少ない。変えようという意思がないのかもしれない。僕らも高いクオリティに耐えうる出演者にならないといけないんですけどね!

なので、未熟な自分と一緒に成長していける企業がいま以上に増えると嬉しいです。予算は限られてるかもしれませんけど、視聴者にもっと楽しんでもらいたい、ゲームをかっこよく見せたい、そういう気持ちが少しでもあれば、小さいところからでも仕掛けていけると思うんですよ。例えば『クラッシュ・ロワイヤル』は番組の作り方をかなり工夫してて、こだわりが伝わってきます。テレビとネットのいいところを融合した、いままでにないゲームの魅せ方をしてますね。

――この数年でゲーム系番組は大会も含めてフォーマットができてきて、それをなぞれば形にはなるからね。

岸:
そのフォーマットももっとかっこよくできるんじゃないかと思うようになってきた。例えば、大会で試合が終わってインターバルに入るタイミングがあるじゃないですか。「次の試合までお待ちください」「いったん失礼します」ってキャスターが言うんですけど、これもいろいろ変えていけると思う。僕も以前からやってきたことなんだけど、もっと変えていこうと入院中に確信しました。

で、こういうこだわりが、ほとんどのキャスターにない。台本どおりでいい、試合を実況してればいい、それだけ。「もっとこうしたい」とスタッフに言わないし、台本どおりに進行して実況するだけの道具になりつつあります。

クライアントも前例のないことをやろうとしない節がある。番組のクオリティは依頼するほうの責任も絶対にある。事故らなければOK、現状維持でよしとする、形だけ整える、そんなやり方はやめたほうがいい。キャスターに依頼するときも、理由や必然性は絶対に必要です。

――それって予算の問題だけじゃないもんね。

岸:
そこ込みの予算であるべきですね。ないならないでできることがあるし、社内であろうが外注であろうが、スタッフや出演者に相談していいものを作らないとダメですよ。みんなチャレンジを恐れちゃってる。

――恐れるというよりは、やる必要があると思わないんじゃないの。

岸:
ほかにも例えば、大会の表彰式でも変えていくべきところがあります。

表彰式って、決勝戦が終わったあとにいったん配信を中断して、仕切り直して行なうじゃないですか。準備がたいへんなのは充分承知してるけど、なくてもいいなと思う。一例として、試合が終わったら選手全員がトロフィーに向かっていって、紙吹雪が舞って、司会が「優勝は○○!」って言って、映像がフェードアウトして終わり。それでいい。

――そして当日の映像を試合終了までに編集したエンディングムービーが流れると。当日編集って死ぬほどたいへんな仕事だって知ってるけど、あれすごい好き(笑)。

岸:
やっぱりね、表彰式のために1回中断するのはよくない。「○○が優勝! では表彰式の準備のためいったんお別れです」って途切れると、視聴者や来場者はテンションが下がる場合もあると思う。試合終わって帰っちゃう人もいるので、シームレスに表彰式にいくのがいいだろうね。

――優勝した瞬間の熱量のまま、現場はもみくちゃになって終わってほしいよね。たしかに、いまはほとんどの大会が運動会の延長みたいになってる。

岸:
まさに日本ならでは。もうぶち壊していい。優勝したチーム以外は壇上に上がらない演出もありだよね。イベント終了後にプレス向けの写真撮影は必要だけど。

――LJL 2017 Summer Split Finalがそれだった。DetonatioN FocusMeはRampageと握手したあと、一切光が当たってない暗い通路をとぼとぼ歩いて、そっと控え室に帰っていったのよ。けっこう距離があって、そこを歩いてる時間の惨めさってすごかったと思う。配信ではそんな姿すら映ってなかったし。

岸:
あれはよかったね。優勝チームを称える演出だった。それくらいやらないとダメですね。

――いままでの形式なんてどうでもいいから、むちゃくちゃをやってほしい。

岸:
開会と閉会のあいさつも正直いらないよね。

――それが面白かったらいいけど。突然ステージの上から降ってきて「開会します!」みたいな。

岸:
そういうのは全然あり。あと、RAGEみたいな感じもいいんじゃない? エンディングで大友さんが興奮覚めやらぬ顔で「すごい試合でした!」って言いながら入ってきて、次回大会の発表をすると。お固くならない雰囲気作りがいい。

全部終わってから壇上に出てきて、「今日はいい大会で、皆さん大健闘でした。なんとかかんとか」っていうあいさつはいらない。選手も視聴者も望んでないと思う。

――運動会形式(笑)。

岸:
校長先生っぽい感じ(笑)。あいさつするためだけに主催者が出てくる必要なんてないんですよ。大友さんがいいのは、本当にちゃんと試合を見てて、選手に共感してるのが声と表情から伝わってくるところ。視聴者が「主催者もあんなに楽しんでるんだ」って分かる。

チームとメディアについても

岸:
あと、ゲーミングチームにも問題があります。

――例えば?

岸:
そうですね……全体的にオーナーが目立っているケースが多いかな。選手を魅せるほうが先だと思う。オーナーはどーんと構えて、目立たないんだけど試合会場に来てたら選手がざわっとするような存在。ちょっと偉そうでもいいからスーツでビシっと決めて、一言に重みがある。そういうオーナーらしさを持ってほしい。

――たしかに、チームや選手より自分を大切にしてる感じが漂ってるオーナーがけっこういるね。Twitterで「お偉いさんと会った」「どこそこの大企業に行った」とかいう報告してる人もいるけど、そんなツイートをする暇があるなら選手を目立たせてあげたらいいのに。

岸:
もちろんチーム運営がたいへんなのは分かりますよ。売り上げを作って、チームによっては選手に給料や報酬を支払わなくちゃダメですし。でも、ビジョンや内側が不透明なのにプロチームを名乗るのはどうかと思います。

○○部門を作りました、チームを作りました……そしてすぐ解散する。選手の問題もあるんだろうけど……公式サイトにも選手の情報が少ないから、誰がいるのか分からない。最新の情報じゃなかったりするし。

――選手の入れ替えはどこもやばい。ポイ捨てがまかり通ってる。

岸:
厳しい世界だから仕方ないけど、ファンの定着はしないだろうね。

――選手のほうも、脱退したら卒論を書くと。

岸:
チームに対する暴言ね、あれは本当にやめたほうがいい。わざわざ書いちゃう人にもいろいろ思うけど、僕はそこの教育ができてないチームなんだなと受け取ってます。

――それを客観的に指摘する人がいないよね。ゲームメディアも取り上げたり追求したりしないし。いまだに大手はカタログ記事ばっかりで、一部の中小ゲームメディアしか議論を提示しない。しかもesportsネタは限られてる。

ゲームメディアに関してはどう?

岸:
ゲームメディアも、面白いことをやってるところは少ないと思う。記事としては当たり前なのかもしれないけど、ゲームの大会があった、結果はこうだった、ってレポート記事が多い。esportsを取り上げるなら、もっと選手やチームに寄り添ってほしい。ただ、最近は書き手が自分なりの感情や考え方を出してる記事が面白いね。Negitaku.orgのYossyさんの記事を読むと、本当にゲームが好きで、esportsが好きなんだなーって感じる。

――レポート記事、つまんないの多いよね。報道としては正しいやり方で、記録としては参照しやすいけど、「それでいいの?」って思う。

岸:
主催者とか実況者のコメントがあるだけで全然違うんで、現場の人に訊けばいいんですよ。ライター経験がない自分が言うのも失礼かもしれないけど、もうちょっといいやり方があるんじゃないかな。

――結局さっきの大会や番組の話と同じで、「大会レポート記事」のフォーマットがあるからそれに当てはめるだけで書けるんだよね。一仕事した気になっちゃって、お金ももらえる。

岸:
しっかり書いてる人もいますけど、全体的にもう少し変わっていってほしいです。もちろんメディアだけでなく、プレイヤーや視聴者も声を上げていいと思いますよ。

選手としての自覚が必要

岸:
そうだ、これは絶対に言っておきたい。キャスターもそうだけど、特に選手は服装や姿勢をもっとかっこよくしてほしい。例えば海外遠征に行くとき、空港でチーム全員が服装ばらばらで統一感がない。スーツとまでは言わないけど、せめてチームユニフォームは全員が着るべきですよ。バッグも揃えて。

それくらいびしっとやらないと認知度は上がらないし、憧れの存在にはなれません。

――空港でチーム全員が同じユニフォーム着てたら、たしかに目に入るね。

岸:
そう、周囲の人に「なんだ、あの集団」って注目されますよ。ユニフォームにはチームやスポンサーのロゴが入ってるだろうから、プロゲーマーだとは分からなくても、スポーツ選手のようには思われるはず。見た人は知らないロゴがあれば調べるかもしれませんし、企業ロゴを知ってる人やesportsを知ってる人から声をかけられるかもしれません。そういうきっかけを作るのが大事です。

ゲームだけやってればプロだ、っていうのは違う。アマチュアだったら何も言いませんけど、そんな細かいところにプロとしての自覚が見えてくる。チームには選手にそういう指導をしてほしい。

――国内の大会でも、全員揃いのユニフォームかスーツを着て、いったん全員で集合してから会場に向かうっていうのもいいよね。道中で目立つし。

岸:
僕の理想はスーツなんですけど、何であれ取り組むチームが出てきたらほかも真似せざるをえなくなると思う。チーム全員が揃いのスーツを着て揃いのバッグを持って歩いてる、それだけでかっこいいよね。「憧れの選手」ってそういうところから生まれるんじゃない?

おじいちゃんになっても遊んで観戦したいものに

――課題が多いね。

岸:
しょうがない。探そうとしなくても見えてくるから。

――じゃあ逆に、昔と比べて進歩してるところは?

岸:
なんだかんだ言いつつ、配信のクオリティはかなり高くなってます。

あとは……イベントや番組が多くなったのもいいことですね。企業系もコミュニティ系も増えてる。視聴者も増えてます。それに比例して、よろしくないコメントをする人も増えましたけど。選手への期待を込めた批判ならまだしも、容姿の悪口や単なる中傷がめちゃくちゃ多い。

――確かにね。Twitchで配信されたLoL Worlds 2017のRampageの試合はチャットがひどくて見られたもんじゃなかった。さすがに非表示にした。

岸:
それと、業界全体で人が増えましたね。選手もキャスターも企業も。まだ緩いところが多いですけど、1年もすれば地盤が固まるんじゃないかと思います。

あとそうだ、C4 LANができたのはすごく大きい。あの雰囲気を作れるのはCyACだけ。みんな忘れがちだけど、CyACの代表である小林さんは、ゲーマーのみんなに感謝しながらやってるんですよ。過去10年以上、いろんな失敗をしてきて、でも縁を大事にしながら続けてきた結果としてC4 LANができたのかなと。

ちょっとミスしても、CyACなら許される空気がある。それってすごいことですよ。

――よくも悪くも、儲けようっていう感じがない。そこが受け入れられてるのかもしれないね。

岸:
ビジネスにしないと続かないから、なんとかギリギリ黒字にはしてるみたいだけど。

――最後に、岸くん自身はesportsをどういうものにしていきたいの?

岸:
子供からお年寄りまで、すべての人が楽しめるものにしたい。それと、ゲームをしながら子供たちが何かを学べるように。日常的なニュースになってて、自然と情報が入ってくるように。そういうふうに、生活の一部にしていきたいです。難しいかもしれないけど、スポーツと呼ぶならそこを目指さないといけない。

まあ簡単に言えば、僕がおじいちゃんになっても遊んで観戦したいと思えるようなものにしたいですね。

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大病から復帰した岸大河、ゲームキャスターという仕事に何を思う?」を読む

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岸大河 @StanSmith_jp

協力
Wargaming Japan @wargamingjapan / 公式サイト

取材・執筆・撮影
なぞべーむ @Nasobem_W

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謎部えむ

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