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コアファンがeスポーツ大会を観戦する理由~1位は選手応援、最下位はプレゼント期待

eスポーツ大会の主催・運営者にとって、視聴者がどんな理由で観戦するのかを知るのは観戦者を増やすためにとても重要です。個人的にも気になっていたので、弊誌でアンケート調査を行ないました。

この記事では回答を集計したものを提示し、簡単な考察を紹介していきます。

※設問はオンライン観戦に限るので、文中では「観戦=視聴」と置き換えても大丈夫です。僕は普段「観戦」を「オンラインでの視聴+オフラインでの来場」の意味で使用していますが、今回は諸事情で「観戦」を使用しています。

調査概要

今回の調査では、僕のTwitterアカウントとhappy esportsから「eスポーツ大会をオンライン観戦に関するアンケート」を投稿。4月27日~29日にわたって回答を募りました。

弊誌からリーチできる人しか回答しえないというかなり偏った標本になっていますので、この記事の内容はあくまで「まあそうかもね」と参考程度にご覧ください。

回答者の全体的な属性としては、eスポーツへの関心が非常に高く、半年以内に大会をオンラインで観戦したことのある人です。

【設問一覧】
●アンケートへの回答に同意いただけますか?
●性別を教えてください
●年齢を教えてください
●eスポーツや大会、チーム、選手にどれくらい関心がありますか?
●直近半年間でeスポーツ大会をオンラインで観戦しましたか?
●よく大会を観戦する機器を教えてください(複数可)
●大会観戦に利用したことのあるサービスを教えてください(複数可)
●大会が放送されていたら観戦に利用したいサービスを教えてください(複数可)
●大会をオンラインで観戦する理由を教えてください(複数可)
●大会のオンライン観戦は日常生活でどれくらいの優先度ですか?

【観戦理由の選択肢】
メインの設問である観戦理由の選択肢は12個ありました(「その他」は除外)。

●大会、試合が面白い(楽しみたい)
●ゲームの話題性や大会の賞金・規模など、大会自体に関心がある
●大会のスポンサーや協賛企業に関心がある
●大会の結果を知りたい
●更新情報や今後のアップデートなど、ゲームに関する特別な発表に期待している
●大会を観戦した人だけがもらえるプレゼントに関心がある
●出場チームや選手以外の出演者(キャスターやゲスト)に興味がある
●自分以外の人のプレイを観たい、あるいは参考にしたい
●出場している知り合いを応援したい
●特定のチームや選手を応援したい
●暇潰しのため
●たまたま大会が開催されていることを知ったから

「大会、試合が面白い(楽しみたい)」は途中で追加したので、集計はしていますが分析対象からは除外しています。

【性差について】
調査前から回答には性差があると予測していまして、(男女の各標本数に大きな差はありますが)結果はそのとおりになりました。そもそも集団としての人間には性差がありますので、性差に立脚した分析は「集団としての人間を扱う」という意図をご理解くださいませ。

もちろん、集団としての人間に性差があるとしても、それをそのまま個人としての人間に当てはめる(=性差ありきの役割や偏見を押しつける)のは自然主義的誤謬です。気をつけましょう。

結果概要

最初に観戦理由についてのみ結果を概観します。

●観戦理由について、男性の10代、20代、40代~50代で「自分以外の人のプレイを観たい、あるいは参考にしたい」が最も多かった(30代は2番目)。次点が「特定のチームや選手を応援したい」だった(30代は1番目)。ただし、僅差。

●観戦理由について、女性の全年代で「特定のチームや選手を応援したい」が最多だった。「自分以外の人のプレイを観たい、あるいは参考にしたい」は全年代でそこまで重視されておらず、男性の観戦理由との違いが浮き彫りになっていると言える。

●観戦理由について、全体として「大会の結果を知りたい」が4番目に多かったのが意外だった(が、当然でもある)。大会番組のチャット欄で気になるチーム・選手の勝敗を尋ねる人が多発している現状も見逃せない。

●観戦理由について、全体として「大会を観戦した人だけがもらえるプレゼントに関心がある」は最下位だった。回答者がコアファンだったのが原因かもしれない。逆に新規層の獲得には効果があるとも考えられるが、施策ではきちんとターゲット設定する必要がある。

●観戦理由について、全体として「大会のスポンサーや協賛企業に関心がある」が10番目だった。これはなかなか強烈な結果だが、主催・運営者は大会内外でのスポンサーの露出方法をもっと検討しないといけないだろう。

回答者の性別と年齢

ここから詳細を見ていきましょう。

回答は広く受けつけましたが、分析の対象は「(調査期間から)半年以内に大会をオンラインで観戦したことのある人」です。有効回答数は327、男性は263人、女性は62人、その他は2人でした。

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「その他」は標本数が極めて少数で分析できないため除外します。弊誌からはリーチできなかったということです。

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男女ともに0代、60代、70代~の回答者はいなかったので除外します。
男性40代と男性50代は標本数が少ないのでまとめます。
女性40代と女性50代は標本数が極めて少数で分析できないため除外します。これも弊誌からはリーチできなかったということです。

eスポーツへの関心度と観戦の優先度

回答者には「eスポーツ、大会、チーム、選手にどれくらい関心がありますか?」と5段階で尋ねました。

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僕のTwitterアカウントや弊誌からリーチできる層を端的に表しています。弊誌としてはありがたい情報ですが、調査としては「ザ・偏り」ですね。

また、「大会のオンライン観戦は日常生活でどれくらいの優先度ですか?」と質問しました。その結果と、男女別および上記の関心度4と5の人の観戦優先度をまとめました。

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男性よりも女性のほうが、大会観戦のために予定を空けておく傾向がかなり高いですね。

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関心度5の人のほうが大会観戦のために予定を空けておく傾向が圧倒的に高いです。また、「ほかのどんな用事が被っても観戦を優先する」が関心度4の人の3倍、平均の1.5倍もあります。
一方で、関心度が低くなると大会観戦の優先度も下がるようです。これは容易に予想できましたが、関心度4の人でも「ほかに何もすることがないときだけ観戦する」が20.2%もいるのは驚きです。関心度5になってもらうのが重要なようです。

この結果から言えるのは、「大会開催日の告知は早ければ早いほうがいい」ということです。分かりきっていることではありますが、どの大会でも徹底できているかというとそうではありません。コアファンですらぎりぎりの告知だと(ほかの用事を優先して)観戦してくれないので、主催・運営者としてはまずここから改善していきたいところです。

観戦する機器とサービス

次に、大会を観戦する機器とサービスについて質問しました。ここはさっと流し見していきましょう。

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スマホよりPCで観戦する人が多いのが意外でした。コアファンゆえでしょうか。

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YouTubeとTwitchがほぼ同数なのはコアファンが多いからでしょうか。
利用したことのあるサービスではテレビ系(ネットで閲覧できるものも含む)が2.5%しかいませんが、利用してみたいサービスでは10.5%と、テレビで大会を観戦してもいい人がそれなりにいることをうかがわせます。

大会を観戦する理由(全体)

さて、ここからが本命です。「大会をオンラインで観戦する理由を教えてください」の結果を見ていきます。まずは全体の回答から。

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上位6個と下位6個に大きな差がありますね。

【選択肢上位6個】
●大会、試合が面白い(楽しみたい)
●ゲームの話題性や大会の賞金・規模など、大会自体に関心がある
●大会の結果を知りたい
●出場チームや選手以外の出演者(キャスターやゲスト)に興味がある
●自分以外の人のプレイを観たい、あるいは参考にしたい
●特定のチームや選手を応援したい

【選択肢下位6個】
●大会のスポンサーや協賛企業に関心がある
●更新情報や今後のアップデートなど、ゲームに関する特別な発表に期待している
●大会を観戦した人だけがもらえるプレゼントに関心がある
●出場している知り合いを応援したい
●暇潰しのため
●たまたま大会が開催されていることを知ったから

僕が意外に思ったのは、「大会の結果を知りたい」と「出場チームや選手以外の出演者(キャスターやゲスト)に興味がある」が上位に入っていることです。

また、eスポーツのコアファンはゲームのアップデート情報を期待して大会は観戦しないようです。しかし、僕の経験則としては、ゲームが好きでも大会にそれほど関心がない層(今回リーチできていない人たち)にとってはアップデート情報が重要のように思われます。

コアファンが大会のスポンサーにそれほど関心がないのも驚きの結果です。おそらく、その分の関心は応援しているチームや選手に向いているのではないでしょうか。

この結果からすると、大会のスポンサー自体にあまり関心が持たれていない可能性があります。もし事実なら主催・運営者としてはたいへん苦しいことになるので、大会をスポンサードすることで企業への好意度が高まったかどうかを別の機会に調査してみたいですね。

大会を観戦する理由(全体と男女別)

男女別の結果も見てみましょう。

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非常に興味深い結果となりました。男女とも、上位6個と下位6個は選択肢が同じで、これはコアファン全体の観戦理由の傾向を表していると考えられます。ただ、男女でその内訳はかなり異なるようです。

【男女ともプレイとプレイヤーへの関心が高い】
特に目立つのは、「自分以外の人のプレイを観たい、あるいは参考にしたい」では男性が16.3%(1番目)に対し、女性が11.9%(5番目)しかないことでしょう。男性においては、当該のゲームをプレイしていてプレイスキルを向上させたい、スーパープレイを観たいという動機が女性より強いのだと考えられます。

また、「特定のチームや選手を応援したい」では女性が21.7%(1番目)に対し、男性は15.7%(2番目)です。女性においては、プレイスキルの向上やスーパープレイへの期待よりも、自分が応援しているチーム・選手の活躍を観たいという動機が男性より強いのだと考えられます。

これだけを見ると、男性はプレイへの関心が高く、女性はプレイヤーへの関心が高いと言えます。ただ、男性もプレイヤーに関心があり、女性もプレイに関心があるのは間違いありません。プレイとプレイヤー、どちらの魅力も引き立てる工夫が大会番組には必要でしょう。

個人的な印象としては、試合中の決定的瞬間をクローズアップしたり、スーパープレイをリプレイで流したりなど、多くの大会番組でプレイを魅力的にする工夫はけっこう行なわれている気がします。

一方で、選手紹介の映像や選手プロフィールの紹介など、プレイヤーの魅力を引き立てている大会番組はまだまだ多くありません。チーム・選手の情報が全然分からない大会番組も多いです。なので、プレイヤーの魅力を伝えられている大会では女性の観戦者が多い傾向があるかもしれません。

僕は調査前から大会番組を観ている大半がチーム・選手のファンだと予測していました。結果はおおよそこれを支持するものですが、となるとやはり、男女問わず観戦者数の土台を大きくするにはチーム・選手のファンになってもらうことが大切だと言えます。

今回の調査からは関心度の低い人たち、あるいは「一見さん」を集める施策は検討できませんが、たぶん必要な施策はだいぶ異なるはずです(下位6個の選択肢が重要なのかもしれません)。

【大会の結果をすぐに/常に知りたい人も多い】
「大会の結果を知りたい」が多いのも注目です。これはたぶん、チーム・選手を応援しているからこそ気になるのでしょう。しかし、大会番組を最初からずっと観ているならいいんですが、途中で観始めたときはそれ以前の結果をすぐに知れる状態にないこともしばしば。そのため、チャット欄で結果を尋ねる人が非常に多い印象があります。

とすると、主催・運営者は折々でその日の結果を掲示するのではなく、常にどこかしらで分かりやすく表示しておく必要があるのではないでしょうか。そういえば、Twitchでは視聴者側で表示させられる画面上のサイドバーをプラットフォーム側が実装していました。

大会を観戦する理由(男女年齢別)

最後に、男女年齢別の観戦理由を見ておきます(10代から30代まで)。

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どの年代でも女性は「特定のチームや選手を応援したい」が20%を超えていて突出しています。一方で、男性の観戦理由はわりと広範にわたっており、突出した選択肢はありません。大会だけでなく、チーム・選手にとっても参考になる結果でしょう。

今回の調査は、最初に書いたようにeスポーツへの関心度が非常に高い人たちを対象にしています。つまり、そうした人たちにより大きな満足をもたらす施策を検討するだけでなく、少し関心度の低い人たちのロイヤリティを高めるための施策も考えうるということです。

逆に、まったく関心のない人たちの積極性を高めるにはふさわしくない調査です。ターゲットは誰かを念頭に置いておくことが重要です。

未来へ

というわけで、第1回アンケート調査の結果を眺めてきました。もう少し踏み込んだ、戦略や施策により繋がりやすい設問にすればよかったんですが後の祭りです。次回は腕を上げてきます。

ただ、今回は僕がリーチできる人たちの観戦理由を知りたかったので、当初の目的は果たせました。ランダムサンプリングとはとても言えないので結果を全面的に信用することはできませんが、冒頭でも書いたように「なんとなくこういう傾向もあるかもなぁ」ということで。

それでは、また次の調査でお会いしましょう。

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