「eスポーツ×○○」な著者陣が集った『1億3000万人のためのeスポーツ入門』発売前イベントで話したことまとめ(追記)

いよいよ5月31日に発売を迎える『1億3000万人のためのeスポーツ入門』(Amazonでは6月3日)。上の写真は著者陣が本の袋詰めをしている、eスポーツ感溢れる1枚となっております。

いろいろな縁が重なった結果、僕も本書の「第2章 eスポーツ今昔物語」を寄稿する運びとなったわけだが、5月25日には発売前イベントを開催した。本の紹介は発売後にするので、今回はこのイベントの超簡単なレポートをお届け。

本の内容が分からないとイベントの内容も分からないのではないか? ご安心を! このイベントは本の内容とは直接的にはほとんど関係なかった。各々がいま考えていることを喋った感じだ。

なお、酩酊した覚えはないのに酩酊後のごとく記憶がないので、かなりかいつまんでいる。雰囲気を味わってほしい。

驚異の出席率91%

本書の執筆陣は6人+座談会参加2人の計8人。発売前イベントは僕を含めて7人が登壇した。皆、「eスポーツ×○○」で特徴づけられる、秀でた一芸(あるいは二芸三芸)を持つ人ばかりだ。僕はただのeスポーツスリンガー。

eスポーツアナリストの但木一真、eスポーツ詩人のlive、eスポーツチームオーナーの西谷麗、eスポーツ弁護士の松本祐輝、eスポーツセールスパーソンの小澤脩人、eスポーツ起業家の荒木稜介という気鋭の面子である。eスポーツプロデューサーの佐々木まりなは都合で欠席。

募集枠100名に対して応募が100名あり、参加費が会場での支払いだったにもかかわらず当日の出席率は驚異の91%。参加者のeスポーツへの関心、また執筆陣への興味は相当に高かったと見える。恐れ入る。

また、年齢層も非常に若く、おそらく平均年齢は20代前半だったように思う。まさに希望。圧倒的希望である。眩さとはこのこと。

「eスポーツを普及させる」を定義しろ

最初の話題は「eスポーツを普及させるためにできること」だった気がする。但木さんが最初に僕に話を振ってくれたが、僕は「eスポーツを普及させるってどういう意味? どういう状態を目指すの?」と返した。

実際のところ、これをお題目のように唱える人はいても、「普及」が意味するところ、すなわち目指すべき状態を定義していない人がめちゃくちゃ多い。どういう状態をもって「普及した」と言えるのかを定義しないと、戦略も施策も立てようがなくないか?

但木さんはeスポーツ大会の観戦者数(大会関連動画もだったかな?)を2500万人にすることを目標とした。これはGzブレインが発表したデータに基づくもので、僕もだいたい同じ数字(2000万人)を普及の定義、つまり目指すべき地点と考えている。

こうした数字があって初めて「普及のために何をすべきか」を語れるわけだ。皆様におかれましては、重々ご承知のほどを……「目標は商品を売ることです」なんていう会社員に居場所はありませんでしょう?

で、僕はたしか「普及させたいって言いながら、主催者や運営者が大会の告知に全然力を入れないのはなにゆえですかね~」とコメント。ツイートを数回やっただけで告知しました顔をしている大会があまりにも多く、本当に観戦者を増やそうとしているのか疑問だ、と。

さらに、そのために大きな役割を果たすのがeスポーツ系ウェブメディアだと思うが、20ほど乱立しているにもかかわらず、誰に対してどんなコンテンツをどうやって届ければいいのかどこも分かっていない、と話した。

実際、2018年から2019年にかけて乱立しているeスポーツメディアは、そのほとんどがもはやまともに更新すらなされていない。業界で儲けられるか"味見"するために参入したんだろうけど、儲からないと分かりきっているんだからもっとちゃんとやってほしい。そんなことを言った。

KAI-YOUがeスポーツを取り上げれば、ポップカルチャー好きに届く。日経新聞が取り上げれば、経済畑の人に届く。Real Soundが取り上げれば、音楽好きに届く。このように、eスポーツを外側の人に届けるのは非常に意義あることだ。

しかし、大半のeスポーツメディアはプレスリリースのコピペ記事をいったい誰に届けようとしているのか? 本当に、もっとちゃんとやってほしい。

ここまで書いてきて当日話したことをあんまり覚えていないことに気づいた。このへんも話が前後している可能性がある。

あ、そうだ。6月4日にもliveさんと麗さんが激論を交わすトークイベントがあるぞ! 発売前イベントに行けなかった人、もっと濃密な話が聞きたい人はぜひ。僕も会場にいるので会いに来てね。

この先も長く業界で働くなら

次の話題は「eスポーツ業界で働くために必要なこと」。当日のスライドを見返したので確実である。

印象に残っているのは、麗さんが「学生とかが業界で働くなら、いますぐにできる。アルバイトでも何でも。行動すればいいだけ。でも、この先も長く働いていくなら、じっくり検討しないといけない。入り口と継続の2つは分けて考えるべき」と言っていたこと。

まったくそのとおりで、ただ業界に関わりたいだけなら選択肢は無数にある。でも、長い仕事、あるいは一生の仕事にしたいなら、その選択肢は急激に狭まり、むしろ実現できている人は業界内にもほとんどいない。自分がどうしたいのか、しっかり考えることが必要だ。

僕も何か話した記憶はあるが……たしか、本書のプロフィール欄で業界歴を明かしたことを「なぜいまなのか」と但木さんに質問された。ただ機会がなかっただけ、そして自分がそういう過去の話に関心がないからと答えた。

この業界、いやほかの業界でもそうだが、昔の仕事を武勇伝として語り続ける人がけっこういる(らしい)。あの大会を手がけたのは俺だ、私はあのeスポーツ施設に手を貸した――などなど。そんな自慢をしている人がいたら、そっと距離を置くのが賢明だ。僕が過去に一度だけそれをやったのは、議論に少しでも説得力を持たせるためだった。それほど懸命であった。

それと、僕が業界で働くことになったきっかけも話した。もともと書き仕事をしていて、そこに『LoL』をプレイしていたことが重なり、「eスポーツ×ライティング」の需要にはまったのだ。こうした「eスポーツ×〇〇」の構造はいまも変わっていないので、eスポーツやゲームが好きというところに特筆できる一芸を加えると業界で活躍しやすいだろう。

学生とeスポーツの関係性

次の話題は「学生とeスポーツ」。何を話したのか、何が話されたのか、ほとんど覚えていない。僕自身は何も話していない気もする。

とはいえ、どの話題でも但木さんが気を利かせて僕にいろいろと話を振ってくれたのは感謝感謝である。

そういえば、荒木さんがなぜ起業したのか、自身も学生としてeスポーツにどんな期待を抱いているのかを話していた気がする。あやふやだ。そのうち、もしかしたらどこかでレポート記事が出るかもしれないのでそれに託そう。

最後の質問タイムも合わせると、学生サークルに何を期待するかという質問があり、それには「ポケモンサークルの歴史を調べてみてください、eスポーツサークルもそこから学べることがたくさんあると思います」と答えた。

ポケモンサークルは2010年頃から各地の大学で設立された、ポケモン好きによるポケモン好きのサークルだ。対戦ガチ勢、ぬいぐるみ好き勢など多様なタイプのポケモン好きが多様なサークルを作り出していったのだが、eスポーツサークルに関わっている人はぜひその歴史を辿ってみてほしい。

eスポーツのスポンサー価値って何だ

最後の話題が「eスポーツのスポンサー価値」。ここでも但木さんが話を振ってくれて、僕は「そもそもeスポーツの価値って何ですかね? たぶん答えられる人ってほとんどいないと思います」とコメントした記憶がある。それ以外は忘れた、すまん。

「eスポーツの価値」を定性的でも定量的でも言語化するのは本当に大事なことだ。これができている人は本当に少ない。

この議論がどのように進んだのか……というか自分がそれ以外に何を喋ったかは忘れてしまった。マジで何も覚えていない。ただ、麗さんがマイクを持つごとに熱弁を振るっていたのは覚えている。

そうだ、選挙に行こう

おまけということで質問タイムが設けられた。めぼしいものとして、「eスポーツ業界はシニアと向き合えていない、むしろ避けているのではないか」という質問があった。

これに対し、麗さんが「子供や孫が頑張っている姿を応援しない親や祖父母はいない」と名答。シニア層を取り込むにはそこに直接攻め入るのではなく、子供や孫がひたむきに努力している姿を届けることが大事だということだ。

僕はここでは何も喋らなかったが、シニア層をターゲットにするのはわりと難しいと思っている。もちろん上記の戦略は有効だとしても、これまでゲームに触れてこなかったようなシニア層にゲームをしてもらう、大会を観てもらうというのは至難の業だ。

但木さんは「かつてゲームをしていたシニア層を取り込むのは有効だ」と言っていた気がするものの、昔ゲームをやっていようがいまいが、現在ゲームやeスポーツに関心のない人を取り込むこと自体が難しいのだ。というか、それはほかの何事でもそう。まず興味を持っている人を取り込んでいくというのが基本路線。

※2019/5/30 以下追記

参加してくれてこの質問をしてくれたれいんさんが以下の記事を上げてたので思うところを。

僕の書き方も悪かったのであれですが、「シニア世代は"全員が"eスポーツに関心がないからアプローチしづらい」とは思っておらず、シニア層に限らず関心を持っていない人にアプローチするのは難しいという話でした。で、シニア層は相対的に関心度が低く(れいんさんが掲示しているデータも知ってます)、そのためにアプローチの優先度が下がってるのかと。

また、シニア層もeスポーツに関心がありゲームのプレイヤーになってもらえるとの主張に対しては、そもそもeスポーツ関連企業はプレイヤーを増やす方向に動いておらず、既存プレイヤーへのアプローチに偏っているという現実があります。プレイヤーを増やすのはゲーム会社の仕事、ということですね(eスポーツからゲームに興味を持ってもらうのはもう少し先の話でしょう)。

その既存プレイヤーは若年層の割合が多いから、アプローチもそこが優先的になる、という感じでしょうか。もちろん、プレイヤーを増やす活動をしているeスポーツ関係の人もいます(地方eスポーツ協会など)。

経済的発展のためには多くの企業の決裁者であるシニア層を巻き込まなくてはいけないというのも妥当ですよね。それにはもう関係者がずいぶん動いていると思いますので、けっして無視はしていません。また、興味を持ってくれているシニア層にはアプローチできますし(繰り返しますがシニア層に限らずです)、無視している人もいないと思います。

ただ、プレイヤーになってもらうこととeスポーツを理解してお金を出してもらうことは別の話なので、ここはごっちゃにしないほうがいいです。もちろんプレイヤーになってもらったほうが理解してもらいやすいでしょうけど、プレイヤーではなくてもeスポーツに積極的な人もいますし(儲かるから、とか)。

僕としてはまあ、何事もまったく興味ない人にアプローチするのは難しい、興味ある人ならアプローチできる、それだけです。

あと、シニア層へのマーケティング手法が若年層向けに比べて貧弱という現実もあります。

※追記ここまで

この質問タイムで麗さんがすごいと言っていたのは、挙手する人が10人かそれ以上いたこと。イベントでこんなにも手が挙がる光景は珍しい。麗さんいわく「日本では手を挙げられることがアドバンテージ」。けだし名言である。

もう1つ、最後の質問を紹介する。それはeスポーツシーンに対して「学生にじゃぶじゃぶお金を使ってもらうにはどうすればいいか」というもの。この人、弊誌の読者だろ。

麗さんの答えは真っ当で、「お金を払うに値する価値を提供していくだけ。どんなビジネスも同じ」と。そのとおり。

ただ、僕は「そもそも学生はお金を持っていない」と思ったのだ。そこからの議論は簡単である。「学生がお金を持っていないのは日本経済の構造的な問題。学生がお金を稼げるようになるには、アルバイトの時給が上がるしかない。そのためにどうすればいいのか? 僕たちや学生ができることは1つしかない、選挙に行こう」。

麗さんの下記のツイートは、この文脈あってのものだった。

「ゲーミングチームが投票に行くことはコンテンツになる」とのことだ。僕もそう思う。そしてチームや選手が率先して選挙・投票に行くなら、そのファンもあとに続くだろう。

これって実はeスポーツの大きな価値になりうるんじゃないですか?

恐るべきサイン会

はたしてこの記事はイベントレポートに呼ぶにふさわしいのかどうか。なんとなく雰囲気を察してもらえれば幸いである。やたらと麗さんのことが多いのは、僕が隣に座っていたから。近くにいる人の話は覚えている、そんなもんだ。

liveさん、松本さん、小澤さんはめちゃくちゃ真っ当なことばかりを話していた。真面目な参加者にとっては非常にタメになっただろう。特に但木さんとliveさんは僕と麗さんがまくし立てるのを受け止め和らげようとしてくれていた。

イベントの終わり際にはサイン会が実施されたのだが、僕は多くて10人くらいだろうと予想していた。いったいなぜサインがほしがられるのか不明だ。ところが、その4、5倍は人が並んでビビった。トイレから帰ってきたら行列ができてたんだもん。

うん、皆さんはおそらく特定の誰かのサインだけがほしかったのかもしれない。でも、なぜか流れ作業で全員が順番にサインすることになった。僕もサインした。この日、人生で初めて「謎部えむ」を手書きすることになったのだ……

そして恐るべきことに、何人もの人に「記事読んでます」と言われた。僕はお礼を言いながらも「怖い」を連呼してしまった。実際問題、業界の人を除けば弊誌の読者に会うことがほとんどなかったので、いい経験になった。

握手を求められるという光栄にも浴し、「あ、弊誌のファンっていたんだ」と実感することとなった。Twitterでしか認識してなかったからね。まああっちも「謎部えむって実在したんだ」と思ったことだろう。依代だが。

それと、冒頭でeスポーツメディアに散々なことを言ったにもかかわらず、eスポーツメディアの方々から名刺を頂戴しました! しっかりメディアを運営していただければ幸甚の至りです!

ほかの方にも名刺をいただいて、けっこうな枚数になってびっくりした。僕は名刺を作っていないし作る気もないので交換にはならなかったが、わざわざ僕に名刺を渡してくださった方、ありがとうございました。頑張りましょう。

本の発売を待て

もう数日後には『1億3000万人のためのeスポーツ入門』が発売するので、そのあとにまたレビューを書きましょう。皆さんもぜひお手元に。

そうそう、SHIBUYA GAMEで本書の特集が組まれている。ページがめっちゃかっこいいので必見。

著者陣のインタビューも順次公開されていく予定。いまのところ、但木さんと僕の分が公開されている。聞き手&書き手は、ゲーマー日日新聞を運営するあのJiniだ! 特集ページにある彼の手による書評も弊誌の課題図書に指定しておく。

僕は別に顔出しNGというわけではなく、経歴披露と同じく単に機会がなかっただけである。読者の皆様方、見かけたら声かけてください。

改めて、本の発売と6月4日のイベントもよろしく。それと……7月に大阪でイベントが!?


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