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Rush Gamingに学ぶ、チームや選手のファン作りに役立つ戦略と指標【分析編】

esportsチームもプロゲーマーも、もっとお金を稼いでほしい。お金がないと練習環境を整えられないし、新しい選手を獲得したり、海外に遠征したり、それこそ前途ある若者に憧れられたりすることもできない。チームと選手が嫉妬されるほど稼ぎまくってこそ、日本でesportsなるものが発展していく。

そしてその要となる存在がファンである。前回の記事【体験編】では、1人のプレイヤーが『CoD: WWII』で活躍するRush Gamingのファンになり、グッズを購入するまでを描いた。今回はそのプロセス(カスタマージャーニー)を分析し、各段階でどういった指標が有用なのか検討していこう。

【目次】
指標を設定する意義
KGIの設定
KPIツリーを描いてみる
認知の指標
興味の指標
ファンの指標
応援の指標
定着の指標
1人2役か、役割分担か

※以前の「商品としてのプロゲーマーをより魅力的にするための戦略と施策」は主にターゲットと施策について検討したので合わせて読んでもらいたい。また、今回の記事で示す指標はあくまで参考に、よりふさわしい指標を検討してほしい(そのため極力抽象的な指標にしている)。

指標を設定する意義

そもそも指標とは、どんな目的のためにどういう施策を行ない、どれくらいの成果・効果があったのかをデータ(数字)で計測するための物差しだ。

「とりあえずやってみた、なんか効果なさそうだったからもうやめよう」「体感的には効果があったから続けよう」というなんとなくPDCAを打破するには不可欠である。指標がなければその施策がよかったのかすら分からず、方針さえ立てられない。

だからこそ、指標を定めてデータを蓄積し、分析する必要がある。何がよくて何が悪かったのか、なぜそうなったのかが見えてくれば、次なる戦略や施策に繋げていける。何をやるにしても、指標を設定すること。それが大事だ。

KGIの設定

ということで、最初にチームのKGI(重要目標達成指標)を設定する。これは端的には売上であり、現状や予測を踏まえて具体的な数字を当てはめなければならない。

ただ、一口に売上と言ってもそれを構成する収入源はいくつかある。考えられるのは、コンテンツ収入、スポンサー収入、報酬、大会収入の4種類だ。

この図で表したように、上にある収入源ほど安定的である。それぞれを説明していく。

まずコンテンツ収入。これはグッズやチケットの販売、サブスクリプションの契約数など、ファンが直接的にお金を払うことで成り立つ。一度ファンになれば長期に渡ってファンであり続けてくれるため、安定度に寄与することになる。また、ファン数だけでなくファンとの繋がり具合、つまり「ファンエンゲージメント」によっても売上が左右されるが、長期的なファンはエンゲージメントが高く保たれている。

次にスポンサー収入。純広告は企業(または個人)と直接やり取りし、広告掲載枠や宣伝機会を提供して収入を得ることを指す。いわゆる協賛やスポンサード、パートナーシップのことだ。リーチやファン数など「掲載価値」が重要。また、ネットワーク広告はYouTubeなどでコンテンツ配信をしている場合の動画広告など、スポンサー(クライアント)とは直接取り引きをしない収入を指す。こちらは再生回数などに影響を受けるが、それは掲載価値に含まれる。

そして報酬。これは出演料、コーチング料、講演料、原稿料など、選手が持つ「ノウハウ」(魅力や人柄など含む)にお金を支払ってもらうことで成り立つ。現状そこまで大きなインパクトはないかもしれないが、将来的な潜在顧客は多いと見込まれるため、より安定度の高い収益源となる可能性は高い。

最後に大会収入。これはプロゲーマーを象徴する収入源ではあるが、賞金やファイトマネーは「プレイスキル」がもたらす成績に強く依存するため安定しない。放映権料は日本ではまだ存在感が小さいが、今後esportsのリーグが多額の放映権料を獲得できるようになれば、その一部が各チームに分配されていくだろう。

長期的に売上を伸ばすのであれば、基盤としてこれらのうち最も安定していると考えられるコンテンツ収入を伸ばしていくのが妥当だ。ということで、今回はコンテンツ収入をKGIとしよう

※そもそも【体験編】はコンテンツ収入のターゲットについてのカスタマージャーニーだった。

KPIツリーを描いてみる

コンテンツ収入を伸ばすにはどうすればいいのだろうか。グッズを売りまくればいいのかもしれないが、いったいどうやれば売れるのか? それよりサブスクリプション契約を増やすべきか?

とりあえず落ち着いて、コンテンツ収入がどんな要素で成り立っているのかをKPIツリーで見てみる。KPI(重要業績評価指標)はKGIを達成するための指標だ。

このツリーを見れば一目瞭然、平均単価や購入率を高めればコンテンツ収入は向上するだろう。

また、平均単価(あるいはLTV)はコンテンツの価格を上げるか、商品点数を増やすことで高めることができる。しかし、価格上昇はファンにとって嬉しくなく、購入率は下がってしまうかもしれない。しかも商品点数を増やすにはファン向けコンテンツに留まらない企画やデザインなどが必要となり、本格的なEC事業として取り組まないといけない。

購入率はクーポンの配布やキャンペーンの実施で高められるが、一時的な施策で終わってしまう可能性が高い。特にグッズ購入やサブスクリプション契約の継続率向上を目指す場合、ファンエンゲージメントを高めるしかない。

それと、esportsチームのグッズ購入やサブスクリプション契約は生活用品や食品のように役立つわけではないので、応援の気持ちを持っていない層(フォロワー層以下)が振り向く余地はほとんどないと考えられる。

となるとやはり、ファン数を増やすのがよさそうだ。しかもファン数はコンテンツ収入だけでなく、スポンサー収入、あるいは報酬においても大事な要素となるため、一石三鳥なのである(平均単価や購入率はそうではない)。

ファンを増やすにはフォロワーを増やし、かつファン化率を高める必要がある。ということで、この2つの指標を主要KPIとする。

なお、フォロワーはTwitterやYouTube、TwitchやOPENREC.tv、LINEやFacebookなど、取り組んでいるゲームのプレイヤーがいる場所であれば何でもいい。Rush Gamingの場合はTwitter、YouTube、そしてTwitchがある。

認知の指標

以前の記事で書いたように、フォロワーを増やし、ファンを増やすにはターゲットにいくつかの段階を経てもらう必要がある。

この図の下から順にアプローチしていこう。施策については上掲記事内で書いているので、参考にしてもらいたい。【体験編】で掲載したカスタマージャーニーマップも再掲しておく。

【体験編】では最初、ターゲットはRush Gamingを知らなかったが、たまたま闘会議で開催された大会のレポート記事を読んで知ることになった。ここで大事なことは、チームが大会に出場していたことと、何らかの形(今回は優勝)でインパクトを与えられたことだ。

どのチームでも優勝できるわけではない。だが、オフラインでもオンラインでも視聴者に印象を残すことはできる。オフラインなら何かしらのパフォーマンスが考えられる。例えば以前、とあるチームが試合前に円陣を組んで掛け声を出していたのは印象的だった。会場や取材陣のカメラも「絵になる」その様子を捉えようとしていた。

オンラインならプレスリリースで出場を告知するだけでなく、主催・運営者やキャスターにチーム・選手の詳細情報(実績やスキルだけでなく、目標や憧れの選手、好きな食べ物など)や意気込みを伝えておくといいかもしれない。そうすれば、キャスターも気になって時間があるときに言及してくれる場合がある。

例えば、6月30日に行なわれたPUBG JAPAN SERIES βリーグの最終戦では運営のミスなどで次の試合までに長い空き時間が生じた。その際、キャスターのOooDaとSHAKAが「話すことがない」と漏らし、それをネタに話していた。もしそのとき出場しているチームから何らかの情報が提供されていたら、間違いなく言及されていただろう。この大会に限らず、そうしたチャンスはかなり多い。

このように、(ゲームはプレイしている)無認知層に対しては大会への出場とそれに伴う情報提供がとても優れた施策だと言える。配信試合に当たればラッキーだし、勝ち上がれば必然的に画面に映れる。さらに、試合が終わればゲームメディアがレポート記事内で言及してくれる。

加えて、大会は主催・運営者も観戦してもらいたいので、チーム情報をTwitterで紹介したり、ときにはインタビュー動画・記事などを作ったりしてくれることもある。この至れり尽くせりを活かさない理由はない。

なので、この段階での指標は「大会でのパフォーマンス回数」と「情報提供回数」にするとよさそうだ。

自分たちの行動回数を計測する自己責任型の指標なので、数値目標を立てやすい。情報提供によってどれくらいシェアや言及がなされたかを計測する他者依存型の指標を取り入れるかどうかはその時々による。

興味の指標

【体験編】のターゲットは大会でのGreedZzの活躍が印象に残り、彼のTwitterアカウントをフォローした。そしてチームのアカウントもフォローするのだが、その前に大会外で印象的な出来事に遭遇している。チームアカウントからの、自分のツイートへのいいねである。

この手法はフォロワーを増やす施策として多くの人が実践・紹介しているが、もちろんesportsチームにも役立つだろう。ターゲットにとっていいねされれば気になるし、ツイートしてくれるほど興味があるのだから、嫌な気持ちにはならないはず。

普通、ターゲットがタッチポイントで本当に接してくれるかは不確実で(プレスリリースやツイートを必ず見てくれるわけではない)、ターゲットのある程度の能動性が必要になる。しかし、いいね(もしくは引用リツイート)は仕掛ける側が能動的になれるタッチポイントであり、ディスプレイ広告のような押しつけがましさもない。むしろ好きになってもらう重要なきっかけとなるものだ。

それと、この段階のターゲットはまだチームや選手自身への関心は高くないので、ツイートや動画はゲーム内容に関連する情報が望ましい。そうすることでフォロワー数が増えていくと思われる。

そこで指標としては「攻略情報の発信数」と「いいねまたは引用リツイートをした数」の2つが考えられる(いまのところTwitterでのエゴサーチがよさそう)。

それに伴う再生回数やインプレッションでもいいと思う。関連するデータを蓄積すれば、どんな指標がフォロワー数の増減と相関があるのかも見極められるだろう。いいねはBOTで自動化もでき(いいね爆撃は避けたい)、かつ興味層の意見の吸い上げにも利用できる。

ファンの指標

皆さんも自分の生活を振り返ってみてほしいが、SNSで見かけた企業やブランドの公式サイトを訪れる頻度はどれくらいだろうか。僕は好きなブランドですら月1回もないかもしれない。SNSでほとんどあらゆることが足りるいま、公式サイトに誰がどのタイミングでどうやって訪れるのかは仮説を持っていたほうがいいと思われる。

【体験編】では、動画やツイートでチームや選手自身のことを知り始め、より深く知りたくなったターゲットが、チームのCWL(世界大会)出場のタイミングで公式サイトを訪れた(カスタマージャーニーマップでは「情報収集」にあたる)。

そしてサイトでRush Gamingに関する情報やスポンサー(パートナー)のことを知る。このとき、もしサイト内の情報が充実していなかったらどうなるか。せっかくわざわざ来てくれたターゲットに多くのことを知ってもらう機会を逸することになる。

そのため、サイトコンテンツの充実は当然として、どういう動線を作ってどの情報を見てもらいたいのかを設計する必要がある。Rush Gamingの場合、トップページをスクロールすれば選手の顔、最近の試合結果、創設の経緯、出場した大会、そしてショップの存在が分かるようになっている。さらに、グロナビの左端、「TOP」ボタンの横に「CWL×三井住友カード」というスポンサー特設ページへのボタンがあり、視線が行きやすい。

画像はRush Gamingの公式サイトから

それぞれのページ内のコンテンツも見応えがあり、フォロワーからファンになろうとしている人にとって嬉しい情報が多い。ただ、個人的にはグロナビの「BLOG」は「NEWS」のほうがページの内容を想像しやすいのではと感じた。チームの最新ニュースがどこで見れるのか、ぱっと見で分からなかったからだ(英語と日本語の記事が混ざっているのも少し気になる)。また、トップページの最下部にあるコンタクトフォームはグロナビにリンクがほしい。

※現在サイトはリニューアルされ、グロナビのリデザインを始め、訪問者がより情報を見つけやすくなっている。

サイトに関する指標はいろいろ考えられるが(それだけの専門家がいるほどだ)、まずは「フォロワー層から気軽なファン層向けのコンテンツの充実」を図り、「トップページの滞在時間やスクロール率」と「トップページからの遷移率(または離脱率)」あたりを指標にするといいかもしれない。

サイト内を多く閲覧・回遊してくれたということは、より強く興味を抱いてくれつつある(ファンになろうとしている)ということだ。もちろん「どこからサイトにアクセスしたのか」は分析して、誘導の強化なり改善なりを行なうべきだろう。

コンテンツの充実に関して付言すると、Rush GamingではCWLに参加したことをまるっとコンテンツ化し、写真や動画をたくさん掲載している。これは大会への出場自体が物語としてフォロワーやファンに楽しんでもらえるからであり、スポンサーへの貢献になるからだ。

前後するが、もちろん、そもそもサイトに来てくれるほど気持ちを高めるための情報発信が必要だ。それを計測するには「日常風景や人柄、考え方の発信数」という指標がいいだろう。

Rush Gamingはアメリカ滞在時にGreedZzがパンケーキを作った動画を公開するなど、チームや選手の日常風景を伝える情報も多い。このようにチームに関するあらゆる物事のコンテンツ化ができているチームはファンエンゲージメントを獲得しやすい(ファン化率が高まりやすい)と言える。

ここまでで、当初定めた主要KPIであるフォロワー数とファン化率を高めるための指標や施策が見えてきたと思う。こうなればコンテンツ収入を伸ばす足がかりができるだろう。

次項からは【体験編】の終盤を扱い、ファンにより積極的に応援してもらい、コンテンツ収入をさらに向上させるための方法を考えていく。

応援の指標

どのチームでもファンからの応援は嬉しいものだろうが、どういう形の応援が望ましいかは場合による。例えばハッシュタグをつけてツイートしてほしいのか、生放送を観てコメントしてほしいのか、大会観戦やイベントに来て直接声援を投げてほしいのか、それとも何かを手伝ってほしいのか。

ファンのほうは最初、どうやって応援するのが一番いいのか分からない。【体験編】では、ターゲットはチームが大会で負けたあとに生放送を観て、選手の気持ちに共感した。そして、チームからのグッズのお知らせを見て、それを買うことで応援しようとした。買ったあとはハッシュタグをつけてツイートもしている(Rush Gamingではたびたびハッシュタグをつけての投稿を促している)。

生放送については、言うまでもないがファンとの交流において重要な手段だ。特にコメントに反応することを重視すれば、より多くのファンを獲得できるだろう。

Rush Gamingはファンの現在の気持ちを想定し、適切なタイミングでチーム側から応援方法を提供した。このようにファンの感情が揺れるタイミングを狙い、状況に応じた応援方法を用意しておく必要がある。

どこに重きを置くかによって指標も変わるが、ファンが応援してくれていることを示す指標を設定したい。他者依存型の指標になるものの、「ハッシュタグつきツイート数」や「生放送の視聴者数、コメント数」などか。「初回コンテンツ購入数」もいいだろう(グッズやサブスクリプションなど)。

補足として、esportsにおいてはサブスクリプション契約やグッズ購入自体を応援と捉える場合が多い(つまりコンテンツ収入=応援量)。が、そうした応援方法はやや敷居が高く、次項で扱う熱心なファン層が中心になるだろう。

定着の指標

【体験編】のターゲットは最終的にRush Gamingのグッズを購入し、メルマガを受け取る。ポイントは、これにより熱心なファンがどれくらいいるのかを明確な数字で把握し、彼らと直接コミュニケーションする方法があるということだ。

ファン数は売上に直結するため、、絶対に何かしらの方法で把握しておかないといけない。ファンとはSNSのフォロワーではなく、熱心に応援してくれる人たちのことだ。彼らのことを把握するのに、例えばメルマガ会員やfaniconのようなサービスを使ったファンクラブ、Discordでのファンコミュニティ、Rush Gamingのようにグッズ販売しているならSTORE.jpを利用するなど、方法はいろいろある。

上記のようにRush GamingはSTORE.jpを利用しているが、STORE.jpではユーザーは購入しなくてもストアをフォローすることができる。そしてストアオーナーは購入者、フォロワー、リピーターのいずれかにメルマガを配信できる。

EC事業では多くの場合、まず会員登録してもらい、その人たちに役立つ、もしくは面白がってもらえるメルマガを届けてエンゲージメントを高め、商品を購入してもらおうとする。そして購入者に対して特典(次回クーポンや限定メルマガなど)を付与する。要するに、購入者という熱心なファン層と、その一歩手前の(購入にはまだ至っていない)気軽なファン層を区別し、両者に別々にコミュニケーションする。

しかし、Rush Gamingではグッズ購入者に対してのみにメルマガを配信している。この場合、STORE.jpに登録しフォローだけするインセンティブはない。積極的に登録&フォローを促しているわけでもないので、フォローだけしておこうという気軽なファン層の人はほとんどいないと思われる。

要するに、現状だと気軽なファン層と熱心なファン層を区別しづらいのではないだろうか。まさにあとひと押しでお金を出してくれようとしているファンの具体的な姿を知り、直接コミュニケーションすることができれば、より施策を行ないやすいと思われる(もちろん、僕が把握していないだけでその手法を確立しているのかもしれない)。

とはいえ、グッズ購入者やYouTubeのスポンサーなど、熱心なファン層に向けたイベントや企画が開催され、選手だけでなくオーナーによるファンとのコミュニケーションは盛んである。ファンを夢中にさせ定着させる施策が行なわれているので、必然的に購入率や平均単価、継続率も高まるだろう。

定着の指標としては、「ファンへの働きかけ回数」とそれに対する「反応数」、そして「コンテンツ購入の継続率」がいいかもしれない(もちろんもっと具体化すべきだ)。ただ、まずはファン数を把握し、コミュニケーション手段を確立することから始めたほうがいい。それができたら、ファン1人1人と(接する心持ちで)コミュニケーションを行なおう。

ファン同士のコミュニケーションも促進できるならなおよい。そうすることでコミュニティが形成され、ファンが知り合いを仲間に引き込もうとする。それは対象への愛着が高いほど盛んになると考えられており、計測するための指標として「NPS(顧客推奨度)」がある。通常はアンケートでどの程度知り合いに勧めたいかを尋ねる。

その先はどうなのか。一例を挙げると、Rush Gamingのファンがチームイベント(Rush Gaming Pop-up Store)内で自主的に企画を立案し、ファン同士でお金を出して実行しようとしている。あるいは選手のイラストを描いてくれたり、応援記事を書いてくれたり。ここまで来れば理想的だ。指標も「ファンによる企画数」など分かりやすい。

※Rush Gamingでは所属選手それぞれに対応したクーポンコードを発行し、選手からファンに自分のコードを使ってもらうよう促している。ファン数の計測、応援の可視化などの効果が期待できる、非常に練られた施策である。

ここまで議論しておいていまさらだが、最も意識しておかないといけないのはチーム・選手側からターゲットにアプローチするよりも、チーム・選手のファンやコミュニティから外に発信してもらえるような仕組みを作ることだ。

つまり、ファンがファンを作ってくれるような仕組みを作ること。チーム・選手はそのサポートをする存在にすぎない(グッズもファンがツイートするための仕掛けである)。「NPS」が重視されるのは、「ファンを作ってくれるファン」を数字で把握できるからだ。

ということで、以上を参考に自チームで戦略を立て、指標を設定し、どんな施策を実行するのがいいかを検討してもらいたい。【分析編】はこれで終わるが、足りないところがあれば補足してほしい。

どんな企業も売上の8割が2割のファンに支えられていると言うが、それはesportsにおいても例外ではないはず。なので、あらゆる機会を活かしてファン獲得に取り組んでもらえれば嬉しく思う。

最後に、指標を追加したカスタマージャーニーマップを掲載しておく。

※ちなみにWekidsのブログも面白い。

1人2役か、役割分担か

当然の疑問だが、いま議論してきた内容はほとんどがストリーマーにも当てはまるのではないか? そのとおりだ。そこで余談として、プロゲーマーとストリーマーの違いという深淵なるテーマについてまとめてみる(以前尋ねられて本人の意志次第と答えたが)。

冒頭で述べたように、プレイヤーの大会収入はあまりにも安定度が低い。そのため、リスクヘッジとしてファンを獲得し、それを収入に繋げる必要がある。

一方で、勝つための練習のほうが大事で、ファンサービスに割く時間がない場合もある。それはもっともだ。そういうとき、チームは選手とは別にストリーマーと契約する。実際、いまesportsチームがストリーマーを抱えることは当たり前になってきた。

これは1人のプレイヤーに選手(プレイスキル)とストリーマー(ファン数)の2役を任せるのではなく、別々の2人に1役ずつを持たせようとしているからだ。選手は大会で勝つことに専念し、ストリーマーはファン獲得に専念する。この分業が功を奏する場合も多いだろう(どういう契約内容にするかが問題だ)。

1人2役か役割分担か、チームによってさまざまだが、Rush Gamingでは1人2役の方針が採られているようだ。選手に大会で毎回勝ち上がれる実力が備わっているなら、そこで得られるファン獲得の機会(大会番組やメディアでの無料の露出)を最大限に活かせる1人2役のほうがいいだろう。逆に、これから成長していく(まだ勝ち上がりにくい)選手なら、ストリーマーとの役割分担のほうがいいかもしれない。

いずれにしろ、選手(プロゲーマー)にファンがいて損はない。選手だけが得られる機会を活かして収入に繋げるのは効率がいい。ぜひそのためにこの記事や一連の記事を役立ててもらえれば幸いである。

※誤解なきよう、儲ける・稼ぐというのは感謝の対価としてお金をもらうということ。

あるプレイヤーがesportsチームのRush Gamingファンになるまで【体験編】
商品としてのプロゲーマーをより魅力的にするための戦略と施策

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