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DMM GAMESから「プロゲーマー憲章」が発表されたので、夢の中で暗唱できるほど読み返したい

PJSを主催するDMM GAMESからとんでもないものが飛び出した。「PUBG JAPAN SERIES 出場選手の心構えについて」という、PJSに参加する選手がプロとしてどんな意識を持つべきか、何をすべきかをまとめた記事だ。

これははっきり言ってPJSや『PUBG』に関係なく、すべてのプロゲーマー、あるいはプロ志望者が何度も読んでその胸に刻み込まなければいけない内容である。

これまでいろんな人がいろんな場所で「プロたるもの~」を語ってきたし、Twitterではたびたび「プロとしての言動」が取り沙汰されてきた。しかし、この記事ほど簡潔で抜け漏れなくまとまっているものはなかった。

もはやこれを日本のesports業界における標準的な「プロゲーマー憲章」としたいくらい、すばらしい。

どの大会主催者も言いたくて言えなかったこと

これまで大会主催者は選手の言動にほとんど目をつむってきたし、よほどひどい場合以外は軽いペナルティで済ませてきた。例えば、PJSでも大勢の選手がプロとしての自覚のなさを原因としたペナルティを受けている(この発表だけで68名!)。

しかし、ルールやレギュレーションを破ったという「やらかし」を処罰するのは比較的容易だ。難しいのは、プロと呼ばれながら「何もしない」選手に対して、「自分でファンを作れ」と指摘すること。これまでどの大会主催者も、それを明言することができなかった。それはチームや選手が自主的に行なうことであり、大会主催者が介入すべきことではないと考えられていたからだ。

大会主催者が何もかもお膳立てしてくれて、そこに乗ればプロとして人気者になれる……そんな甘い世界ではないのは考えるまでもないだろう。

Rush GamingやPONOS Sports、野良連合などが大会のないときもあんなに積極的に活動しているのはなぜなのか? 選手自身がシーンを作り、市場を作るという意識がなければ、esportsなんてものはあっという間に萎んで「何かそういうのあったよね」と過去の遺物になってしまうからだ。

にもかかわらず、プロとしての自覚のない選手があまりにも多かった。やらかしてしまった選手のことだけではない。シーンのために、つまり自分のファンを作るために何もしようとしない選手も含めてだ。選手1人1人にファンができていくことによってこそ、esportsシーンは成長していくのに。

esports市場を育てていきたい大会主催者は、何もしない選手に対して一喝したいと思っていたことだろう。その点で、この憲章はあまりにも衝撃的で、そして優れている。目次と本文の一部を引用してみよう。

1.PJS出場選手になったら
PJSに出場するという事には大きな意味があります

2.PJSに出場するということは
あなたは日本のPUBGコミュニティの代表です

3. 単なる遊びから競技へ
プロフェッショナルになるには意識から変えましょう

4.選手としての立ち振舞について
日本だけではなく世界から尊敬されるプレイヤーを目指しましょう

5. 自分を魅力的に見せるためには
みんなに愛されるプレイヤーを目指しましょう
PUBGの楽しさはPJSに出場する事だけではありません。そのルールや制約を守ることが難しいのであれば、PJSに出場しないという判断も出来ます
”PJSに出演する”ということは”遊び”ではなく”仕事”ということです。出演に伴い、地元から東京へ行くのも遊びで行くわけではないはずです。

自分たちは仕事で試合会場へ行っているのだと意識してください。
選手は自分がPJSの出場選手であること、チームの所属プレイヤーであることを意識してください。

もし外部へ向けて議論を呼びそうな発信をしたいのであれば、事前にチームに確認するなど、正当なステップを踏むなど慎重さを身に着けて下さい。

大会主催者が選手に対して言いたくて言えなかったことが、この憲章の中に詰まっている。弊誌の読者にも、とにかく一読してもらいたい。

空気を言語化しないと伝わらない

プロとして生きていくなら、この憲章に書かれてある内容は当たり前のことだ。「言わなくても分かる最低限の常識」でさえある。それゆえに、「選手にもっと自覚してほしい」と異口同音の業界関係者も、選手やチームにはっきりそう伝えることはそれほど多くなかったのではないだろうか。

「当たり前のことだから」という空気はたしかに漂っていた。しかし、もはや雰囲気で伝えるコミュニケーションは通用しない段階になっている。新しいチーム、若い選手がどんどん参入してきているからだ。

「こんなことですら教えてもらわないといけないの?」と思う人もいるだろう。僕もそう思う。しかし、それほど選手層が多様化し、また人数が増えていることの裏返しでもある。だから、選手を中心としたエコシステムを作ろうとしているDMM GAMESによって空気が言語化されたのは、実に喜ばしいことだ。

本来ならもちろん、JeSUが率先して掲げるべき内容ではある。いまからでも遅くないので、JeSUには何かしら対応してもらいたい。プロライセンスだオリンピックだの前に、esportsシーンの最も中心にいる選手がどのような意識を持ち、どのような態度で臨み、どのような覚悟で生きていくべきなのかを示さなければならない。それこそ、プロゲーマー憲章として。

プロ意識を高めるための啓蒙は、先にも書いたように、本当はチームやそのマネージャー、オーナーがやるべきことだ。だが、DMM GAMESがこの憲章を発表したということは、多くのチーム、そして選手が大会主催者のビジョンに追いつけていない現実があったからだろう。

2018年にもなって国内最高峰のリーグの1つであるPJSからこんなものを発表しなければいけないこと自体には悲しいものがある。僕自身もこんな当たり前のことをいちいち記事にするのはめんどくさかったし、興味もなかった(だからプロ意識についての記事は書いたことがないし、弊誌を読みに来てくれる人にも必要なかっただろう)。

しかしまあ、ここから始めていけばいいだけだ。だから、みんなでこのプロゲーマー憲章を読んで、常識にしていきたい。

愛されるファンになる具体的な方法は?

DMM GAMESが「みんなに愛されるプレイヤーを目指しましょう」と言ってはいても、愛されるプレイヤーになる具体的な方法まで教えてはくれないだろう。そこで弊誌の記事を役立ててもらえればいい。

もしすべてのプロリーグに出場しているすべてのチームと選手がこのプロゲーマー憲章を土台にして活動すればどうなるのか?

その想像こそDMM GAMESを始め、esportsに取り組むあらゆる人たちが目指している世界だ。そしてその世界は、誰より選手自身に代えがたい価値をもたらすだろう。

※2019年9月4日追記。この記事から1年経ったが、残念ながら事態はあまり改善していないようだ(PJSseason4 PaR Day2 におけるペナルティ報告)。

しかしながら、この報告記事にあるコメント「今後もこのような、円滑な大会運営を妨害する選手がPaRに出場する状態が続くようであれば、参加チーム数を制限したり、ルールの厳格化、PaRに出場する際に誓約書を交わすなどの対応策をせざるを得ません。」にはPJSが根強くプレイヤーに期待し、よりよいプロシーンを作っていこうとする気構えが見られる。プレイヤーのみならず、観戦者やファンとしてもその期待に応えていきたいところだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もしよかったらスキやフォローをよろしくお願いします。