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新たなステージへと旅立つ君に 森からの祝福と加護あれ

先週の今日は下川中学校の卒業式でした。小規模校ということで中止にはせず、卒業生とその保護者、教職員と町長・教育長・PTA会長という構成で。

PTA会長の祝辞は自分の中学生の頃のエピソードと思っていたのに、祝辞を壇上で述べるのはPTA会長だけになって一気に重責に…

どんな内容にしたらいいか、相当に悩みました。

何か軸を見出すべく、今回の卒業生の生い立ちを振り返ってみると

下川がSDGsで注目されるようになった起点に生まれた子たちだと気づき、そういえば自分が森の幼稚園的な活動のガイド役で一緒に森に行った子たちだったなぁと感慨深く。

そして、森林環境教育の目的って、森のエキスパートを育成することって矮小化されやすいけど、もっと伸びやかでインクルーシブなものなんだよー!と伝えたくなり。

1週間経って読み返してみると手直ししたいところもありますが、印刷して蛇腹折りにした原文コピペで公開します。

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祝辞

卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。非常事態の中で卒業式はどうなるんだろうと不安に思っていたことでしょう。

今日この日を迎えることができたのも、校長先生を始めとする教職員のみなさまが陰になり日向になり支えてくださったおかげです。保護者を代表して心からお礼申し上げます。

多くのご来賓にご臨席いただくことは叶いませんでしたが、町長・教育長を始め、子どもたちが育つ環境づくりにご尽力いただいているみなさまに感謝の気持ちをお伝えします。

さて、まずはこの非常事態について触れないわけにはいかないでしょう。昨日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスの感染拡大を世界的な大流行状態「パンデミック」と認定しました。

義務教育を修了したみなさんはこの状況にどう対処しますか?国や自治体のトップが要請を出すのを待ち、右に倣えで従いますか?子どもは感染しても重症化はしないからと外出しますか?トイレットペーパーが売切れるとか納豆が予防になるという噂に流されて行動しますか?

こういう時こそ、できる限りの情報を集め、自分たちの頭で冷静に考え、決断・行動する。そういう力が試されます。みなさんの力を総合的に発揮しなければ解けない高度な応用問題です。でも、みなさんなら対処できると思っています。

ここでみなさんが生まれた頃を振り返ってみましょう。今の下川町を語る上で欠かせない出来事がありました。

全国が市町村合併で揺れている中、下川町は合併しない決断をし、2004年に地域自律プランを策定しました。その中で、自然・社会・産業が調和した美しく豊かに続いてゆく持続可能な社会を目指すことを示しました。今、世界が目標としているSDGsへとつながるビジョンです。

そして、2005年には五味温泉に町内初の木質バイオマスボイラーを設置し、持続可能な社会の小さなモデルとして下川町は評価をどんどん高めていきます。

さらに、2006年にはNPO法人森の生活が国の事業を受け、幼児を森に連れて行く活動を始めました。そこから幼児・小学生・中学生・高校生まで一貫した森林環境教育へとつながり、みなさんの多くは幼児の頃は毎月、小中学校では一年に一回、森に通いました。

その中で何を学んだのか。森林というテーマを通じて、自然・社会・産業、そして自分自身がどのようにつながっているのか、それを体感的に、そして体系的に学んできたはずです。

そんなみなさんなら、世界的なつながりの中で起きているパンデミックに対し、世界の未来は自分の行動次第だと考え、適切に対処できるはず。

毎年のように異例な出来事が起きる変化の激しい時代、正解のない時代に、答えのない問いを問い続け、仮説と検証を繰り返しながら、より良く生きていけるはず。

私たち大人はそう信じていています。だから自信を持って、下川中学校を卒業したことを誇りに思って、新たなステージへと向かってくさい。

保護者のみなさまにおかれましても、お子様の義務教育からの卒業おめでとうございます。

また、これまでのPTA活動へのご協力、本当にありがとうございます。

AIなど今までの社会を全く違うものに作り変えてしまうテクノロジーと共に生きていく私たちは、大人と子どもという関係をも作り変えなければならない世代かもしれません。

子どもたちは、正解のない時代を共に歩んでいく仲間、あるいは最先端のテクノロジーを教えてくれる先生になっていくのでしょう。

最後にあらためて。今日ここから新たなステージへと旅立つみなさん一人一人の未来に森からの祝福と加護あれと心からお祈りして、私の祝辞とします。

本日は本当におめでとうございます。

令和二年三月十三日

下川中学校PTA会長 奈須 憲一郎

バーカウンターで「あちらのお客様からです」ってあこがれます。