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短歌

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作った短歌です。
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冬の果て

「冬の果て」 ナタカ

お守りのような軽さのしろたえのマスクの箱を抱えて帰る
風の出ないジェットタオルの静けさよ海より遠い約束ばかり
変わらないことだってあるゆひらって言えば雪のことかよと言う
何と戦えばいいのか分からないままでとにかく勝てと言われて
立ち尽くす私のそばを一陣のウーバーイーツすり抜けていく
#tanka

「あみもの」第三十七号に載せていただいた連作です。

連作 無題

連作 無題

大縄に入る瞬間息止めてそれからずっと息止めたまま

ちから出ない、ちから出ないのにあたらしい顔もジャムおじさんも来ないね

半袖の心もとなさ夏風の中をどうして歩けばいいの

まちがいのような快晴だねひとりよりもふたりの方がさみしい
#tanka

私家版『ドラマ』の通販について

昨年の7月に『ドラマ』という私家版の歌集を作りました。
通販サイトboothで自家通販をしていたのですが、現在庫がなくなり次第販売を終了します。

私家版ということでもともと永続的な販売は考えておらず、在庫も程良く減ってきて、作ってから一年ちょっとというこのタイミングがちょうど良いのかなと思いました。

葉ね文庫さんやがたんごとんさんというすてきな本屋さんに置いていただいたり、文フリで委託販売をし

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天坂さんといちごつみ

1月26日、天坂さんといちごつみを始めました。天坂さんは主に、天坂寝覚というお名前で自由律俳句を作っておられる方です。
10首完結、奇数が天坂さん、偶数がナタカです。
振り返り。

1. 青空を知ることもなく骨だけになってしまった傘を弔う/天坂

→かっちりしたのが来た!天坂さんの歌は固体・液体・気体でいうと液体っぽいと思うのですが、これは固体っぽい(何言ってるのか分からなかったらすみません。雰囲

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桔梗さんといちごつみ

桔梗さんと100首でいちごつみをしました。
奇数がナタカ、偶数が桔梗さんで、桔梗さんの歌にいくつか感想をつけています。
(桔梗さんは旧仮名、私は現代仮名で詠んでいるので単語の表記は変わってます。)

1. 風の背を追う人だったいつだって先頭をゆく人だったから

2. はじまりと終はりの夏が過ぎてゆく 翼などない背骨が軋む 【背】

3. 翼持つものになりたいきみひとりくらいをちょうど包めるような 

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自選30首

●自選30首が流行っているようなのでやってみました。

ただボタンひとつ外したそれだけできみはそんなに女になって

お客様さま起きてください終点です 晴れた夜ですまだこの世です ※うたの日「です」

るるるると電話が鳴るけど今ちょっと泣いているるる出られないるる

結婚の知らせばかりを聞きながら星の綺麗な離島に暮らす ※うたの日「結」

7の背をちょっと反らして書いてみるこれがあなたの書いている

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連作「鉄は熱いうちに打てと言うから」

連作「鉄は熱いうちに打てと言うから」

タイトルが雑ですが忘れないうちに20首。

「鉄は熱いうちに打てと言うから」 ナタカ

四時はまだ夜だと思う止まらない誰かの咳を遠くに聞いて

朝五時の駅で大縄飛びをする人にはFacebookが似合う

守るべきものはなくても言われるがままにシートベルトを締める

離陸する瞬間ふっと息を吐くような機体の震えがあった

小雨降る北口を出てさまよえばこんなところに魚民がある

バス停のすぐそばに海かん

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連作「海行き」

「海行き」

もう決めた私ひとりで海へ行く異議のあるひと はい、いませんね 

五時間もかかるんだって仕方ない七時にアラームをセットする

17駅目で乗り換えて40分待ってそれから赤い急行

いくつものいくつもの駅ああこれはひどくおだやかな走馬燈

今のたぶん無人駅だね目覚めたら忘れる夢に出てくるような

海は終点 海のにおいと海のおと漁船がしんとしている港

敷き詰めた光のような暗闇でくらげは淡

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連作「春の失踪」

この街のどこかに生きているはずの冬を探して歩き続ける

人間が群生するって僕以外全員知ってたらしいんだよね

オオイヌノフグリの海を渡り切ることができたらそのとき会おう

遮断機の上がる明るさ僕だけが撥ねられそうなこれが春かよ

満開の桜を撮れば分かち合う人がなくても満開である

踏み出した足がたたらを踏むたららたんぽぽお前のせいだよ全部

陽だまりに絡めとられてもうこれはこれは明るい春の失踪

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#7days100tanka

2017年2月13日から19日まで、7days100tankaに挑戦しました。ルールがあるのかないのか分からなかったので、目についた単語で題詠をするのはNGというルールを勝手に作ってやりました。
なんとか終えられて良かったです。

01 定期券など捨てていけ水色のカードなんかでどこへ行けるの

002 片方の靴下だけが攫われて洗濯ばさみよく揺れている

003 断捨離のしゃりがだめだよ燃やされると

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連作「僕たちは付き合ってなどいない」

簡単に食べられないと言う人の肩の細さは僕にないもの

これはたぶんあれだニベアの青缶だ僕は使っていないんだけど

星座とか星の名前を知らないで綺麗きれいと言ってばかりだ

一呼吸分の隙間を空けながら並んで座ることに慣れてる

恋人がいない話をしたあとでなんで虫歯の話をするの

寒いねと言えばそうかなとか言って君はピジョンを捕まえている

手袋を失くしちまえよそうすれば手を繋いだり(できないくせに)

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うたの日

インターネット歌会サイト「うたの日」に300首投稿したということで、過去に出した歌を読み返すと懐かしかったので、いくつか並べてみます。
上手く作れた自選というより、思い入れがあったりお題が印象的だったり、そんな理由であげた歌も多く、なんというのか、おもひでぽろぽろです。

白和えの甘みとやさしさ足りなくて苦いばかりの春の野にいる
(2015年4月16日『白』)※初参加

駅前のスーパーの明か

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連作「いるか座」

「いるか座」ナタカ

いるか座が呼んでいるって出て行ったきりで全然帰ってこない

四等星以下の人たち手を挙げてすぐにいるかにしてあげるから

切り傷に気がつかないで眠ろうとすれば傷から溢れだす星

胸に星、不時着したんだってねえどうだきれいな炎だったか

尾が空を叩けば星が散り散りになって同心円のかなしみ

2016.8.3

いるか座は夏の星座だそうです。

連作「キューブ!」

「キューブ!」ナタカ

ルービックキューブの緑が揃ったら葉脈をゆく舟に乗り込む

ルービックキューブの白が揃ったら解答欄を埋めないでおく

ルービックキューブの青が揃ったら青春を思い出せる(出さない)

ルービックキューブの橙揃ったらゆうやけを理由にして会いたい

ルービックキューブの黄色が揃ったら檸檬だもんね!丸善へ行く

ルービックキューブの赤が揃ったら愛情だったような気がする

2016.7

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