連作「鉄は熱いうちに打てと言うから」
タイトルが雑ですが忘れないうちに20首。
「鉄は熱いうちに打てと言うから」 ナタカ
四時はまだ夜だと思う止まらない誰かの咳を遠くに聞いて
朝五時の駅で大縄飛びをする人にはFacebookが似合う
守るべきものはなくても言われるがままにシートベルトを締める
離陸する瞬間ふっと息を吐くような機体の震えがあった
小雨降る北口を出てさまよえばこんなところに魚民がある
バス停のすぐそばに海かんたんに分かるだなんて言ってくれるな
辿り着くことのできない灯台をそれでもずっと見上げてしまう
みさきとは明るい人の名のようで岬から見る海の険しさ
申しわけ程度の柵で十分に食い止められている希死念慮
北口に西と東があるという知らない街の知らない駅は
朝もやのようなパラフィンやわらかく古書に呼ばれたような気がする
何を目指してなんて聞かれて一言も答えられないことの悔しさ
今日見たものの中で一番明るいと思う青鬼ピルスナー飲む
何を見るための目だろう曖昧な歌を作って満足をして
まっすぐに歩けば駅があるはずで本当に駅だよくできました
曇りのち雨のち曇り強く雨 傘をさすことには慣れている
四分音符散らばるようなぎんなんを踏まないように行きたいけれど
青空を見たから終わりこの旅は雨で始めた旅だったから
ひとり客連なっていて人はみなひとりであると錯覚をする
こんなにも自由でこんなにも不自由、暮らしへ押し戻される暗さよ
2017.11.11
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