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異世界難民 ID:150000

あなたの目の前には女神がいる。

「おはこんばんちはー! ようこそ、ここは領域a。本来あなたのようなちっぽけな人間には、輪廻転生を幾度と迎えようと決して訪れることのできない神秘にして高次元の神の庭です」

あなたには何を言っているのかちっともわからないだろう。

「ああいいんですよ、あなたの理解は求めていません。それよりも本題に入りましょう。あなたは不慮の事故で死亡しました。そして私はそれを見過ごせませんでした。ですのでこれから異世界へ転生してもらいます。赤ん坊に生まれ変わるわけではないので、厳密に言えば転移ですけど。もしかして『最近よくある異世界転生って奴』と考えました? 話が早いですね! 何かご質問は?」

あなたには色々と疑問が浮かぶだろう。

「でもざーんねん! あなたに答えてあげる義理もありませんし、時間もありません。チート能力を与えるでもないですし、剣と魔法のファンタジー世界と理解していただければそれでいいんです」

あなたは光に包まれながら浮遊感を覚える。

「ではお気をつけて異世界転生ライフを満喫してくださいね、15万人目のあなた」

あなたの眼の前の女は美しく微笑んでいる。

「ええ、15万人ですよ。地球上で1日に死ぬ人間の数。その全ての命を掬い上げて、いえ救い上げて、全員を異世界転生するんです。
交通事故や天災や病で倒れた人も、飢えで死の淵にある人たちも、起こる必要のなかった紛争で死ぬ人たちも、みんなみんな同時に転生させてあげます。
もちろん優良サービス、裸のまま世界に放り出すわけにはいきませんから死亡時に身に着けていた装備は引き継ぎです。ヘルメットや防弾チョッキ、もちろん自動小銃や弾倉やグレネード、戦闘機戦車も持ち込み自由です」

あなたの視界は真っ白に染まる。

「ようこそ、暴力と混沌、剣と魔法、血と硝煙の織りなす阿鼻叫喚の異世界、ナーロッパへ。15万人目のあなたの活躍をお祈りします」

【続く】

私は金の力で動く。