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学術会議が同意無い性交のみで犯罪化する提言というのが暴挙である理由

11月10日にこんな記事が。

日本学術会議の提言は9月29日付のもの

同意の無い性交罪1

「同意の有無」を中核に置く刑法改正に向けて―性暴力に対する国際人権基準の反映―令和2年(2020年)9月29日

なぜ、9月末の提言が11月中旬になって報道されてるんでしょうか?

意味が分かりません。

刑法の専門家が少ない

この提言には法学者が名を連ねていますが、刑法の専門家がほとんど居ないということが弁護士から指摘されています。

内容を見ても、既存の議論を無視したもので、なぜ令和2年の今更こんな内容のものが出てきているの?という類のものです。

法務省で刑事法の性犯罪規定の検討が進んでいる

刑事法における性犯罪の規定については、既に法務省で検討が進んでおり、そちらの方が議論としては充実しています。

性犯罪に関する刑事法検討会

網羅しきれていないと思いますが、監護者性交等罪の事実認定・「不同意性交罪」の創設に関して・「暴行脅迫」や「抗拒不能」等の既存の構成要件の内容の吟味・「性交同意年齢の引き上げ」・量刑の見直し、などが議論になっています。

不同意のみを要件にしようとする日本学術会議の愚

不同意性交等罪

日本学術会議の提言は暴行脅迫や抗拒不能などの既存の要件を「はずすことが必須」とまで言い、同意の有無のみを構成要件とし、認定にあたっては他の細かい考慮要素で考える、という方針を取っています。

こんなバカな話はありません。

法務省の議論でも出ていますが、「同意が無い性交」の中には暴行脅迫を伴うものもあれば状況を利用して性行為について「同意」せざるを得なくさせる場合や同意があると誤信したようなケースまで様々であり、それらの行為の悪質性の違いからは法定刑を変える必要があるのに、「不同意」だけが構成要件だと量刑を軽微なものにせざるを得ない、と指摘されています
※罪刑法定主義の観点からはそうならざるを得ないだろう。

不同意性交罪を2018年に創設したスウェーデンの当該規定の法定刑は,「2年以上6年以下の拘禁刑」です。スウェーデンの実際の規定は "gross rape of a child "の場合に5年以上10年以下の拘禁刑にするなどの加重規定がありますが、学術会議の提言にはこうした視点はありません。
※日本の刑法177条強制性交等罪の法定刑は5年以上の有期懲役(加重すれば上限は30年)

他のところでは、不同意を構成要件にすると「不同意の認識」という構成要件的故意が必要であるところ、これでは現在問題視されている事例の解決にはならないという点も指摘されています。

私個人としては、現行の「暴行脅迫」や「抗拒不能」要件が狭いので、より広く認定できるように解釈や認定の運用を変えたり、別の言葉で要件を設けるなどして法の隙間を埋めるといった方向性が好ましいと思います。

学術会議の「提言」は、「この時期になってこの程度かよ」という以上の何物でもありません。ですから、何かやったフリをしている、別の目的があるのではないか?ということを疑うわけです。

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