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「過ちは繰り返しませぬから」の主語は、名実ともに全人類になった:広島原爆慰霊碑

ここに慰霊碑文言論争に終止符が打たれた

「過ちは繰り返しませぬから」の主語

広島原爆慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という言葉が刻まれています。

これに対して「主語は誰だ?」という疑問があり、また右翼系からは「日本人の過ちであるなどと転嫁するな!」といった反発があり、慰霊碑の文言を変更乃至削除を求める声がありました。

従前、広島市は以下のように説明していました。

広島市 原爆死没者慰霊碑には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれていますが、どういう意味ですか?

原爆死没者慰霊碑(公式名は広島平和都市記念碑)は、昭和20年(1945年)8月6日、世界最初の原子爆弾によって壊滅した広島市を平和都市として再建することを念願して設立したもので、ここに眠る人々の霊を雨露から守りたいという気持ちから、埴輪(はにわ)の家型に設計されました。中央の石室には原爆死没者名簿が納められており、石棺の正面には、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれています。この碑文は、すべての人びとが原爆犠牲者の冥福を祈り、戦争という過ちを再び繰り返さないことを誓う言葉であり、過去の悲しみに耐え、憎しみを乗り越えて、全人類の共存と繁栄を願い、真の世界平和の実現を祈念する「ヒロシマの心」が刻まれているものです。

ただ、それでも「原子爆弾の被害を受けた日本が入ってるのはおかしいのではないか」のような反論もありましたし、「実際上は日本人のみがこの碑文の名宛人となってるという機能しかないのではないか?」といった疑問がなおも潜在していました。

が、それももう、昭和・平成の時代の過去のモノになりました。

名実ともに全人類が主語になった広島原爆慰霊碑

2023年5月19日、G7広島サミットにおいてG7首脳が原爆資料館の視察を終えた後に広島原爆慰霊碑に献花をしました。

「敗戦国」の日本・ドイツ・イタリアに並び、「戦勝国」のイギリス・アメリカ・フランス・カナダも、同時に。

名実ともに、広島原爆慰霊碑の主語が【全人類】であると言えるようになった歴史的瞬間です。

個別に以下のようなメッセージもありました。

爆風ではなく「閃光」とあるのは、通常爆弾との違いが意識されており解像度の高さが伺えます。最後には「繰り返さない」という言葉もある通り、慰霊碑の趣旨に則ったものであると言えるでしょう。

明白な事実ですが、イギリスは原爆を投下した主体ではありません

その国の首相が、「繰り返さない」と言っている。

人類社会全体に対する責任を共有

人類社会全体に対する責任を共有しているということ。

したがって、「原子爆弾の被害を受けた日本が入ってるのはおかしいのではないか」のような受け止めも、もはや解消されたと言ってよいでしょう。

日本国も、国際社会の秩序を作り・守る側になったのだと。

儀式・行事だと言えばそれまで。
直接的な効果や実利があったのかと言えば、現段階では不明です。

しかし、こうしたメモリアルな展開に潜むメッセージ、その国の、人間の意志というのは、こうした事の積み重ねで醸成されていくのでしょう。

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