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反出生主義って? -夏田の書見-

反出生主義―人間をはじめとする感覚のある存在は生まれてくるべきではない、または生まれるべきではなかったとする思想。
   …何言ってんの?と思った人、ちょっと分かるかもと思った人、全く想像出来ないやって人。様々かと思います。
   今回は「ただしい人類滅亡計画―反出生主義をめぐる物語」という本から少し考えてみようと思います。ちなみに著者品田遊氏はあとがきで「自分の意見を持つ必要はありません。」と残していますが、それを省くと書けなくなるので『現時点の』私の考えを少しだけまとめることにします。どうか御理解を。


1 この本のあらすじ
   この話はまず魔王、そして召使いの2人の会話からスタートします。
   要約しますと魔王は人類を滅ぼすためにこの世に生まれてきた。だがそのことに納得いかない魔王。そして魔王は1つの会議を開くことにします。そう、それこそがタイトルにもあるように人類滅亡会議なのです。
人類滅亡会議に関するルールは4つ。

① これから「人類を滅ぼすべきか否か」を話し合う。
② 結論が出たら魔王にその内容を申し出る。
③ 魔王は結論を受け入れ、その通りに実行する。
④ ただし、結論が理を伴わない限り、それを認めない。

といったものです。これを10人で話すわけですが、その10人の内訳は下記をご覧下さい。

といった愉快な仲間たちと話は進んでいきます。果たして魔王の結論は…といったのがざっくりとしたあらすじとなります。

 2 皆は何色?
   さて皆さんの考え的にはどの人に近いなと思ったでしょうか。直感で構いません。…といっても難しいですよね。私も上記だけじゃあ何も言えないのですが(笑)

   ただ、「この人の考えって…?」という疑問符のつく人はいたんじゃないでしょうか。勿論、ブラックの反出生主義者というのは分からないと思います。まぁ分からない、知らない、理解できないことを考えるのが本の醍醐味でもありますのでね。当然です。それを除いたとして、自らの経験を生かした上で疑問に思った考え、ありませんか?

   私は2人いました。
イエローとホワイトです。私の生きてきた上での考えである楽観主義=リスク軽視気味、そして教典原理主義に関しては寺社に行ったら手を会わせる程度の信心の薄い私からすればこの2つの「主義」がどうも根拠としては薄いんじゃあないのかと思えたのです。

   だからといって彼らが全て間違えているのでしょうか。それにはNOと言わざるを得ません。この人たちにはこの人たちなりの考えがあり、この本を皆さんが読んだとしても私と同じ考えになるとは限らないでしょう。十人十色とはよく言ったもので皆描く「色」は異なるからですね。

   ここまで読み手によって答えが異なる本を私は初めて読みました。本の中のエンドは1つでもエンドは読者の中に無数に存在するのでしょう。

3 なんで人類は「滅びるべき」なのか?
   それって本当?

   (ここから先は盛大なネタバレを含みます。この本を読む方はここらでお別れした方がよろしいと思います👋)




   さて、この人類滅亡会議はブラックの話中心に進むことになります。人類が滅びるべき理由、それは
「他人に苦痛を与えないという義務に基づいた道徳的な主張」
と言うものです。一見何かおかしいように思えますが、「善」の中で最優先されるべきもの(義務)を「悪を引き起こさないこと」とし、
また、悪を引き起こすことは最も罪である、「善」をこの世界で一番重要なものとする、(道徳的)と考えると矛盾は消えていきます。
   しかし、今日においてこの思想が広まらない理由をグレー(唯一◯◯主義を掲げない者)はこう述べています。
   「たかが罪なんだよね」

   義務を守らないことは罪だが、多少の罪が重なってこの世界は成立していること、そして道徳は時によって破られるものだと説いたのです。…どんでん返しですよ。でも確かにそうですよね。
   
   しかし、この話で面白いのは同時に多少の罪が重なっているこの世界を悪とするならば、道徳を時より無視すること自体が悪ならば、ルールこそ全てと考えを曲げないのならば、やはりブラックの主張も正しいように思えるよう作られているところなんですよね。私にはまだ人類を滅ぼすべきか否か結論を出せそうにありません(笑)

4 最後に
私は何が「善」で何が「悪」なのかは分かりません。実は私の中では「善」でも世間では「悪」だと評されることもあるのかもしれません。でも、私はこの反出生主義を知り、新たな視点を開けたこと、また自分の知らない思想に触れようとする前向きな姿勢を身につけられたことにはこの本に敬意を表したいです。よければ是非読んでみて下さい。

   また、スキやフォロー、拡散等もしていただけますと有難いです。読んでいただきありがとうございました。

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