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行政書士になるところから今まで、これから

行政書士って何やってるんですか?行政書士を目指そうかと思うけど実際どんな感じですか?と聞かれることが多いので、noteにする。今は現役で6年目に入ったところだ。

行政書士になるまで
まず私が行政書士になった経緯だが、法学部法律学科を卒業しているものの、学生時代は塾講師のアルバイトに熱中していたためほとんど勉強していなかったに等しい(おい…という感じだが実際GPAもひどかったし、単位もいくつも落としたことがある。おいおい…)。

4年になってから就職を考えたとき、たまたま誘われて行った国家公務員のOB説明会でその職に憧れ、公務員試験の勉強をし始めてからがようやく本格的な法学の学びであったと思う。

このとき、公務員系の問題集は各種試験の過去問から作成されていることが多く、ひたすら問題集を回す中で何度も行政書士試験の問題に出会っていた。意識はしていなかったが、これが後の試験に役立つことになる。

結局国家公務員には落ち、一般企業へ入社した。その後社労士の母に合流をしてから、資格がないとダメだなと思い行政書士を受けたのである。25歳という若さもあって、経営者相手に話せるポジショニングができなかったのだ。資格があるというだけで実際すんなり受け入れられるようになったので、大きなものなのだなぁと実感した。

試験自体は昔取った杵柄という感じで、過去問を3年分回して合格した。とはいえ2ヶ月くらいしかなかったので、180点で合格するところ186点というギリギリの滑り込み。受かれば何でも良いということにしよう。朝読んだ条文が記述で出たので、そういうところはラッキーだったなと今も覚えている。

行政書士になってから
ちょうど事務所を移転しようという話をしていたので、1月に合否が出てから実際開業したのは半年後の7月だ。行政書士は試験に受かったら、開業をするにあたり各都道府県の行政書士会に登録することになる。6月に手続きをして、2014年7月1日付で開業となった。

開業したところでもちろん仕事はない。まずはホームページを整備したり、名刺を作ったりというPRの準備をした。社労士事務所併設なのがうちの強みだ。最初の1年は母に引っ付いて、ひたすらにいろんなところへ行った。顧客訪問に同行し経営者の考えを勉強、誘われるセミナーや交流会にはどんどん顔を出す。接待交際費が膨らむのはもちろん仕方がないが、1年目はとにかく関係づくりを徹底した。

お金はどこから出てきたかというと、開業に伴い創業融資を使った。そのとき女性・起業家なんとかみたいな名前だったと思うが、公庫のものを使い、半分は利子補給で市から返ってくるというありがたいものである。金額的には200万を借り(自己資金分があるため実質180万)、数ヶ月後から月7万くらいの返済が始まった。ひとつ失敗したのは途中で三鷹市から武蔵野市に移転したため、利子補給を満額もらえなかったことだ。考えている方は注意したほうが良いと思う。

セミナーや交流会に参加するうちに、2つの大きな繋がりが生まれた。士業・専門家関係の繋がりと経営者の繋がりである。だいたいイベントごとにはこの2種類の方々が入り混じるのだが、ものによって配分が変わるイメージだ。専門的なセミナーであれば士業ばかりになるし、交流会でも経営者が多めで士業が少ないとか、そういうことになる。

参加していくうちに分かったのは、両方の繋がりがとても大切だということだ。困ったときお互いに相談し合えるのが専門家同士の繋がりだ。本当はお金がかかるようなことを、飲み会の中でざっくばらんに話し合ったり、議論したりする。私も当時から何度も助けてもらった。パソコンの画面がここから進まない…なんていうので電話したこともある。資料をくれたり、快くアドバイスしてくれたりする方が多く、いまだに会うと当時の気持ちを思い出すほどだ。

そしてもうひとつの経営者との繋がりは、学びになるというのはもちろんだが、やはりここは営業の場となる。この5年、周囲で廃業する士業の方を何人も見てきた。ただ開業していても仕事が来るわけではない。行政書士で言えば、全国に5万人もいる(女性はそのうち15%くらいしかいないので、法学部のときと同じ光景だなぁと思ったりもする)。どこに行っても誰かいる、そんな感じなのだ。どうやって自分のウリを作っていくのか、PRしていくのかが日々試されている。

私が思うルートは主に2つだ。交流会などに参加するところから繋がり、そこから紹介を得ていく。それか、強いホームページを作るなどして集客する。どちらも一長一短だが、それぞれの戦略で2つを組み合わせていく。私は主に前者だが、たまにホームページからも成約することがある。そんな配分だ。女性2人の事務所ということもあり、最初はなかなか見知らぬお客様というのが難しかった。事務所のセキュリティも必要、電話でよく分からないことを言われることもあった。紹介だからすべてが大丈夫かということもないが(行政書士はよくブローカーから狙われている。例えば偽装結婚によるビザ取得…)、顔の見える関係というのはひとつ安心感があると言えるだろう。

そんなことからこれまで割合にご紹介をいただくことで成り立たせてきた。子どもが生まれてからというものだいぶおとなしくしているが、最初の3年くらいは週3くらいで交流会に出ていた気がする。今考えればなかなかな体力である。お酒を飲むのと美味しい料理をいただくのは好きだったので、この間いろんなところへ行けたのは良い思い出だ。

行政書士の仕事
行政書士の業務は多岐に渡る。とかく幅が広いと言っていい。簡単に言うと、弁護士や税理士、司法書士などがやらないところを全部やるみたいな。それぞれに法定の独占業務というのがあるのだが、そこから外れるものは全部行政書士がやるというようなイメージである。各省庁の手続きがあまりにも幅広いため、どこの独占にもなっていないものがたくさんある(これはどこの士業の業務?みたいな解釈上もめていたりするものを業際問題という)。私がこれまでやってきたものを簡単に並べてみる。

・法人設立手続き(登記はできないので定款認証まで、ここでも提携の弁護士さんに登記をお願いすることが多く、繋がりが役立っている)→公証役場、法務省
・建設業の許可手続き→東京都
・産業廃棄物収集運搬業の営業許可手続き→福島県
・介護タクシー業の営業許可手続き→陸運局
・酒類販売業の営業許可手続き→税務署
・定款変更
・業務委託契約書の作成
・一般社団法人の内部規約作成

個人のお客様からはこんな仕事も。
・遺産分割協議書の作成
・離婚協議書の作成
・金銭貸借契約書の作成

というように非常に多岐に渡るのが行政書士の特徴だ。うちは社労士もいることから、初めから法人関係の手続きが多かった。最初に受けた依頼も法人設立である。何が初めてになるかで、その後の道が結構決められてくるのではと思うこともある。1つ1つやっていくことで自信になるため、同じ業務は営業しやすく、堂々と話せる分成約に至りやすいのだろう。

行政書士としてのこれから
各種手続きはこれからどんどん電子化が進み、行政書士がしなくてはならないことは厳選されてくる。結局のところただ書類を作っているだけでは仕事にならない。これは今すでにそうだと私自身は感じている。お客様が求めていることも、ただ書類を作って欲しいということではないのだ。ワンストップで手間なくやって欲しかったり、その先のことを教えて欲しかったり、導いて欲しかったり、安心させて欲しかったり…要望は多様化している。

私は行政書士という仕事をしながら起業家でもあるため(ようやく自分で起業家と言えるようになってきた)、お客様に寄り添い、ともに考え、想いをかたちにしていくことのお手伝いをしていきたいと考えている。実はこれが一番楽しい。どうすれば実現するのか、もっと良くできるのか、この先に何があるのかを一緒に見たい。

単発業務が多いと言われる行政書士だが(税理士や社労士は毎月業務が発生するので顧問契約が基本)、コンサルティング契約をすることで末永くご一緒することができる。その価値を感じてもらえないと、1回の手続きでさよならだ。こちらも腕を磨き続けなければ、永遠に営業コストを大きくかけることになる。

基本的にお客様とのやり取りと役所とのやり取り、あとは在宅でできるため、子育てや介護をしながらでもできやすい業務なのだと思う。もしこれから行政書士を目指そうかと考えている方がいたら、どこか事務所を覗かせてもらうのも有益だ。試験の内容と実務がかけ離れてしまっているため、どういう仕事なのかというのが見えにくいのが実情だ(先に述べたように業務が幅広すぎるために試験にしにくいのもあると思う)。書類を作る上での考え方、動き方など、実際に見てみると日々のイメージがつくはずだ。

実際に事務所で「補助者登録」をすれば、資格がなくとも行政書士の補佐業務ができる。パート社員でも募集しているところは多いので、試験を目指しながら働くことも可能だろう。ぜひ実情を見たうえで試験を目指すことをおすすめしたい。

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