■プロローグ■

 宮内庁に、誰も聞いたことのない部署が存在している。その部署の名前は宮内庁神霊班。名前の通り、カミサマや霊体などを取り扱う部署のことである。その部署には五名の人間が所属しており、それぞれが警察に手が負えない事件などを取り扱う部署である。


「エクトプラズムって知ってる?」
「霊体が身体から放出された状態のことだろ。それがいったいどうしたってんだよ。あと、いい加減俺のスマートフォンを返せ。いつまでゲームをやってるつもりだ」
「えー、、ちょっと今良いレアキャラが出たからパス」
「パスじゃねえよっ。ってか、ガチャ回したのか!? 俺の金で!!」
「だって妖怪である私、座敷童にはお金は支払われないんだから、しょうがないでしょ。全てあんたのお金で賄ってるんだから、少しぐらい払いなさい」
「だからってガチャ回す程の余裕はねーよ!」
「五月蠅い」

 ドン、と。
 頭の上に何かが乗っかった感覚があった。
 それが大量の書類であることに気づくまで、多少の時間を要した。
 書類は机の上に置かれて、それが漸く書類であることを理解する。

「あーだこーだと五月蠅いんだよ、あんたらは。さっさと仕事を片付ける。はい、これ、こないだの『連続殺神事件(れんぞくさつじんじけん)』の資料」
「……何ですか、姉さん」

 ごすっ。
 今度は殴られた。痛い。

「仕事場では、姉さんではなく、班長と呼びな。……それと、それはあんたが管理する事件だって話しなかった?」

 佐久間礼子。
 僕の姉であり、上司でもある。
 そしてその肩付近をふわふわと浮いているのが……。

「何だ、少年。私の顔をじろじろと見つめて。何かついているか?」

 ……神様でもある、アメノトリフネだ。

「いいや、何でもないですよ。んで? この事件を俺がやればいいのか?」

 ごすっ。
 また殴られた。

「上司には敬語を使え、敬語を」
「……やれば良いんですか、班長」
「それで宜しい。……ああ、やり方は任せる。但し今回は警察庁とタッグを組むことになってるから、その辺りはきちんとしておくこと」
「警察庁と?」
「そこにプロフィールを載せているだろう? 警察庁捜査二課だったかな?」
「捜査二課って具体的に何をする部署なんですか?」
「さあな。その人に聞いてくれ」

 そんなことを言って、姉さんは一番奥にある班長の椅子にさっさと腰掛けてしまった。

「……じゃあ、その人に会ってくるとしますか」
「その人の名前は? ……えーと、椎名めぐみ、さん? ふーん、女性なんだ」
「何だ、座敷童。嫉妬でもしてるのか」
「座敷童じゃなくて緑と呼びなさい、この唐変木!」
「そこまで言われる筋合いはないと思うんだがなあ……」

 という訳で。
 俺の初めての仕事である、『連続殺神事件』が、幕を開けるのだった。


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