あおの世界
Kは学校の帰りにいつも岬に行く。
Kの住む世界には、海と空がある。
見上げれば深く碧い海が広がり
下を覗き込むと澄んだ青い空が広がっている。
岬は途中で終わっているのに、
歩く速度に合わせてどんどん道ができて行く。
Kは岬の先の方にある看板を読むのが好きだった。
白く、そびえ立つ看板。
看板の文字は食べられてしまった後だった。
「ついさっき食べられたんだよ。」
看板の横にいた緑の縁取りの男の声
代わりにと丸くて白いものをくれた。
丸くて白くて柔らかい、
Kはそれを食べながら歩いた。
味はなく
ボソボソと音がなる。
今日は海が静かだ。
穏やかな海を見上げ、
どこまでも澄んだ空を覗き込んだ。
青の世界にいるのはK、一人だけだ。
碧い静寂の中、一歩一歩、
出来たばかりの道を歩いて行く。
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