ファーストデイトは私から

Kは私にとって、初めて知りあうオランダ人だった。

それまで「オランダ人」と聞いてもさっとどんな感じなのか想像できなかった。Kと知りあってからは「オランダ人」と聞くと、Kの様に白い肌と、金髪、長身をほとんど自動的に想像する。もちろん、「オランダ人」と一口にいっても色んなタイプがあると思う。あると思うけれど、後にも先にもオランダ人は彼一人しか知りあわなかったのだから、仕方がない。

Kは腕にまでそばかすがあるのが印象的だった。20歳でアメリカに行ったばかりの若い私の知りあった白人の中でも、とても色素が薄い方だった。目はもちろん真っ青だったし、がっちりして腕や胸が厚かった。

そしてKは、英語が上手かった。まだ英語という言語の中にある色んなアクセントを聞き取れていなかった私は、彼のことを最初アメリカ人だと思っていた。彼はヨーロッパ訛りがあってもアメリカ英語が上手で、大学の寮の中でバイトをしていた。フレンドリーな人柄で、国籍誰彼なく話しかけては、友達を作り、顔が広かった。

私にもそこで話しかけてきた。最初は挨拶するだけだったのが、少しずつ会話するようになった。彼は、授業料を奨学金で賄い、生活費をバイトで稼いでいるのだと言った。同じ留学生として、ここまでアメリカに溶け込んでいる上に、経済的にも考えが自立していて、私は彼を尊敬した。

少しずつ、私はKに魅かれていった。もっと彼を知りたくなった私は、しびれを切らして、初めて男の人をデートに誘った。ものすごく勇気を出して、Wanna go watch a movie with me?と町の映画館に誘った。Kはとてもびっくりしていたけれど、悪い気はしていないようだった。彼は、私の寮の部屋まで迎えに来てくれると言った。そして二人でアクション映画を見に行く約束をした。

この約束は何より、彼の友達が私を後押ししてくれていたことにも基づいていた。彼の友達が言うに、Kは私のことを相当気に入っているということだったのだ。そう言われると私はますますいい気になって、デートの約束をとても楽しみにしていた。

その日のその時間になるまで、私はそわそわして落ち着かなくて、意味もなくシャワーを浴びて、メイクを一からして、髪もきちんと整えて、でも気合が入りすぎているように見えてもクールじゃないからと、服はカジュアルに留めた。私はその日の夕方、Kをひたすら待った。

気持ちばかりがそわそわするのでじっと、寮の部屋の中でぼおっと立っていた。ルームメイトが外出中だったので、一人でじいっと待っていた。

約束の時間になっても、Kは来ない。来ない。来ない。

もしかして、忘れられたんじゃないだろうかとか、本当は行きたくなかったんじゃないかとか、私から誘ったから断りにくかったんじゃないかとか色々と考えた。悶々と考えているうちに、緊張が不安へと変わっていった。

そして、約束の時間から十分くらい過ぎた頃に、ドタドタっと寮の廊下を走る音。Kが走り込んで私の部屋に入っていた。Sorry!!!!と顔を真っ赤にして言う彼の遅れた理由は「仕事が云々」であった。この人は、責任感が、あるのかないのか。女の子が勇気を出して誘ったデートという事を分かっているのだろうか。

それから見に行ったのは、確かXーmenのシリーズだった。内容なんかもちろん入ってこない。ロマンチックな内容でもないし、横にいてポップコーンを食べるKが気になって仕方なかった。

それから流れ込んで、留学生がたくさん集まるパーティへKと二人で行った。二人で登場したというので「あら~あなた達二人は一体何なの~?」と色んな国籍のヨーロッパ人に面白がられ、からかわれた。私はそんな冗談をまんざらでもないように受け答えしていたけれど、Kはといえば、私を放ったらかしにして、酔っぱらっていた。

これはやはり、脈なしなのかもしれない。私の方を、そういう風には見ていないのかもしれない。そんな考えがちらつくけれど、私はKの事をなぜか諦めきれない。少し遠くで飲んで友達と談笑している、その190㎝にも届きそうな長身のKのシルエットを見ていると、私たちは全く違う場所から来たのだという、もう分かり切った事実を考えていた。

映画の感想を聞いても、フィーリングがしっくりと来るものでもなかったし、何よりLook how different we are! 外見も中身も、私たちは全く違う。彼がこれまでチューリップと風車の国で構築してきた彼という人格は、私がこれまで菊と神社の国で構築してきた人格とは全く違う。それが、どういうわけか、この星条旗の元に出会ってしまったのだ。

私は自分でボトルを開けたビールを飲みながら(これは身を守る手段)、横目でKを見ながら、これからどうやってKの事を私の方へ向けようと、考えていた。

私とKはそれから二度目のデートに出向くことはなかった。

年上だった彼は、それからしばらくして卒業して、祖国へ帰ってしまった。それはあまりにも、あっけない最後だった。未だに、あの時に彼が何を考えていて、どういうフィーリングで私とデートに行ったのか、全く分からない。

アメリカで一度だけ交差した私達の線は、また再度歩み寄ることなく、そのまま別方向へと走ってしまったのだった。

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