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冬の朝に一杯のコーヒーが待っていること

半分まだ閉じた瞼でトイレへ行くと、リビングからはもう明かりが漏れている。大抵、ジャズのナンバーがもう流れている。トイレから洗面所へ行って一通り済ませてリビングへ行くと、明るくてあったかくて、私にはおはようのハグが待っているーーー

冬の朝というのは、一日を始めるのが物凄く難しい。これは大人でも子供でも男でも女でも、世界中どこにいてもみんなそうなのではないかと思う。何か楽しみがないと起きられない。

去年は、ハニージンジャーソイミルクティーだった。これは私が作っていた。色々入っているし、夫がこれを上手く作れるとも思わなかった。自分が作るものだっていいのだ。とにかく、あったかくて、まだ暗い寝床からよいしょと気合で起きだせる位、価値のあるものが朝に待っていなければならない。

今年からは、私がまたコーヒーを飲み始めたので(授乳や寝不足でコーヒーをしばらく飲まなかった)朝の楽しみの一杯は、また夫の仕事となった。

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朝の夫は大忙しである。私は弁当の用意をしなければならないので、朝食の準備はできない。朝もっと起きると言う選択肢も私は考えていない。なので、夫は子供たちにせがまれてトーストを作る。私にコーヒーを淹れる。私たちが起きる前にはリビングを暖めておかないといけないし、本当に頭が上がらない。

外国人の旦那さんだから、と言われそうだけれど、これは国籍は関係ないと思う。私の父が、こういう人だったのだ。まず朝が早い。4時やなんかに起きていた。朝が一番の人が、必ず冬は部屋を暖める仕事を担うものだ。そして、父もコーヒーをいつも淹れていた。

ジャズをかけるというのはしなかった。父は無音を好んだからだ。私の夫はジャズを多分、私の為にかける。私はクラシックピアノを3歳から15年も習っていたというのに、クラシックでは落ち着かないのだ。ジャズでないと、心地よくならない。夫はそれを知っている。

弁当作りが一通り終わって、皆でテーブルにつくと、私は作ってくれたコーヒーを飲む。夫は朝からものすごい量の食事を摂る。私は大体コーヒーだけだ。なのに、夫は痩せ型で、私は甘く言ってぽっちゃり。世の中、うまくいかないものである。

何でもない平日の朝のシーンだけれど、このしばしの時間と空間に幸せを感じる。外は寒いのに、ここだけは暖かくて、リラックスできる。もう20分30分もすれば、急いで支度して、みんな出かけねばならない、その前のひととき。

思えば、私と夫はこんな生活を子供たちが生まれる前もしていた。

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アメリカで二人で暮らしている時も、私はコーヒーの匂いに起こされていた。忘れていたけれど、そういえば夫はあの頃から、冬の部屋をあっためてくれていた。シャワーを浴びながら(アメリカでは朝シャワーの人が多い)コーヒーの匂いがしてくると、何とも私は甘やかされているもんだと思っていた。

それから日本に来て、赤ちゃんができたとなると、日頃のルティーンがまるっきり変わってしまった。色んな行動に制限がかかるし、何より疲れているし。それまでできていた事が、何ひとつできなくなる。でも、人間というのは変化があっても、いつの間にかまた前の様に、暮らし慣れたようなパターンに帰ってしまうものなのだ、きっと。

冬の寒い家の中をあっためてくれている誰かがいつもいたという事は、実はとても幸運だったのではないかと思っている。リビングに電気がついているだけで、コーヒーの匂いがしてくるだけで、ジャズの音が聞こえてくるだけで、大切な人の気配がして、安心する。子供たちもきっとそれをどこかで感じてくれていることだろう。

とても小さなことだけれど、こういう平凡な幸せが、家族の醍醐味なのかもしれない。もちろん、独身であれば家族がいればできない一人だけのとっておきの醍醐味がきっとある。

もう少し続く冬の生活。何か小さな楽しみを、ぜひ朝のルティーンに組み込む事をお勧めする。

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