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オーストリア旅行記(1):世界の車窓は雨景色。

フランスに来たら絶対にしようと思っていたことの一つがオーストリア旅行。

これは宝塚で最も好きな演目「エリザベート」の影響をモロに受けており、シシィやハプスブルク家の本場の空気を目一杯に吸ってみたかったのだ。


その願いは意外にもあっさりと叶い、渡航からわずか1ヶ月ちょっとの5月中旬に決行されることとなった。


ヨーロッパ内というのは、日本でいう国内線の感覚とも近いのか、とにかく飛行機代が安い。


航空会社を選ばなければ、フランスからイタリアだって1万円以内で行けちゃうのだ。
(ただ口コミをみる限りでは日本人には堪え難い空の旅ではありそうだけれども・・・。)


せっかく陸続きでオーストリアに行けるのだからと、行きは電車で行くことにした。


まっすぐウィーンに行くのではなく、最初はザルツブルクに入り、ハルシュタットを経由して最後にウィーンを堪能。

そして帰りは飛行機で帰ってくるという計画だ。


これはまるであの憧れの「世界の車窓から」そのものではないか!!


と、嬉々として旅行日までを指折り数えて待っていたのだが、私はつくづく運がない。


結果から言うと、旅行先ですっきりと晴れた日は1日もなかった。


まるで雨雲が私たちを追いかけているかのごとく、行く先々で雨が降る。

私たちが去ると晴れ間が広がるといった具合だ。


この何年か、私たちの旅行には常に雨がつきまとっているのだけれども、これってもしかしてどちらかが雨男(女)なのかしら。

(あくまで自分のせいだとは思っていないけれど。)


そんな具合だったため、前日まではキャンセルしようかどうか迷うほどではあったものの、天気なんてこの先旅行の計画を立てたところで見通しなどつかないだろうという結論に達し、私たちは朝6時40分発の列車に乗って、パリ東駅からまずはドイツのシュトゥットガルト駅に向かった。


島国育ち、ユーラシア大陸の旅行が初めての私は、国境を列車で渡るという経験も初めてだ。

雨が降ったり止んだりを繰り返す外の景色を見ながら、頭の中には「世界の車窓から」のテーマソングが流れ続けている。


パリを抜けると、一気に田園風景が広がるのだが、まるで北海道の十勝のような景色で非常に既視感がある。

なんだか懐かしい。


「自分たちはドイツ語がわからない。寝てしまったら目的駅を通りすぎてしまうかもしれないし、絶対に前日はしっかり寝ておいてね。」

列車を予約した際に、たしかに夫はそのように私に強く言っていたのだが、私が世界の車窓からごっこをしている間に彼は寝ていた。

私だって4時すぎに起きて眠たかったのに、彼は堂々と寝ている。


まぁ、この旅行のために毎日徹夜のような生活で仕事を進めてくれていたので、そこは文句を言わずに寝かせてあげようと、私の心の中の天使が彼をそっと見守ることにした。


さて緊張感が爆上げ。

今自分、どこの駅通過したの?!?!?

乗り過ごさないように、とにかく「シュトゥットガルト」って言葉だけには耳をすませておこう。


実は今回のチケットだってホテルだって全て彼まかせだったため、この列車が何時に到着するのかすら把握していなく、列車の放送のみが頼りだったのだ。



車内にWi-Fiが設置されていたため、「サウンドオブミュージック」の動画を片耳イヤフォンで見ながらザルツブルクの予習をする。

が、どこか気持ちはそわそわそわ〜。


だが、はたと気づく。

グーグルマップで位置情報を見ればいいんだ。

自分たちがいまどこの駅を通過して、あとどのくらいの距離でシュトゥットガルトという場所に着くのかがよくわかるではないか。

これはすばらしい。文明の利器よ、万歳。


「シュトゥットガルト」というスペルがわからなく(今でもこの駅名すらきちんと言えない)、案内掲示板をみても理解できるか不安だったけれども、もうこれさえあれば大丈夫だと安心し、私はリラックスして動画に集中することにした。



そろそろ到着という絶妙なタイミングで彼は起きた。

「もう、自分で寝ないでって言ってたから、私頑張って起きてたんだよ〜。寝過ごしたら大変だから、これみて!グーグルマップでしっかりチェックしてるんだから。」

となんとも恩着せがましいことを寝起き一発目にぶちかましてみた。

すると彼から衝撃の一言が。

「あれ?言ってなかった?シュトゥットガルト駅は終着駅だから、乗り過ごすとかそういう心配はないから。」

私たちの5泊6日の旅は、まだ始まったばかり。

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