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鹿せんべいのお店に鹿が集まらないのはなぜだろう

鹿が苦手だ。

高校の修学旅行のとき、奈良公園で鹿せんべいをあげていたら、鹿が群がってきてお腹を噛まれてアザになった。

大学生のとき宮島に行ったら、わたしのお団子を横取りされた。(鹿せんべいも持っていなかったのに!)

鹿が苦手だ。いや、嫌いだ。怖いんだもん。

奈良に行くと決まったとき、鹿のことだけが不安だった。たしかに鹿は、かわいいかもしれない。でも本当に怖い。楽しめる自信がない。


そんな不安を抱えて訪れた奈良。奈良の観光と鹿は切っても切り離せない。
春日大社に向かう途中、わたしの不安は現実のものとなる。



道の向こうに見える、見覚えのあるシルエット。
どうか見間違いであってくれ、と願う声は届かず。



鹿だ。



鹿だ・・・。


修学旅行の恐怖が蘇る。鹿に追いかけられ、指を噛まれそうになり、お腹をガブリとやられたあの日の記憶が。

鹿せんべいなんて絶対買わない、買うわけがない。宮島の鹿にはカメラも狙われたので、カメラを大事に抱え、鹿とできるだけ距離を取りながら歩みを進める。

彼は、鹿がかわいいと言ってしきりに写真を撮っていた。

まあ、鹿、かわいいんだけどさ。その気持ちは、わかる。でもやっぱり、お腹をガブリとされた恐怖が未だ脳裏に焼きついて離れないんだ。

うん、でもやっぱり、かわいいんだよなあ・・・。鹿。写真、撮ろうかな、どうしようかな・・・。

迷った結果、おそるおそるシャッターを切ることにした。






このシシガミ様のような長老は、観光客が鹿せんべいをあげても食べようとしなかった。かっこいい。


写真を撮っていると、やっぱり鹿はかわいい。彼にすすめられて背中を触ってみたけれど、全然暴れたりせず、おとなしかった。ちょっとだけ、怖い気持ちが薄れた。

かといって完全に鹿を克服したわけではない。鹿から寄ってこられたり、鹿せんべいをあげようなんて気持ちには絶対になれないけれど。

ちょっと距離を置きつつ写真を撮ったりたまに触ったりするのが、わたしにはちょうど良いかなと思った。



今日は最後に、長年の謎を置いていこうと思う。

鹿せんべいのお店に鹿が集まらないのは、どうしてなんだろうなあ・・・。






世界はそれを愛と呼ぶんだぜ