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最高に運の悪い息子の話が、最高におもしろかった


私の長男は、小学校3年生。

小学校には「係」というものがあり、全員に仕事が課せられている。

黒板係だの、掲示係だの、体育係だの、給食係だの。自分自身、小学校時代の係活動を思い出して、懐かしいものだ。

うちの長男は、1年生のときからずっと「保健係」になりたかったそうだ。でも、保健係は結構な人気で、毎回じゃんけんの争奪戦になる。

長男は、こういう「運試し」系のものがすこぶる苦手だ。ビンゴとかくじ引きとか、そういうもので良いポジションを得たことが一度もない。じゃんけんなんて、相手がずっとグーを出していても、それに気づかず延々とチャレンジして負け続けたりする。

そういうわけで、長男はじゃんけんに弱いために、長い間ずっと保健係の座を獲得するチャンスは訪れずにいた。

なぜそんなに保健係にこだわるのか。

それは「クラスメイトの出欠確認をとる」という仕事があるからだ。保健係になると、朝の出席確認を生徒が担うのだそうだ。クラスメイト全員の名前を呼んで、結果を帳簿に付けるという仕事に、長男は強く憧れているらしかった。

そんな運気の薄い長男に、やっと保健係になるチャンスがやってきた。3年生の1学期。この係を志してから、1年半は経っている。子供にとっての1年半は、本当に大きいと思う。入学して早々に保健係の良さに気付いたらしく、それ以来ずっと狙っていたようだった。

そして、やっと保健係志望者の荒波を制覇し、保健係の座を獲得したのだ。

おめでとう。入学してからずっと憧れていた「保健係」

クラスメイトの名前と顔を確認しながら行う、朝の出欠確認。頑張れ!


しかし。


3年生のそのクラスでは、出欠席を“日直”がとるという制度に変わっていたのだ。彼は茫然とする。やっと獲得した保健係。目指していたのは、出欠確認の仕事、ただそれだけ。彼はとにかく、具合の悪いクラスメイトがいた場合の保健室まで付き添う仕事だけを全うした。


しかしまだチャンスは訪れる!

長男自身にも日直の順番は回ってくるのだ。日直という立場は、みな平等に任されるもの。


ずっと憧れていた出欠確認の仕事。それが、いよいよ回ってくる。


彼が日直になる日はもうすぐだ。ずっとやってみたかった、出欠確認の仕事が、とうとう実現する。ワクワクする気持ちを抑えて、その日を待った。


長男が日直の当番となったその日。


非情なことに、先生はこう言った。


「今日はちょっと時間がないので、先生が出欠確認しまーす。」


日直の仕事、出欠確認の仕事を1年半以上待っていた息子は愕然とした。うなだれた。


自分はなんて、運のない男なんだろうと……!


こんな話を、笑いながらする息子。

参っちゃうよ、というような軽いノリで話す息子。

大好きだなぁ。かわいいな、すっごいおもしろいな。いいヤツだなって、思う私なのでした。



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