久しぶりの新橋はクソみたいに眩く、やっぱり地元の薄暗い路地裏が心地良いや日記

クソ日記の続き。ここ一ヶ月ぐらいは気が休まらなかった。

頭の中で色んな感情が温玉乗せサラダの様にぐちゃぐちゃになっていた。

俺が好きだった叔父はコロナ禍の間に離婚したそうだ。母と妹が言うには叔父の不貞行為が原因だったらしい。

叔父は高校生から付き合っていた人と結婚して、子どもが二人居た。その子ども達も大きくなったそうで、久しぶりに会いたいと思っていた所だった。
とてもじゃないが、頭の中で理解する事はできなかった。母が言うには電話越しに大喧嘩して、もう連絡も返って来ないと言っていて、妹も叔父ともその肩を持つ祖母とも会わない方が良いとやんわりアドバイスのLINEが送られてきた。

私的な事情を先に述べる。俺は叔父にたくさん世話になっていた。

新卒で得た仕事を半年で辞めた時も、実の兄貴の様で鬱陶しくない程良い距離感で社会で生きる中で大事なことを教えてくれた。良い意味でのらりくらり過ごす事の大切さを教えてくれた、説教臭さを感じない人だった。筋トレに付き合ってくれて、2週間ぐらいで5キロ痩せることも出来た。今じゃ大リバウンドしたけど。

だからこそ、初めて母から事の顛末を聞いた時奥さんも子どももいるのに何やってんだと怒りを覚えた。母が姉として叔父に怒るのも分かる。それでも俺は倫理観だけではどうにも割り切れなかった。

前日まで会うべきか悩んだし、会って事実であると知るのも辛い。でも、世話になった礼ぐらいはしたい。せめて礼を言う事は筋だろう。そう言い聞かせる。

叔父と再会する日は、いつも以上に仕事が淡々と終わってしまった。新橋までは歩いて行く事にした。そうすれば気持ちの整理が付くからだ。きっと不倫したなんて事は新手のドッキリだろう。俺は昔から人に騙されやすいから、質の悪い嘘だろう。そんな風に都合の良い解釈をして、無機質なビル群を歩いた。

SL広場はバカみたいに光っていた。浮かれカスサラリーマンやOLは自撮りをしている。そんなSLの前に叔父はいた。

「お、久しぶり。じゃあどっかで飯行くかあ。」

叔父は最後に会った時と全く変わっていなかった。あっけらかんとした様子で少しホッとした。

「そういやこれ返すよ。ありがとうな。」
ドラゴンクエスト11のカセットだ。なかなか会う理由付けるのに苦慮して、前に貸したゲームを返して欲しいという名目で今回漕ぎ着けたのだ。

「そういや彼女と続いてるのか?」叔父が切り出す時、薬指から指輪が無いことに気付いた。嘘だと思いたかったが、本当だったようだ。

「なんだよその顔は〜?彼女がいて楽しくないのか〜?」ニヤけながら俺を弄った。

正直再開してすぐの会話はそこまで覚えていなくて、結婚のアドバイス(離婚経験者が語るなよ)とか仕事の向き合い方の話をした。

クソまずいビールをグイッと飲み、ガムみたいな肉の串を食ってから切り出した。

「俺さ、結婚式するなら叔父さんを真っ先に呼びたいなって思ってた。だけどこないだ母さんから話を聞いて、ちゃんと自分で本人から話を聞きたいと思いたくて誘ったんだ。でも多分、呼びたくても呼べないからさ。なんかごめん。」

言葉に詰まりながら、伝えたい事を伝えた。

叔父さんは一瞬真面目な顔になり、「○○も大人になったなあ。」と言った。

それからの話の内容もそこまで覚えていない。「細かいすれ違いが我慢できなくなる時が来てしまった。」とは言っていたけど、どうにもそんな考えで過ちを犯すのはどうなのかと思った。

後は唯一生きてる祖母がもう81歳で足が不自由、さらには来年から生活保護受給者になるというおまけ話にしてはキツすぎる内容も聞かされた。

二軒目に行く気力はなくなり、「じゃあまた来月にでも会いに行くよ」と別れを告げた。

帰り道は鼻から目元の辺りがグズグズした。こんな形で家族の離別を見てしまうなんて、思いもしなかった。本人の弁を聞いても、理解出来なかった。すれ違いなんて話し合えば済む事なのではないかと素直に思う。叔父の行為は納得出来ないけど結局本人を嫌いにはなれなかった。

ボケっとしていたら、鹿島田駅に着いた。本能的にやけ食いでこのモヤモヤを晴らそうとした。特製ラーメン中盛にライスというバカの食い方。ラーメンが来る前にライスを平らげた。

その日のラーメンは、固めだけの指定なのにいつもよりしょっぱかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?