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#94 小論文の型①:意見提示型(解答例付き)

「入試に小論文がある。けど、何をどうしたらいいのかわからない……。」
「とにかくシンプルな説明で書き方が知りたいんだけど……。」
 このように考えている人はひとまず以下の「2つの型」を知りましょう。

 世の中のほとんどの小論文は、この2種類に分類することができます。「意見提示型」と「課題解決型」です。勿論、複雑な内容を要する小論文の問題はたくさんあります。しかし〈書き方〉の観点から抽象化した場合、大抵は「意見提示型」と「課題解決型」のどちらかの型を用いて書くことになっています。
 ですので、小論文のことで悩んでいる人は、ひとまず以下の解説を読み、この「2つの型」について理解しましょう。800字以内(原稿用紙2枚以内)の解答例とシンプルな解説を載せています。基本にして根本を説明した解説です。
 2つの型を知ることは〈書き方〉の〈考え方〉を知ることになります。そうすることで基礎力がつき、汎用性のある対応力が身に付きます。
 今回は「意見提示型」のほうの解答例と解説を掲載します。次回#95では「課題解決型」のほうを掲載します。どちらも合わせて読んでみて下さい。

【解答例】
 私は、ラーメンが好きだ。なぜなら、ラーメンには日本の〈多様性〉が凝縮されているからだ。具体的に言うと、ラーメンには様々なバリエーションがあり、ラーメンは様々な変化を許容してくれている。つまり、ラーメンという1つのジャンルの中には、無数の可能性が秘められているのである。
 例えば、ラーメンの中には醤油・みそ・豚骨など様々な味がある。値段も安いものから1杯1万円を超す超高級なものもある。冷やしラーメンやつけ麺といった冷麺の形態があれば、インスタントやカップ麺といった非常食になり得るような形態もある。さらにはビーガン(菜食主義者)向けのラーメンやご当地限定ラーメンなどもある。最近では外国人にも人気で、海外進出する日本のお店も増えている。
 では、なぜ、ラーメンは多様なのか。それは日本に起源がないのと、戦後日本の食産業が発展したからだ。ラーメンは元来中国の食事である。だから伝統も文化も既得権もない。ゆえに、誰もが新たな変化や改良を加えやすかった。またチキンラーメンというインスタント食品の開発がラーメン自体を普及させた。要するに、改良化のしやすさと普及率向上の2点が重なり、ラーメンはバリエーションを増したのである。ただ、ラーメンが健康的かと言われると、それは肯定できない。なぜなら、高カロリーであるからだ。その意味では、たしかに、ラーメンはできるだけ控えたほうが良い。しかし、ラーメンほど〈多様性〉を内在させた食はない。すでに示した通り、ラーメンには様々な変化や改良を包括する〈許容性〉や〈寛容さ〉がある。
 それは今の日本社会にとって示唆に富む発想ではないか。したがって今後は、もっと様々なラーメンが開発され、様々な人に、様々な場所で消費されるべきだろう。以上のように考えるため、私はラーメンが好きである。それは個人の嗜好のみならず、社会的な価値を認めた上での判断である。(784字)

 ①私は、ラーメンが好きだ。②なぜなら、ラーメンには日本の〈多様性〉が凝縮されているからだ。具体的に言うと、ラーメンには様々なバリエーションがあり、ラーメンは様々な変化を許容してくれている。つまり、ラーメンという1つのジャンルの中には、無数の可能性が秘められているのである。

[序論]
① 自身の意見(結論)の手短な説明をする
→ 原稿が向かう“ゴール”を先に示す
(読み手に主張の“核心”を先に示す)

② 抽象的な理由説明をする
具体的な理由説明をする
→ 理由や根拠を示すことで“説得力”が上がる
(※ 抽象 → 具体の流れがわかりやすい)

 ③例えば、ラーメンの中には醤油・みそ・豚骨など様々な味がある。値段も安いものから1杯1万円を超す超高級なものもある。冷やしラーメンやつけ麺といった冷麺の形態があれば、インスタントやカップ麺といった非常食になり得るような形態もある。さらにはビーガン(菜食主義者)向けのラーメンやご当地限定ラーメンなどもある。最近では外国人にも人気で、海外進出する日本のお店も増えている。

[本論]
③ 具体的な事例を示す
→ 具体性を示すことで“リアリティ”が出る
→ リアリティが出ることで“説得力”が上がる
(※ 具体例は複数・多角的にあるほうが良い)

 では、※なぜ、ラーメンは多様なのか。それは日本に起源がないのと、戦後日本の食産業が発展したからだ。ラーメンは元来中国の食事である。だから伝統も文化も既得権もない。ゆえに、誰もが新たな変化や改良を加えやすかった。またチキンラーメンというインスタント食品の開発がラーメン自体を普及させた。要するに、改良化のしやすさと普及率向上の2点が重なり、ラーメンはバリエーションを増したのである。ただ、ラーメンが健康的かと言われると、それは肯定できない。なぜなら、高カロリーであるからだ。その意味では、※たしかに、ラーメンはできるだけ控えたほうが良い。しかし、ラーメンほど〈多様性〉を内在させた食はない。すでに示した通り、ラーメンには様々な変化や改良を包括する〈許容性〉や〈寛容さ〉がある。

※ 具体例に関する理由説明があるとなお良い

※ 自身の意見に対する反論を考慮する
→ 対象を多角的に検討する
→ 視野の広さ(学術的な素養)の証明となる

 それは☆今の日本社会にとって示唆に富む発想ではないか。したがって今後は、もっと様々なラーメンが開発され、様々な人に、様々な場所で消費されるべきだろう。以上のように考えるため、④私はラーメンが好きである。それは個人の嗜好のみならず、社会的な価値を認めた上での判断である(784字)

[結論]
④ 意見を再提示する
→ 原因(理由や具体例)から結果(結論)を導き出す“因果律”を組むことで全体が“論理的”になる

☆ ただ結論(意見)を示すだけでなく、そこに公共性のある“プラスα”の要素を組み込むことで自身の意見を“深化”させられる

 以上の通り「意見提示型」の基本は「①意見 ②理由説明 ③具体的例示 ④意見」の展開です。大切なのは「理由」と「具体化」です。言い換えると、意見の正当性を証明するための〈根拠〉を示し、その根拠に〈リアリティ〉をもたせることです。そうすることで、意見には〈説得力〉がでてきます。これが意見提示型の基本です。そしてこれが小論文の根本です。
 なぜ根本と言えるのかと言うと、それは言うは易く行うは難しなものだからです。「理由」と「具体化」は言葉の上では簡単そうにみえますが、実践するのは難しいものです。しかし、だからこそ入試で問われるわけです。簡単なことなら問題になりません。それが基本にして根本と語る理由です。
 突き詰めていくと根本部分では難しいものであるのは否めません。しかし、何事も基本を知ることが大切です。ですので、まずは上記の解説をよく覚えておきましょう。そしてその後はそれぞれに練習を積み重ねていきましょう。

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