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トリカブトと現代の医薬

写真は以前撮影したクジャク。本文と関係はない。

日本で一番有名な、自然に存在する毒はフグ毒かトリカブトの毒なのだと思う。トリカブトは山菜の二輪草とそっくりなので、間違って天ぷらにして食卓に並んだ悲劇は多々あるし、狂言の演目である「附子(ぶす)」は、このトリカブトの異名の1つである。エスキモーやアイヌ民族はこの毒を使った矢で狩猟を行った。

ところで容姿がすぐれないという蔑称の「ブス」は附子からきている(諸説あり)。というのもトリカブト(附子)というのは神経毒であり、中毒で顔が歪んでしまった様子からきているからだ。

トリカブトというのは生薬・漢方に使われる。(生薬と漢方の違いはいつか別の記事で述べたいと思う)Wikipediaでは、薬として使われる場合のトリカブトは「附子(ぶし)」と呼ばれ、毒として使われる場合のトリカブトは「附子(ぶす)」と呼ばれるそうだ。薬として使う場合は、肥大した根を使い、そのまま使うと毒性が強いので特殊な溶液に浸して熱処理をして弱毒化する。それでも、薬と毒は表裏一体なので服用するときは慎重になるべきである。

附子(ぶし)を使った漢方は現在でも広く使われている。そもそも附子(ぶし)は体を温めたり、血液循環を改善するのに有効で虚弱体質にも使える。ただ、ここで問題が出てくる。普通の人は、「漢方は効き目がそこまで強くなくて、体に優しい薬」と勘違いしているのだ。特にお年寄りが当てはまるのだが、いろんな病院に行って、漢方薬も含まれた複数の処方箋をもらう。附子(ぶし)は多くの漢方薬で使われているので、知らず知らずに附子(ぶし)が含まれた複数の漢方薬を服用してしまい、治療量以上に附子(ぶし)を摂取してしまう可能性があるのだ。いくら弱毒化してもトリカブトなので、附子(ぶし)は附子(ぶす)になってしまう。要するに、漢方でも甘く見てほしくはないし、おくすり手帳は是非とも携帯してほしいのだ。

トリカブトというのは、世界に広く分布しており、毒の作用も強いので逸話がとても多い。水あめと言い張っても実は附子だった、なんてこともあるかもしれない。