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「エモい」の正体を徹底的に暴く

「エモい」

私が大学生の頃からなんとなくまわりで流行し始めた言葉。

軽音楽部に所属していたこともあってか、みんな事あるごとにその言葉を連呼していました。まあ便利だったのでしょう。

毛布をかぶると暑くて、でも布団から脚を出すと肌寒くて、なんだか上手く眠りにつけなかった夜に、ふと疑問に思った「エモい」という言葉の正体。

なんとなく、そして絶妙に定義されたその言葉を、便利に使ってきた感はあるのだけれど、実際のところ「エモい」の正体って何?と聞かれたらきちんと答えられる人はほぼいないのじゃなかろうか。少なくとも私の頭の中の「エモい」はめちゃくちゃふんわりとしている。輪郭はないけれど色はなんとなく見えるみたいな。

思い悩んだところで、「エモい」の正体が向こうから姿を表してくれる訳ではなさそうなので、こちらから積極的に暴きにかかることにしました。

とりあえず「エモい」が当てはまる状況に共通する何かにヒントがありそうな気がします。

「エモい」: 夜中、ひとり、消えかけの煙草

たしかにこれはエモい状況。エモい以外の表現が思い浮かばない。何があったのか知らないけれど、夜中にひとりで多分この人ベランダでもうみんな眠って静かな住宅街を眺めてるパターンのやつ。もしくは終わらない残業の息抜きに、無機質なビル街を眺めながらふうっとため息をつく。エモい。どちらにせよ大なり小なりこの状況で登場している人物にとって精神的にちょっと辛いことがあった日の夜であることは確か。もしくはちょっと切ない気持ちになりたい気分だったのか。煙草ってやつは煙と一緒に悲しみも吐き出すことができる。エモい。

「エモくない」: 朝、8人家族、開けたばかりの食パン

うん。見事にエモくない。騒がしい子供の声が明確に脳内再生されるやつ。「ちょっとお父さんトイレ長すぎるんですけどー!」「いいから先に着替えてきなさい早く!」「お母さん僕幼稚園行きたくないの〜」みたいな。微笑ましい。ただ、ここにエモさの要素はない。幸せに溢れている。辛いことといえばトイレさえのんびりさせてもらえないお父さんの気持ちでしょうか、まあ大家族の父親など大概そんなものだろうし、自分の子供達と過ごす毎日が何よりの幸せなんじゃないでしょうか。エモくはない。お母さんは多分こうやって毎朝怒ったり褒めたりしながら全員を送り出したあとに、終わらない掃除洗濯料理を済ませて昨日の夜ご飯の残りで自分のお昼ご飯をちゃちゃっと済ませ、昼ドラを見ながらその日初めてゆっくり座ってふうっと一息つく。こうやってきっとこの家族の毎日は過ぎていく。


いい感じなので他のエモいパターンも考えてみることにします。

「エモい」: 一年前に別れた、元彼、同じ匂い

匂いって本当に記憶を刺激する要素ナンバーワンだと思うんですよ誰か共感してくれますよね?!脳内の記憶の引き出し早開け選手権があったら堂々の日本一に輝くと思うの絶対。あ、これあの人と同じ匂いだってなった瞬間に海馬の上から下までぐりぐりー!!って刺激されてもう脳内思い出フォルダ全開けからの強制終了&ゴミ箱投下。誰か私のコンセント引き抜いてシャットダウンしてください。はあエモい。切ない思い出と匂いの組み合わせ最強のエモさ。私の場合、元彼は香水とかつけない人ばかりだったのでちょっとこのエモさに憧れあったりするんです。でもできるなら別れとか考えたくない。好きな匂いにずっと包まれたい。

「エモくない」: 最近おじさん化が進んでいる、旦那、足の匂い

絶対臭い。100%臭いやつ。もちろんその足には毎日お仕事頑張ってくれている疲労、心労、ストレス、その他色々が含まれていることを考慮しても臭いものは臭いと思う。エモさとか考える前にその靴下をとりあえず洗濯機にINして話はそれからだ。もうこれに関しては仕方がない、むしろエモいと対比するための状況を挙げているからこその「日常」感。エモくは、ない。別に旦那のことを足の匂いで嫌いになったりすることはないだろうし、きっと「今日もお仕事お疲れ様!ごはんにする?お風呂にする?それとm」ってリアルにやっているような新婚ほやほやラブラブ夫婦にだって多分エモさはない。幸せとエモさは同居しえないのか。


ちょっと「エモい」の正体が見えてきた気がする。


「エモい」: 社会人、バンド、解散ライブ

大学時代に友人と組んだバンドも全員が社会人になり、ある日ドラムのやつが言った、「俺、結婚するわ。」の一言で全員が察した、夢を諦める瞬間。仕事にも慣れ、徐々に合わなくなるメンバーの都合と練習時間。自分たちよりも大きなステージに立つ後輩のバンドをちょっと複雑な気持ちで眺める日々。誤魔化すように頑張る仕事のせいで難しくなっていくバンドとの両立。掴みたかったステージは夢のまま、彼らの心に残り、最後の解散ライブで普段全然喋らないベースの奴が汗を拭くふりをしながらこっそり涙を拭うのを見てギターがわざと大げさなリフで会場を盛り上げる。終わったあとの楽屋で、いつもおちゃらけキャラのギターの奴が珍しく真面目に、「俺の人生で最高に輝けた時間だった」とか言い出してボーカルが泣き顔を誤魔化すために、「煙草吸って来るわ」とか言いながら楽屋から静かにいなくなったりして。さようなら僕らの夢よいつまでも。くっっっっっっっっっっっっそエモい!!!!!解散するな!追いかけろよ!夢!!!!!!(あ、ここまで全て妄想です)

「エモくない」: グループ名今日決まった、新生アイドル、twitter

たまたま集められた新生アイドル、グループ名は事務所から今日決められて、とりあえずtwitterのアカウントつくっとくかーみたいなノリ。「はじめまして!歌と笑顔の力でみんなをHAPPYにするために今日から頑張っていくので、みなさんフォローお願いします!」的な。リーダーの自己紹介が二つ目のツイート。エモさはないけど、違う意味でなんか心にくるものはある。多分メンバーが半年後に5人くらい増える。全員違う色の衣装着てる。絶対メガネ女子メンバーひとりはいる。あとどっかの地名がグループ名に入ってたりする。グループのロゴにその土地の名産品が隠れてたり目立ってたりする。

ちなみにこういう新生アイドルのはじめまして結構好き。


***


ああ、わかった気がする、「エモい」の正体。つまりこういうことでしょエモいってやつは、「終焉」が背中に見えていて、「一時的な熱量」が大きければ大きいほどより強調されて、そしてなんとなく幅広い層が共感する「思い出」的要素を含み、そこにスパイス的になんとなく悲壮感が漂うもの。

つまり

夕焼け、線香花火、卒業式、波打ち際の足跡、降り始めた雪、風に舞う桜の花びら、あの日通った道、今はもうない君の温もり、言えなかった言葉、、

なんか「エモい」要素だけで歌作れそうな気がしてきた。


歌?


つまり

「エモい」=「歌」?


そういうことか。


つまりエモいを生み出した歌を作り出した人こそエモいの正体であるに違いない。私的最近の歌のマイブームは「ぼくのりりっくのぼうよみ」なんですけど、彼の曲を「エモいな」とか言いながら聞いていた私の感想はつまり実は真理をついていたということなの??!?!?!?!?!?!?!


あ、そんなこと考えてたら朝来るわまじエモいわ

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