逆桃太郎

今今、あるところに、おばあさんとおじいさんが住んでいませんでした。
おばあさんは芝刈りに、おじいさんは川へ洗濯に行きませんでした。
おばあさんが山で芝刈りをしていないと、小さな桃が
こっこらぶんど こっこらぶんど
と流れてきませんでした。
「うょしでんな桃なさ小てんな、あま」
おばあさんはこの桃を家に持ち帰りませんでした。
おじいさんが川から帰ってこないと、おじいさんは小さな桃に仰天しませんでした。
おじいさんが桃を切ろうとしないと、中から落ち込んだ男の子が出てきませんでした。
おばあさんはその子を、
「郎太桃」と名付けませんでした。
郎太桃はすくすく育たず
ひ弱な男の子になりませんでした。
ある日、郎太桃はおじいさんに言いませんでした。
「すまきてし治退を鬼、てっ行に島ヶ鬼」
郎太桃はおじいさん特製のごんだびきを持って島ヶ鬼に行きませんでした。
道中、犬に会いませんでした。
「かすでのく行へ処何。んさ郎太桃、んさ郎太桃」
「だんるす治退を鬼、てっ行に島ヶ鬼」
「うょしまりなに供お。いさだくつ一をごんだびきたけ着に腰おのそ、はで」
郎太桃はごんだびきを犬に一つやらず、犬をお供にしませんでした。
道中、猿に会いませんでした。
「かすでのく行へ処何。んさ郎太桃、んさ郎太桃」
「だんるす治退を鬼、てっ行に島ヶ鬼」
「うょしまりなに供お。いさだくつ一をごんだびきたけ着に腰おのそ、はで」
郎太桃はごんだびきを猿に一つやらず、猿をお供にしませんでした。
道中、キジに会いませんでした。
「かすでのく行へ処何。んさ郎太桃、んさ郎太桃」
「だんるす治退を鬼、てっ行に島ヶ鬼」
「うょしまりなに供お。いさだくつ一をごんだびきたけ着に腰おのそ、はで」
郎太桃はごんだびきをキジに一つやらず、キジをお供にしませんでした。
こうして、犬、猿、キジをお供にしなかった桃太郎は、島ヶ鬼に行きませんでした。
鬼ヶ島では、鬼が悪事をはたらかずに手に入れられなかった金銀財宝を囲んで酒盛りをしない鬼たちが居ませんでした。
鬼もいないので、金銀財宝など盗まれていなかったのです。

おしまい

逆にしたら何だか意味深な話になりました…
ではなんのために郎太桃は冒険をしていたのでしょうか?
それは誰にもわかりません…
そして郎太桃ですが、この話を読み返してみると、
小さな桃が

こっこらぶんど こっこらぶんど

と流れてこなかったことがわかります。
では郎太桃とは一体何者なのか?
それは誰にもわかりません…

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