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梅白湯

立派な梅干をいただいた。
人差し指と親指で作ったわっかより大きな南高梅を、ひとつひとつ個包装の袋に詰めた、見るからに高級そうなもの。どうやって食べようか、お茶漬けなどがいいんだろうか、それともお茶請けとして食べるべきなんだろうか。考え込んであれこれレシピを調べるうち、梅白湯、という単語がヒットした。
梅干を湯飲みにぽんと入れ、沸かしたお湯を注ぐだけ。梅昆布茶の昆布茶なしみたいなものだろうか。

ぺりりと和紙の袋を破ると、つんと酸っぱい香りがした。じわっと口の中に唾液が溜まる。ころんと湯飲みに落とし入れる。ちんちんに沸かした熱湯をジャァッと注ぐ。あちち、湯気が前髪を撫でる。

見た目、はなんとも華がない。梅干しがしーんとお湯に沈んでいるだけ。
とりあえずそのまま、そうっと湯飲みに口をつける。熱いお湯に舌がひるみ、飲み込んでしまってからよくよく味わうと、梅干が纏っていた漬け液だろうほのかな酸味だけ。

そうだよねぇ、とマドラーでちくちくつつく。ぷちりと皮が破け、かき混ぜると果肉がくるくるお湯に舞う。どこか見覚えのある光景、おや、これは、焼酎のお湯割りに絵面がそっくり。

ずう。啜りこむと今度はきゅうんと酸っぱい梅の味。
酸っぱいだけじゃない、まろやかな出汁のようにおいしいスープになっている。これは、と思いつき、海水を干した天日塩を一つまみ。ぐっと料理の奥行きを深めてくれるとっておきのアイテムは、果たして梅白湯にもてきめんだった。
ぐーっと思わず飲み干して、もう一杯。とぽぽと熱いお湯を注ぎ、冷ましがてらつんつんつつく。ふふん、もう攻略法は飲み込んだ。
梅干割と同じく、自分好みの濃さにカスタマイズできる楽しみ。白湯は味気なくて今ひとつ好きじゃなかったけれど、クエン酸を摂取しつつ、塩分を補給しつつ、体をしんから温める、梅白湯、夏にぴったりの飲み物かもしれない。

くっと二杯目も飲み干す頃には体がやんわり火照っている。ふう。ぱたぱた手うちわで風を送り、胃のあたりを優しく撫でさする。冷房除けに羽織っていたストールは脱いでしまおう。
底に残ったとろとろの果肉を種ごとすくい上げ、ぱくっ。きゅぅ!と酸味に口をすぼめ、爽やかに飲み納め。

ご馳走さまでした。すてきなドリンクをまた一つ、見つけちゃいました。