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(25)ノーチのしっぽ研究所3周年!

2023/5/23にノーチのしっぽ研究所は結成3周年を迎えた。
個人の展示活動自体は学生時代からやっているので、ノーチのしっぽ研究所を名乗り始めてからはまだ3年かという気もする。しかし、中1が高校生になるくらい続けているわけだし、3年あれば人は変わる。

実際ぼくたちも、3年でいろいろあったし、いろいろやった。

せっかくのお祝いだから何か記念イラストでも書こうかと思っていたが、何だかんだで忙しい日々が続いているので、こうしてテキストベースの振り返り記事を書いてお茶濁し。

近況報告

ノーチのしっぽ研究所は、ぼく¥0sukeとF.しっぽのふたりで構成される絵本作家/イラストレーターユニット。

いちおうこういう触書きになっているが、最近描いているのはもっぱらお仕事案件で、あまりオリジナルの作品を発表できていない。

医療系解説マンガのネーム描いたりしてます

相棒はノーチ結成以来、ほぼ絵を描かなくなった(最近シャドーボックス作りにハマっている)ので、ノーチの生産力は僕の作画速度に100%依存している。よって、アイディアがあっても手が追いつかないという状態が、かれこれ3年続いている訳だ。気力と体力と時間が無限にあれば…と常々思うが、平日はフルタイム勤務の身なので、無理せず続けることを優先している。

それでも定期的に「オリジナル描かなきゃ」となった場合は、アイディア出しは2人でやり、作業は僕がひとりで担当している形だ。
お題生成マシンから次々と流れてくるものの中から光るものを選び、形を整えて味付けしてTwitterに流す。近年確立したライフワーク。苦しくて楽しい。

プリンを運んでいるデグーが見たいと言われて描いた

成長

ノーチ以前は、動物をかっこよく描くことだけを考えていたので、オリジナル作品というほどのものを描いていなかった。学生だったし、社会人経験も無いので、実績も自信もあまりなかった。それでも人に絵を見せたときに得られる成功体験に病みつきになり、自分が社会に存在して良い唯一の理由というくらい、絵を描くことにしがみついた。

ノーチ結成から半年くらいは、自分たちが考えたキャラクターや世界を描くのに夢中だった。自分たちの真っ直ぐな〈好き〉を世に出すのに少し恥じらいながらも、童心に返って作り続けた。
ちょうどこの頃社会人になりたてで、慣れない環境に晒され続けたストレスで体調を崩していた。会社に行きたくなくなるにつれ、筆を握り続けたい気持ちは強くなった。
そんな最中で絵本『トロポコの冒険記録』を作った。生活するお金もギリギリの中で作った同人本。30冊しか刷れなかったし、どう頑張っても赤字だったが、嬉しいことにあっという間に売り切れた。

初めてゲラが出来た時はすごいものができたと興奮した

結局会社には馴染めず休職することになり、そのまま退職。もうぼくは絵で食っていくほかないと思った。1年目は自分たちの創作物を世に知らしめるために必死だった。

2年目は、無職の状態が想像以上に精神的にキツくなり、転職活動をしながら個展を開いたりした。

ご好意で広い部屋を使わせていただいたのに飾りきれず、自分の生み出してきた作品の多さを実感して驚いた

個展では色鉛筆画のワークショップを開催し、初めて絵を教えることにチャレンジした。そのすぐ後には画材メーカーのオリオン様主催の講座に講師として招かれたり、配信型の講座のための解説動画を作成したりもした。自分でもおえかきライブ配信を頑張っていた時期もあった。
講義も動画編集も配信もやったことのないことばかりだったが、やれることが増えるのが楽しかった。

画面上で質問に答えながら時間内に完成させるのはかなり難しかった

絵の活動はそれなりに順調な滑り出しといえた。
絵1本で食っていくか二足の草鞋を続けるか迷ったが、先立つものがなければ思うように事が運ばず、柔軟に働けそうな会社を選んで2021年8月に転職した。

印刷会社に就職してからは創作ペースはかなり落ちたが、仕事でDTPもデザインも企画も何でもやるようになり、社会人としての振る舞いも次第に板に付いてきた。仕事でいろいろ経験したおかげで、印刷に適したデータの作り方、文字の組み方などのスキルだけでなく、クライアントの要望の汲み取り方、納得させる提案の仕方など、クリエイターとしてのプロ意識も育まれてきた。

会社での仕事のこなしに慣れてくると、ノーチとしての立ち回りにも自信がつき、大きなお仕事をいただけるようになってきた。

児童書の挿絵のお話をいただいたときは本当に舞い上がった。子供の頃食い入るように読んだ本のイラストは、今でも覚えている。そんな体験を与えられる立場になったんだと感慨深かった。

「自分の絵が誰かに影響を与えるかもしれない」ということに、重要な意味を感じた

科学や医療に関する解説マンガを描かせていただいたり、自然系学習施設の企画展ポスターや展示用イラストを描かせていただいたこともあった。
サイエンスへの興味と絵のスキルという、自分の中の大きなアイデンティティであったふたつの要素が、ついに融合して昇華された。
さらに有難いことに様々なご縁が広がり、一度だけでなく続けてお話をいただけるようになり、現在の忙しくて嬉しい日々に繋がっている。

学芸員の方々の監修のもと、全イラスト描き下ろし&デザイン。貴重な経験だった。

3年目になり、憧れだったイベント、「博物ふぇすてぃばる!」に参加できたことも、強烈に印象に残っている。
博ふぇすのためにガクタメや画集を制作したが、その過程で得るものはとても大きかった。
この年に作ったガクタメは、生物学の全体像を1枚の絵にするというもの。各学問分野の内容は難しくても、身の回りにたくさん転がっている不思議に目を向けることの楽しさを伝えたかった。

ウォーリーを探せ!のような視覚探索イラストにすることで、身近な不思議に目を向けるというコンセプトを体現

画集はとにかく好きなように作った。
この頃は文章を書くのも楽しくなり、読み物としてもボリュームのあるものができた。あまりにも自分の好みを全面に出したものになったので、作りながら「ほとんどひとりよがりかもしれない」という不安もあったが、ひとりよがりでもいいから、自分の今作りたいものを最後まで作り切りたいという気持ちで走り抜けた。

画集らしくない画集を目指し、架空の科学ジャーナルという体で作った。告知ツイートもこの懲りよう。

3年前はオリジナルイラストを描くことすらままらなかったのに、3年で1冊画集ができるくらいたくさん絵を描いたし、画集を作るためのスキルも身についた。3年前と今を比べれば、画力も結構上がってきたと思う。上手く描けなくて苦しむのは一生変わらないが…牛歩でも進んでいる感じはする。絵一本でやっている人に比べれば呆れるほどスローペースだったと思うが、その割には結構成長したもんだなーと少し自惚れる。

今年に入ってからは本業が忙しく、更に創作ペースが遅くなったが、好きなように描けている。
最近はお仕事以外だと体力を使わない小さめのイラストを描くことがほとんどだが、展示用にドードーの本を読んでドードーの復元画にチャレンジしたりと、時々重めの創作も挟んで、楽しくやれている。

今後

今年は、物語をいっぱい描きたい。

最近はお仕事案件でマンガを描いているので、マンガという表現手法にとても興味がある。絵本よりも文字情報をたくさん載せられるし、小説よりも絵をたくさん載せられるので、頭の中にある映像を表現しやすい。日本人のほとんどが読み方のルールを理解しているの強みで、物語を描くのにこんなに都合の良い方法は無い。
物語の運び方、コマ割り、マンガ独特の演出など、学ぶべきところがたくさんある。描いたことのないものも描かなければならず、自ずと画力も上がる。

会社の仕事でWeb媒体のものを作る機会も多いため、Web公開を前提としたコンテンツも作れないかと画策している。Web媒体なら絵も文も動画も音も自由自在。視聴者からのスクロールやタップ・クリックなどのアクションを起点に展開していくものなので、より双方向的な体験を作れそうな気がする。

とはいえ、もうアラサー。もうがむしゃらに頑張れるほど若くない。そろそろ、人生がロングランになることを見据えて、健康診断の結果を気にして生きる必要がある。心身の健康第一で続け、なる様になっていくのを楽しもうと思う。

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