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4ページ絵本『ウォンバくんの工作』

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ノーチのしっぽ研究所は、スロリ先生という1匹のナマケモノによって作られました。
研究も、若いみんなのお世話も、勉強を教えることだって、スロリ先生はひとりで何でもこなしてしまいます。
もうおじいさんになりましたが、今でも昔と変わらず、研究所の所長として、毎日元気に過ごしています。

「スロリ先生はすごいなあ。ぼくも早くスロリ先生みたいな立派な大人になりたいなあ」

ウォンバットのウォンバくんは、スロリ先生が大好きです。いつも遊んでくれて、いろんなことを教えてくれて、優しくしてくれる先生に、とても憧れています。

「でもウォンバくん。何もしないでいきなりスロリ先生みたいなすごい人になれるわけじゃないんだよ。先生はたくさん頑張ってきたから、えらいんだ」
ナヤメリくんは、ウォンバくんととても仲良しなヤモリの男の子です。

「そっかあ。でも何を頑張ればいいんだろう。スロリ先生のお手伝いをしてあげたいけれど、ぼくはまだ子供だから、難しいことはできないし。ナヤメリくんは、どう思う?」

「そうだなぁ。ウォンバくんはお絵かきと工作が得意だから、先生に何か作ってあげたらどうかな。たとえば、椅子とか。」

「ナヤメリくん、ナイスアイディア!
スロリ先生、毎日立ちっぱなしで実験しているから、腰が痛いって言ってたもんね!」

ウォンバくんは、スロリ先生に内緒で、早速椅子を作ってあげることにしました。ナヤメリくんは、横でそっと見守ります。

はじめに、設計図を書きます。ぴったり組み立てられて、できた椅子がガタガタしないように、部品の大きさはよく考えて決めます。
「ふむふむ。スロリ先生は背が高いし、机の高さも考えたほうがいいから、大きめの椅子を作ろう。そのためには、ここのところは少し長くしたほうが良いんじゃないかな。」
設計図をみながら、ナヤメリくんがアドバイスしてくれました。

設計図がかけたら、次は材料を集めてきて、設計図のとおりにのこぎりで切ります。トンカチで釘を打って、できた部品を組み立てます。
「トンカチで指を叩かないように気をつけてね、ウォンバくん。」
「うーん。難しいなあ」
まっすぐに釘を打つのが難しくて、何度も何度もやり直しましたが、少しずつ、少しずつ、椅子の形になってきました。

組み立てが終わったら、ペンキで色を塗ります。お絵かきが大好きなウォンバくんは、スロリ先生の似顔絵を描いてあげました。

そして・・・


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ついに、スロリ先生にプレゼントする椅子が完成しました。
何回も失敗してしまいましたが、それでもその失敗をいかして、あきらめずに最後までやり遂げることができました。

「やったね!ついに完成だ!ウォンバくんすごい!」
「スロリ先生、喜んでくれるかなあ」
「絶対喜んでくれるよ!だって、ウォンバくんがひとりだけで作り上げたプレゼントだもん!」
「ナヤメリくんも、手伝ってくれてありがとう」


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完成した椅子を眺めていたウォンバくんは、座り心地が気になってきました。
「ちょっとだけ座ってみようかな」
「(まずい・・・ウォンバくんはスロリ先生より重いから・・・)
ウォンバくん、そーっと!そーっと気をつけて座るんだよ!」
「わかった!そーっとだね!そーれっと!」
「ああ!そんなに勢いよく座ったら!」


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どんがらがっしゃーーーん!!!!

せっかく作った椅子は、ウォンバくんのお尻の下でぺしゃんこになってしまいました。
「うわーーーん!いっしょうけんめい作ったのにーーー!!」
「あらら・・・」
はじめてひとりで作った椅子が壊れてしまい、ウォンバくんは涙が止まりません。ウォンバくんの頑張りを一番近くでみていたナヤメリくんも、悲しい気持ちになりました。

「なんだい、君たち、どうしたんだい。大丈夫かい?」
ウォンバくんの泣き声を聞きつけたスロリ先生がやってきました。
「うわーん!うわーん!」
内緒のプレゼントだったのに、自分で座って壊してしまったことが、ウォンバくんは悲しくてたまりません。

曲がった釘がたくさん落ちているのを見て、スロリ先生は、ウォンバくんがなぜ泣いているのかがわかりました。
「ウォンバくん、私のために、椅子を作ってくれたんだね。それも、何回も何回も失敗したのに、諦めないで頑張ってくれたんだね」

「うん。でもぼく、座ってみたくなっちゃって、壊しちゃったの。最後の最後で、また失敗しちゃった」

「いいんだよ。私を思ってくれたその気持ちだけで、嬉しいんだ。
それにね。ウォンバくんは、失敗してもめげないで、どこがいけなかったのかを自分でよく考えて、もう一度チャレンジして、ついにやり遂げたんだ。それって、立派なことじゃないか。
だから失敗することは、悪いことじゃないんだよ。成功よりも失敗からのほうが、わかるようになることは多いんだ。」

「そっかあ。失敗することは悪いことじゃないんだ。でも、壊れちゃったこの椅子はどうしよう」

「私といっしょに直そうか。せっかくだから、みんなの分も作ろう。ウォンバくん、お願いできるかな?」

「うん!」


ウォンバくんは、失敗することがちょっぴり好きになりました。



今回のお話はこれで終わりです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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