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ジャケ写のお仕事!SALA『ヒーロー/びねつ』

こんにちは。
ノーチのかたっぽ、¥0sukeです。

イラストを描いていると、誰しもが憧れるジャケ写を描くお仕事。
楽曲のイメージをユーザーにビジュアルで伝える、CDの「顔」を作る大切なお仕事です。

大変ありがたいことに、そんな大切なイラストを、ノーチのしっぽ研究所に任せていただく機会がありました。

ヒアリング

ご依頼いただきましたのは、ラップミュージシャンとして活動されているSALA様。
アーティスト情報は、御本人が公開されているページから引用させていただきます。

アーティスト情報
SALA
Pixel Normalize Apartという団体に属しており、東京近辺を活動拠点にしている。 日常に即した歌詞にrap musicを基盤とした歌い方を合わせたベーシックな曲作りが得意。 empathize.

ジャンル:rap
活動エリア:東京
Pixel Normalize Apart

SALA様にお話を伺うと、「こんな感じのイラストにしたいな~」というイメージを、既にある程度固めていただいていたようでした。
そのイメージに合致する作風のイラストレーターを探していて、ノーチのしっぽ研究所にたどり着いたそうです。

本当によくぞ見つけてくださいました…
ありがとうございます…

今回ジャケットイラストを描く楽曲のタイトルは『ヒーロー』。
その他、以下のような内容のイメージをお伝えいただきました。

  • 赤いマントのトカゲが背を向けて座っている
    (ポーズ等は未定)

  • ヒーローに憧れた子供のイメージ

  • 無邪気だが哀愁も感じられる雰囲気

  • 背景はシンプルめ

  • 曲名とアーティスト名を入れる

楽曲の音源と歌詞までご提供いただいてしまいました。
なんて至れり尽くせりなんだ…

ここまでご協力いただいたからには、何としてでもご期待以上のものを作らなければ!
要素を全て机上に並べると、そのボリュームに俄然やる気が出てきました。

アイディアを出しながらレイアウト決め

まず、今回の絵の主役は「赤いマントのトカゲ」です。ご依頼内容の通り、こちらに背を向けて座っている様子を画面中央に描きます。

ちなみに、使用しているソフトはProcreate。
ハードはiPad ProとAppleペンシルです。

この時点では、まだメモ程度のアイディアスケッチなので、細かいところは気にしません。
妄想の中で自分とヒーローを重ねている様子を表すために、クレヨンっぽい線でマントを描いたらどうかなというアイディアがあったので、「クレヨン」とメモしました。

さらにイメージを膨らませてみます。
哀愁も感じさせたいという事だったので、広い空間にトカゲの子がぽつんと座っている感を演出するために、ライティングは逆光に設定しました。
空想に耽っている表情を見せるために、少し斜め上を見るポーズに変更。
逆光を受けて落ちた影を、ヒーローのシルエットにしたらどうかなと思いついて、「かげがヒーロー」と書き入れています。
周囲におもちゃを配置して、子供らしい要素を追加してみました。

下描き(線画)

なんとなく絵の方向性が見えてきたので、アイディアスケッチを元に下描きを描いていきます。
ここからは、たくさんの資料を見ながら、デッサン的な狂いも少ないように気をつけます。

下描きでは、トカゲの子がヒーローに憧れているという状況説明の仕方を変えました。

アイディアスケッチの時点では、クレヨンの線で描かれた空想上のマントと、落ち影にヒーローのシルエット、という2つの方法を考えていました。

しかし、説明の仕方が少し回りくどいかなと思ったのと、スペースの都合もあり、キャラの周囲に配置するオブジェクトで代用することにしました。

ヒアリングの時点で「ヒーローごっこ」というワードも出ていたので、赤いマントは実際に身につけていることにし、さらに手作りの剣を持たせてみました。
憧れの対象を明確にするために、ヒーローが描かれている絵本とフィギュアを配置します。
赤いマントに勇者の剣、強く逞しいトカゲのヒーローです。

次はシチュエーションを練っていきます。
この絵の場面に至るまで、どんな出来事があったのか。
この場面より後には何が起こるか。
前後の時間の流れを想像しながら、背景を設定していきます。

SALA様の楽曲『ヒーロー』の冒頭の歌詞に、

窓側1番ケツの席
妄想が捗るベスポジ
(中略)
冴えない僕もここじゃあヒーロー
『ヒーロー』作成:SALA、TACOS BEATS

とあります。
現実ではうまくいかないことが多くても、空想の中ならヒーローになれる、という部分から着想して、自分の子供の頃のことを少し思い出してみます。

子供が絵本やおもちゃを広げる場所はどこだろう?と考えた時、僕は幼い頃にベッドの上に自分の物を持ち込むのが好きだったな、と思い出しました。

自分の子供部屋が無かったので、ベッドの上に好きなものをたくさん持ち込んで、自分だけのテリトリーにしていました。

この自分の経験を、イラストに反映させてみます。

ベッドの上に座っているという設定にして、枕やクッション、おもちゃを置いてみました。

このトカゲくんは、きっと寝る前に憧れのヒーローの絵本を読みふけって、自分も同じように皆を救う夢を見るのでしょう。

ベッドだけが自分のテリトリーだったということから、もう1つ思い出したのが、2段ベッドって秘密基地みたいで好きだったなぁということ。

このトカゲの子も兄弟が多くて、弟の自分は下っ端で、2段ベッドの下で窮屈な思いをしていながらも、そこを自分のテリトリーとして守っていて…
のようにイメージを膨らませ、線画の下描きは次のようになりました。

正方形のキャンバスをフレームのようにベッドが囲うことで、画面の収まりも良くなりました。
中央付近は余白を大きめに取って、文字情報に目がいきやすいようにします。

ざっくり色塗り

構図が決まったので次は色塗りです。
いきなり色を載せるのではなく、先にグレーでライティングを決めます。

逆光なので、余白部分以外は全体的に暗めになります。
空想の中の明るい未来とは対照的に、現実は鬱屈した気持ちを抱えていることを、逆光の明暗差が象徴しています。

ざっくり色を置きました。
この段階では、ほとんど固有色のベタ塗りです。

固有色とは、普通の明るさの自然光の下で見える中間的な部分(陰でもハイライトところでもない所)の色のこと。
要は、リンゴなら赤、葉っぱなら緑、という色です。

先程グレーで付けた陰影は一旦忘れて、固有色だけで全体の配色のバランスを考えます。

マントの赤は、勇気や情熱のイメージが強いので、憧れのヒーローの象徴として、目立たせたい。
すると必然的に、それ以外の部分は、赤を引き立たせるために寒色系の色や落ち着いた色になるよな…という感じで考えています。

固有色のレイヤーをオーバーレイにして、グレーの陰影のレイヤーと重ねてレイヤーを統合。
更に描きこんで色味を整え、加算レイヤーで光を描き足しました。

これでイラスト部分のラフ画が完成です。

だいたいこのくらいの段階で一度、ご依頼主様にチェックしていただきます。

線画だけでチェックしていただく場合もありますが、ざっくり色を置いて陰影を描き込まないと完成の雰囲気をイメージしにくいので、ラフ画の段階でこのくらいまで仕上げることが多いです。

明るさと色味を調整して、文字を入れました。
ヒーローものの絵本のタイトルをイメージして、ポップでリズミカルな書体をデザインしてみました。
文字の色もヒーローの象徴、鮮やかな赤を選びました。

仕上げ

ラフ画チェックでGOサインをいただけたので、一気に仕上げます。

塗りが荒い部分を描きこんで調整。

反射光を描きこんで質感の違いを描き分けます。

書体のデザインももう少しリズム感を強めて、太さと大きさに抑揚をつけました。

アナログ感が欲しかったのでザラザラしたフィルターをかけて、最後にPhotoshopで色味の調整を行いました。

そして、完成したイラストがこちら。

歌詞を読み込んだり楽曲の音源を聴きながらイメージを膨らませたおかげもあってか、なかなか自分なりにはしっくりくるイラストに仕上がったと思います。

ご依頼いただいたSALA様にもご満足いただけて、本当に絵描き冥利に尽きます。
貴重な経験をさせていただきました。

今回イラストを担当させていただいた楽曲は、以下のリンクから各配信サービスでご視聴いただけます!
気になった方は是非チェックしてみてください~

SALA 3rd Single
『ヒーロー/びねつ』
featuring : shitai
beat by TACOS BEATS
artwork by ノーチのしっぽ研究所
mix by PIANO FLAVA

↓Lyric Video by HAMB

今回はここまで!
最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは!

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